注目集まるヤギによる除草。除草に活躍する中小家畜のススメ

注目集まるヤギによる除草。除草に活躍する中小家畜のススメ

近年、除草方法としてヤギを用いる事例が目に入るようになりました。草食動物のヤギが雑草を食べてくれることで、燃料いらず、取り除いた草をゴミとして処分する必要もないため、環境に優しい除草方法として注目を集めています。

 

 

ヤギ除草のメリット

注目集まるヤギによる除草。除草に活躍する中小家畜のススメ|画像1

 

草刈り機ではなくヤギを活用することで、まず化石燃料が必要なくなるのでCO2排出量の削減につながります。また草刈り機を使用する際には騒音が気になりますが、ヤギは大人しくあまり鳴かないため、音についても安心です。草しか食べないヤギの糞は団子状で乾いていることもあり、臭いも気になりません。

草刈り機などで除草した場合、刈り取った草は処分する手間がかかりますが、1日で10kg弱の草を食べる大人のヤギに除草を任せれば、手間や処分費用をぐっと抑えることができます。

ヤギは急な傾斜地も難なく登れるので、除草作業がしづらい場所も除草が可能です。

ヤギ除草の準備と注意点

ヤギを迎えるために準備すべきものがあります。ヤギの脱走等を防ぐため、放牧する場所を柵などで囲いましょう。またヤギは雨や水辺を嫌う習性があります。そのため小屋やテントといった屋根付きの場所を用意してください。夏場には日差しを遮る場所にもなります。

なお大人しく、あまり鳴かない動物ですが、群れる習性があるため1匹で飼う、もしくはレンタルすると、他のヤギを恋しがり鳴くことがあります。ヤギ除草を行う際には2頭以上で迎えましょう。

他には飲用水の用意や糞尿の処理が挙げられます。

また生き物ですから、ほったらかしにするのではなく、1日1回は様子を見るようにしましょう。あらゆる草を食べてくれるヤギですが、除草してほしくないものも食べてしまう可能性があります。

アメリカオレゴン州の州都セーラムでは大きな公園の除草作業を進めるために75匹のヤギを放し飼いにしましたが、ヤギたちは公園に生える貴重な植物まで食べてしまった上、そこかしこに撒き散らされた糞が異臭を放ち、除草作業が打ち切りになったのだとか。

これは数の多さに対して管理が行き届かなかった例といえます。生き物ですから人の思い通りにいくとは限りません。ヤギ除草を行う際は、しっかりと準備と心構えをしておきましょう。

関連記事:ヤギに雑草を食べてもらうエコ除草は害獣被害の対策にも使えるのではないか?

 

 

除草に活躍する中小家畜

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ヤギの他にも除草に活躍する中小家畜はいます。

アイガモ

アイガモのヒナを水田に放飼し、除草や害虫の駆除を行う「合鴨農法」があります。アイガモのヒナが雑草を食べたり、水田を泳ぎ回る際、地表面に生えた雑草を脚で浮き上がらせたりすることで除草ができます。「合鴨農法」では、アイガモのヒナにより無農薬で米を提供できるだけでなく、アイガモを食肉として生産することもできます。

ニワトリ

ニワトリは扱いやすい中小家畜です。雑草だけでなく、ヨトウムシなどの害虫も食べてくれます。土をつつくことによる土壌改良効果もあり、移動式のハウスにニワトリを入れ、チキントラクターとして活用することもできます。

関連記事:除草、害虫駆除、土壌改善に役立つチキントラクターのススメ。チキントラクターのメリットとその作り方

ただし、ヤギ同様、除草してほしい草だけを食べてくれるとは限りません。ニワトリが畑に慣れてくると生産物に害を与えてしまう場合もあるため、放し飼いにしたとしてもほったらかしにしないよう注意が必要です。

ガチョウ

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、ガチョウも除草に役立つ中小家畜です。

ガチョウの除草効果についての研究論文『水田および畑地におけるガチョウの除草利用』を読むと、草食性のガチョウはイネ科の植物を好むことが報告されており、水田に放飼た場合には、水稲を食べてしまい、放飼後 4日目に100株当たりの食害率が94%とありました。大麦畑においても、採食植物の12%を大麦が占めていることから、稲、大麦栽培の除草作業には向いていないようです。

野菜の圃場においては、エダマメ、オクラ 、トウモロコシ、ナスへの葉部の食害が確認され、軽微ではありますがサツマイモ、ミニトマトへの食害も確認されました。一方で、サトイモやピーマンは食害が皆無だったとあります。

ガチョウがあまり口にしないタデ科植物には“えぐみ”成分であるシュウ酸が多く含まれており、サトイモやピーマンにもシュウ酸が含まれているため、食害が発生しなかったのではと考察されています。

サトイモやピーマンといった限定的な野菜栽培において除草効果があるため、扱いにくさを感じるかもしれませんが、動物の嗜好性を観察してみると、自分の圃場に向いた、除草に役立つ中小家畜が見つかるかもしれません。

中小家畜を飼う際の注意点

ヤギやアイガモなどを除草に活用する場合、脱走対策だけでなく、彼らや彼らの卵を狙う野生動物による被害にも注意しましょう。

関連記事:野生鳥獣による被害の現状と効果的な対策

 

参考文献

  1. エコで注目のヤギ除草、魅力ポイントからレンタルの心構えまで|スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
  2. アイガモ・水稲同時作(アイガモ農法)|稲編|農作業便利帖|みんなの農業広場
  3. 水田および畑地におけるガチョウの除草利用
  4. 自然に優しいはずが…ヤギによる除草、臭いと苦情殺到で打ち切り|ギズモードジャパン

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