ドローンやIoT技術、パワーアシストスーツなど、農作業の省力化につながる新しい技術が日々発展を遂げています。とはいえ、まだまだ農作業によって腰に悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では農作業によって生じる腰痛に着目しました。腰痛を生じさせないための動作などをご紹介していきます。
農作業と腰痛の関係
農作業を行なっているときに生じる腰痛動作について調査されているのでご紹介します。福井県JA全国農業協同組合連合会が職員や兼業農家に対して、
- 腰痛経験の有無
- 農作業時の腰痛の状況
などについて調査しました。
調査票は70名に配布され、記入漏れのない53名の回答が採用されています。53人中44人が「腰痛経験あり」と回答しています。腰痛経験率は83.0%、ここ1年間の腰痛率は75.0%と算出され、腰痛頻度の高さが伺えます。
農作業中に腰痛が生じた動作については、
- 前屈や中腰姿勢
- 重量物の取り扱い
という回答がありました。
腰痛の原因となる動作
先で紹介した
- 前屈や中腰姿勢
- 重量物の取り扱い
は、腰痛の原因となる動作の代表格ともいえます。これらの動作は農作業では度々登場します。例えば苗の植え付けや収穫時には、中腰姿勢を長時間続けることになるでしょう。出荷作業の際、収穫した農作物を運搬する必要があります。
同じ姿勢で長時間作業が続けば、背中や腰の筋肉に疲労が蓄積します。それによって疲労性腰痛が生じやすくなります。より重度な腰痛(椎間板ヘルニアなど)が生じる可能性も否めません。
腰痛を生じさせない農作業動作
腰に負担の少ない動きを意識することが大切です。軽いものを持つときも、重いものを持つときも、腰に負担のないように動くことが腰痛予防につながります。
物を持ち上げる場合には、ひざを曲げて持ち上げよう
物を持ち上げるとき、ついつい立ったまま持ち上げようとしていませんか?立ったまま屈み、持ち上げるという動作は腰に大きな負担がかかります。
物を持ち上げるなら、ひざを曲げて物に体を近づけましょう。また体に物を引きつけることで負担が軽減します。腰のためにも、横着は厳禁ですよ!
体ごと向きを変えよう
持った物を右へ左へ移動させるとき、また方向転換するとき、腰から上だけを動かしていませんか?物を持った状態で腰をひねると腰に負担がかかります。向きを変えるとき、物を移動させるときには、必ず“体ごと”向きを変えることを意識してください。
作業環境を改善しよう
高い場所にあるものを取る、高い場所で物を扱う、狭い場所に物を運ぶなど、不自然な姿勢になりやすい環境で作業することも多々あるかと思います。ただ、作業する際には無理のない姿勢で作業することが、腰への負担を軽減させるポイントです。そのため高い場所で作業する場合には、無理に体を伸ばしたり反らせたりするのではなく、台を用意して体に無理のない体勢で作業しましょう。狭い場所で作業する際、物理的に狭いのではなく片付けが不十分で狭くなっているのであれば、その場所に散らかったものを片付けてスペースを確保してから作業しましょう。
「作業しにくいな」と感じることがあるのであれば、その作業しにくさを改善してから作業に臨むことも腰痛予防の一環だと考えてください。
作業中でもできる腰痛予防策
中腰姿勢を続ける作業が続くのであれば、小さな椅子を用意してみてください。座りながら作業するだけでも、中腰のまま長時間作業するよりは腰への負担が軽減されるはずです。また、作業中、どうしても背中や腰の筋肉が緊張してしまうと思いますから、作業の合間合間にストレッチを挟むのもオススメです。
筋トレやストレッチで腰痛対策
ドローイン
腰痛を予防するために役立つのが筋力トレーニングやストレッチです。まずご紹介するのは「ドローイン」という腹筋のトレーニングです。農作業では背中や腰が痛くなりがちで、腹筋を鍛えるのは意外に思われるかもしれません。ですが腹筋が落ちてしまうと正しい姿勢が保てなくなり、腰に負担がかかってしまいます。
加えて「ドローイン」は寝転んでできる筋トレなので、腰痛を抱えている人、腰に不安がある人でも安心して筋トレに励むことができますよ!
- 仰向けに寝る
- 足は腰幅に開き、膝を立てる
- 手のひらは上に向け、腕全体を床につける
- ゆっくり息を吐き、4カウントでゆっくりお腹をへこませる
- ゆっくり元に戻す
スクワット
スクワットは足腰からお腹周りの筋肉まで鍛えることができます。体を支える筋肉が鍛えられる筋トレなのでぜひ挑戦してみてください。ただ、正しい姿勢で行わないと効果が出る前に体を痛めてしまうこともあるので、とにかく姿勢を意識しましょう。体に違和感や痛みを感じた場合には無理に続けようとせず、中止してくださいね。
- 足は腰幅よりも少し広めに開く※
- 肩が耳の下にくるように意識して、胸を張った姿勢をとる
- そのままの姿勢でお尻を後ろに引く
- 膝が90度になるように意識して曲げ、ゆっくり元の姿勢に戻る
※つま先と膝の向きは少し外側に向けます。この際、つま先と膝を同じ向きにすることを意識しましょう。膝を痛めにくくするポイントです。
スクワットに慣れていない場合には、椅子に浅く腰掛け、ゆっくり立ち上がっては座るを繰り返すのも効果的です。呼吸ですが、しゃがむときに息を吸って、立ち上がるときに息を吐きましょう。1日おきに10回3セットが理想ですが、まずは疲れるまでやることを心がけましょう。筋肉は徐々につけていくものです。焦らずゆっくり取り組んでいきましょう。
腰サポーターを使う際の注意点
サポーターは腰痛を治すアイテムではありません。
ですが、腰への負担を減らしたり、痛みを緩和したりすることはできます。腰痛を抱えていたり、腰に不安を抱えている場合には、農作業のときにはサポーターを使い、それと合わせて筋トレやストレッチで体を整えることを意識してください。
サポーターはさまざまな種類がありますが、自分の腰痛度合いにあったものを選びましょう。例えば外見に響きにくい薄手のタイプは軽度の腰痛にオススメです。でも重度の腰痛を抱えている場合にはサポーターとしての機能が心許ないこともあるかもしれません。はじめて腰痛を経験した場合には、病院など専門機関を受診して、自分の腰痛に適切なサポーターを教えてもらうことをオススメします。
参考文献