戦後、除草剤が登場するまで、除草は手取りで行うのが一般的でした。「化学合成農薬」によって効率的に農作業を行えるようになりましたが、昭和40年代には、これらの農薬に含まれる毒性や農作物に残留性質、土壌への残留性の高さなどが問題になりました。
現在販売されている除草剤は、販売前に厳しい検査を受けていますし、用法用量を守れば、安全に利用することができます。とはいえ、消費者の「安全・安心」志向、環境負荷を配慮した「循環型農業」への関心の高まりから、「除草剤を使用しない除草方法」が注目を集めています。
そこで本記事では、除草剤に頼らない最新の除草方法、そして「シェアリングエコノミー※」が定着しつつある今だからこそ注目を集める「新しい除草サービス」についてご紹介していきます。
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物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み。自動車を個人や会社で共有するカーシェアリングをはじめ、ソーシャルメディアを活用して、個人間の貸し借りを仲介するさまざまなシェアリングサービスが登場している。
引用元:小学館 デジタル大辞泉
除草剤を使わない除草方法
最新除草ロボット
まずご紹介するのは「レーザー」で除草を行うロボットです。ドイツの研究機関レーザーセンターハノーバーが開発したのは、レーザーを照射することで雑草の成長を抑制する方法です。カメラによって農作物と雑草を判別したのち、雑草にだけレーザーを照射します。雑草だけに反応するレーザーのため、農作物や土壌には影響が及びません。自律走行ロボットやドローンなどに実装できるため、さまざまな農作物栽培に対応できると期待されています。
もうひとつは「電流」で除草を行うロボットです。イギリスのスモール・ロボット・カンパニーが除草技術を有するルート・ウェーブ社と連携して開発したのは、雑草に電流を当て、その熱によって根まで枯死させ、除草する方法です。スモール・ロボット・カンパニーが開発した小型ロボットによって農作物と雑草が区別され、ルート・ウェーブ社の技術によって電流による除草が行われます。枯死した雑草は自然分解され、土壌の養分になります。
どちらも農作物や土壌に影響を及ぼさないため、農業生産と循環型農業への取り組み両方に利点がありますね。
除草しない、防草する
「除草しない」に違和感を覚えるかもしれませんが、生えてきた雑草を利用して土壌環境を整えれば、自ずと雑草は生えてこなくなります。結果的に除草につながるため、「除草しない」もひとつの方法なのです。
除草剤で簡単に雑草を枯れさせることができますが、除草剤を撒くことで土壌のpHが大きく低下し酸性に傾くと、土壌中の微生物も死んでしまいます。微生物が死滅すると土が硬くなり、雨が降るとよりいっそう硬くなります。農作物にとって良い環境でなくなると、生育旺盛な雑草だけがまた生えてきてしまう悪循環に陥ります。
そのため除草剤を使わない除草方法として、
- 土壌のpHを上げて雑草を減らす方法
- 雑草を刈って残った根を使って土壌改良を行う方法
をご紹介します。
まず、前提として、除草は雑草が小さいうちから始めるようにしてください。早めに作業しておくことが、雑草の量を減らすポイントです。
土壌のpHを上げる方法
雑草が小さいうちにある程度取り除いたら、土壌中に
- 乳酸菌もみがらぼかし
→土壌障害や連作障害に効果あり - 石灰(生石灰や有機石灰など)
→酸性に傾いた土壌のpHを改良する
を同量加えます。
草刈りした後にこの2つを混ぜるうちに、土壌を痛めることなく徐々に雑草を減らすことができます。
雑草の根を使う方法
「除草剤を使うことで土壌のpHが低下し、微生物が死滅、土が硬くなる」とご紹介しました。除草剤ではなく雑草を根こそぎ抜くことで除草する場合も土を硬くなってしまいます。この場合、硬い土でも繁殖できる強い雑草が生えてきてしまうという悪循環が起こります。「抜く」が絶対NGなわけではありませんが、繰り返すうちに除草作業が大変なものになってしまいます。
そこで少し根を残して刈り、土壌改良に利用してしまうのです。
土を掘り進めて成長する根には「土を軟らかくする」役割もになっています。また枯れた植物の根は微生物に分解されることで土壌の栄養になります。
ただし、全ての雑草が根を残して刈るのに適しているわけではありません。
刈ってもすぐにまた生えてきてしまう
- 地面の下で茎を伸ばして繁殖するもの(ヨモギやスギナなど)
- 球根で生えるもの
は根こそぎ抜くことをおすすめします。
ですが、イネ科の雑草などは「成長点(成長が始まる部分)」と呼ばれる部分より下、「根元より下」を刈れば、その心配をせずに土壌改良に活用することができます。土壌の状態が変われば、自然と厄介な雑草は減っていきます。
除草の代行作業!?
新しい除草方法としてご紹介するのが、除草の「代行」です。除草作業に時間を割けない農家のためのサービスが「営農らくちんサービス」です。
「西日本グリーン販売株式会社」が提供するこのサービスは、農家に代わって除草作業や施肥作業などを行うというもの。農家は代行してもらっている間、商品企画や営業など異なる業務に時間を割くことができます(参考価格2万5000円〜/1000㎡)。
インターネットを介して使っていないモノや場所、技能などを貸し借りする「シェアリングエコノミー」の考えやモノなどを「シェア」する消費スタイルが広がりを見せている昨今、「手の回らない作業はその道のプロに頼む」のもおすすめです。
参考文献