5年ごとに行われる農林業センサス※1という調査によると、2020年の調査結果と過去2回の調査結果の比較から、農業経営体、農地、労働力すべての減少率が高まっているといわれています。
一方、日本の農業の生産基盤を維持する観点から農地の集積・集約化は進んでいます。しかし耕地面積は減少を続けているという現状もあります。
減少幅が増大
農業経営体、農地、労働力の減少幅は2010年、2015年、2020年と減少が続いており、さらに減少幅の拡大も見られます。
農業経営体は全国的に減少が続いています。『農業と経済 2022年春号』に掲載されている記事「日本農業の構造再編と地域差の拡大」(p.21〜)には、都府県における経営体数の著しい減少についてこう記されています。
都府県では2010年から2015年の減少率は2005年から2010年よりも1.6ポイントの増加であったが、2015年から2020年の減少率はさらに3ポイントも高くなり、22.1%の減少となった。その結果、都府県の経営体数は104万1000となり、このまま行くと2025年には100万を割るのは確実な情勢である。
引用元:『農業と経済 2022年春号』p.22(英明企画編、2022年)
農地の減少率も同様です。
(単位:千ha)
2010年 | 2015年 | 2020年 | 2010〜2015年の減少率 | 2015〜2020年の減少率 | |
全国 | 3,632 | 3,451 | 3,233 | 5.0% | 6.3% |
北海道 | 1,068 | 1,050 | 1,028 | 1.7% | 2.1% |
都府県 | 2,563 | 2,401 | 2,204 | 6.3% | 8.2% |
出典元:『農業と経済 2022年春号』p.23(英明企画編、2022年)
労働力の減少が見られるのは農業分野だけに限りませんが、農業労働力は全国で男性、女性ともに2010年から2015年の減少率を、2015年から2020年の減少率が大きく上回っているのが現状です。
なお、2020年農林業センサスより、全国の基幹的農業従事者※2は男性は82万2000人、女性は54万1000人です。男性は100万人を割り込んでいます。
2010年と2015年の、全国の基幹的農業従事者数(男性・女性)は以下の通りです。
(単位:千人)
2010年 | 2015年 | 2010〜2015年の減少率 | 2015〜2020年の減少率 | |
男性 | 1,148 | 1,005 | 12.5% | 18.2% |
女性 | 903 | 749 | 17.1% | 27.8% |
出典元:『農業と経済 2022年春号』p.23(英明企画編、2022年)
2020年の調査では農業経営体の区分が変更されており、基幹的農業従事者の集計対象となる経営体数が減少していることも、労働力の減少幅が大きくなった要因です。とはいえ、労働力不足が深刻な状態であることに変わりはありません。
農地集積・集約の現状
大規模経営への農地集積率の増加幅は拡大しています。
なお、大規模経営の明確な定義は存在していませんが、農研機構の成果情報には以下のように記載されています。
大規模経営:経営耕地面積10ha以上の農業経営体(経営部門は問わない)。農業経営体は「農林業センサス」の定義に従う。その有無は2010年時点で判断。
たとえば農林水産省の資料によると、農地バンク(農地中間管理機構)を創設した平成26(2014)年以降、担い手への農地集積率は進展しており、令和3年(2021)度末の農地集積率は58.9%で、前年比0.9ポイント増という結果となっています。
しかしこの資料からも分かることなのですが、『農業と経済 2022年春号』の記事「日本農業の構造再編と地域差の拡大」では、農地集積は進んでいるものの、経営耕地面積そのものは全体的に減少していることを明らかにしています(参照ページp.24〜25)。
平成26年度末 | 平成27年度末 | 平成28年度末 | 平成29年度末 | 平成30年度末 | 令和元年度末 | 令和2年度末 | 令和3年度末 | |
農地利用集積率(%) | 50.3 | 52.3 | 54.0 | 55.2 | 56.2 | 57.1 | 58.0 | 58.9 |
集積面積(万ha) | 227 | 235 | 241 | 245 | 249 | 251 | 254 | 256 |
農地面積(万ha) | 452 | 450 | 447 | 444 | 442 | 440 | 437 | 435 |
出典元:担い手の農地利用集積面積の推移
経営耕地面積集積率の増加は、分母を占める農地そのものが減少しながらの増加となっているのが現状です。先で紹介した資料1ページ目にグラフが掲載されているのですが、グラフで見ると現状がより分かりやすいです。
今後も経営体数や農業に携わる労働力の減少が見込まれる中、やはり注目が集まるのは新規就農者の存在、特に若い世代です。
農業従事者を増やすための取り組みにはさまざまなものが挙げられます。以下の内閣府の資料は、地域づくりの取り組み事例ではありますが、「食と農による地域づくりの取組事例」には若い世代の就農につなげた事例も紹介されています。後継者不足等を解決するヒントが含まれているかもしれません。気になる方はぜひ見てみてください。
※1農林業センサスは、我が国の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、 農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成し、提供することを目的に、5年ごとに行う調査です(引用元:農林業センサスとは:農林水産省)。
※2基幹的農業従事者とは、15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者(引用元:用語の解説)
参考文献
- 『農業と経済 2022年春号』p.22〜(英明企画編、2022年)
- 担い手の農地利用集積面積の推移