人手不足が危惧される、農業と物流の関係について

人手不足が危惧される、農業と物流の関係について

昨今、さまざまな業界で「人手不足」が課題視されています。少子高齢化が進み、人手が足りずに困っている業界は少なくありません。農業や消費者に農産物を届ける物流も、人手不足が危惧されています。

近年では「地産地消」も推進されていますが、消費者に届く農産物のほとんどは、消費者のいる土地から離れた土地で生産されています。生産地と消費地をつなぐには物流が欠かせません。しかしその物流も人手不足な状態なのです。

 

 

農業と物流、人手不足の現状

人手不足が危惧される、農業と物流の関係について|画像1

 

まずは農業と物流の関係における、人手不足の現状について紹介していきます。

そもそも物流業界において、農産物の配送は敬遠されがちだと言われています。生物(なまもの)ですから、配送中の環境で鮮度や品質が変わってしまうことがあります。配送中についたちょっとの傷で販売できなくなることもあるので、他の商品よりも運びにくいと考えられているのではないでしょうか。

高齢化という課題

農業においても物流においても、人手不足が顕著になった要因には「高齢化」が挙げられます。高齢化に伴い、農家戸数は減少傾向にあります。若い世代の新規参入者は増加傾向にあると言われていますが、全体的に見たときには減少傾向にあるのです。

また物流業界では、大型トラックドライバーの年齢に変化が生じています。厚生労働省によると、2001年に5割以上を占めていた20代・30代の割合が、2015年には約2割に減っています。トラック輸送では、時に長距離を走る必要があります。高齢化が進めば、長距離運転への身体的負担が考えられます。運転手の高齢化により、配送を対応できなくなる事態も生じるかもしれません。また未だに手で積み下ろしを行うことが一般的なため、重労働な一面があります。これも高齢化が進むことでスムーズにいかなくなるのではないでしょうか。

サービス拡大という課題

農業法人など大規模な農業経営を行う農業者の規模拡大により、販売シェアは拡大傾向にあります。消費者への選択の幅も増えました。中でもEコマースなど、ネット販売の普及により、消費者はあらゆる場所から商品を手に入れやすくなりました。

しかしEコマースの普及により配送量は増えました。消費者にとって時間指定や再配達といったサービスはとても便利なものですが、配送側からしてみれば手間がかかる内容でもあります。

経営のためには、消費者のニーズに応えていきたいところですが、生産者側、流通側に人がいないと対応しきれません。

労働時間という課題

農業には法で定められた労働時間の規定が適用されません。その理由には

  • 天候等自然条件に左右される事業だから
  • 事業や労働の性質上、規制になじまないから
    (1日8時間、週休◯日と定めることができない)
  • 天候不良や農閑期に休業することができるから

が挙げられます。

もちろん近年では、会社のような雇用形態の農業法人の存在や、ICT技術を用いたスマート農業により、農産物につきっきりである必要もなくなりつつあります。しかし、やはり農産物は生き物ですから、労働時間を定めるのはまだまだ難しい部分があります。

物流においては、農業とは違う労働時間の課題があります。物流業者は長時間拘束されてしまうことが多々あります。出荷量が定まらず待機することになったり、倉庫に搬入する時間より前に到着してしまい待機することになったり、なにかと待たなければなりません。

 

 

人手不足解消のために求められる新しい農業の形とは

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人手不足を解消するために、若い世代の農業に対するネガティヴなイメージを払拭する、という方法も挙げられます。ですがここでは、労働時間の規定が適用されない理由に着目した、効率のよい農産物の栽培法について紹介します。

従来の農業では、農産物の収量や品質が天候に左右されてしまうことが多々ありました。しかし新しい農業の形では、植物工場やハウス栽培といった天候に左右されにくい形態のものが注目されています。ICT技術も活用すれば、人の手で管理していた肥料や水分量、温度などをコンピュータで制御することも可能です。省力化することができれば、人手不足に頭を悩ませることなく農産物を生産する手立てができます。

もちろん植物工場やハウス栽培には初期投資や施設に必要な設備の導入をしなければならないという課題もあります。ただ近年では、ハウス栽培に必要な大量の水を雨水利用によって負担を軽減するなど、課題解決につながる新しい技術も続々と登場しています。

 

 

人手不足解消のために求められる新しい物流の形とは

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人手不足を解消するに、農林水産省より考案されている具体的な例を紹介します。実際に実施している物流業者もあるようです。

積み込みについて

従来の積み込みでは、段ボールや紙袋に入れられた農産物を積んでいました。考案されているのはパレット積みやフレコン輸送と呼ばれる積み込み方法です。これなら1つ1つ手で積み下ろしをし、積載効率を考えながら積むという時間が削減できます。従来の積み下ろし方法だと作業に数時間かかるものが、1時間以内に短縮できると言います。

ICT活用について

ICT活用にはさまざまなシステムが考案されています。例えば、配送トラックの到着予約受付システムの導入。集荷場所での待ち時間短縮が可能となり、作業の効率化を図ることができます。また出荷量の把握や送り先もICTによって迅速に把握できるようになれば、配送前のトラック確保もスムーズです。

共同輸送について

また近年では地産地消の考えが浸透し、小ロットでの配送も増えつつあります。しかし小ロットの配送は積載量を向上させにくいうえ、さまざまな集荷場を回ることになるため、効率は悪いです。そこで考案されているのがトラックの共同利用です。また1台のトラックの発車地点と到着地点の中間に中継地点を設けることで、複数人で運送の行程を分担するという案もあります。いずれもドライバーの労働時間削減や、帰り荷の積載効率アップなどのメリットに注目が集まっています。

 

参考文献

1,ともに人手不足。農業と物流はどう変わっていくか マイナビ農業
2,特集 日本農業は人手不足時代 AFC Forum
3,労働時間、休憩、休日 徳島県農業会議
4,政府が進める農業の産業化 物流効率化がカギ
5,農産品物流の改善・効率化に向けて
6,人手不足を補うこれからの新しい農業と、その問題点について あぐりナビ

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