農作業の中には避けては通れない作業がいくつかありますが、農業就労人口の減少による労働力不足や負担面積の増加といった観点から、省力化が求められる作業に「草刈り」があげられます。
そこで本記事では、草刈りの省力化を図るアイデアとして注目を集めている3つのアイデアを紹介していきます。
草刈りロボット
近年、さまざまなラジコン草刈機が登場しています。
農業情報誌『アグリジャーナル Vol.28』(アクセスインターナショナル、2023年)には『みどり投資促進税制』の対象機械として認定されているラジコン草刈機が紹介されています。
近年、労働負担が多く、転倒・転落事故が多発する急斜面での草刈り作業を省力化するため、適応傾斜角35〜40度、作業能率5〜7a/h程度の小型で低価格のリモコン式草刈機が登場しています。
ただし、『現代農業 2022年8月号』(農文協、2022年)に掲載されていた記事には、草刈りロボットを効率的に活用するための注意点が紹介されていました。
草刈りロボット活用時の注意点
それは草刈りロボットの性能に併せて圃場環境を整えることです。
上記事例では、果樹園に草刈りロボットを導入した後、圃場環境を整備する前に起きていた事象は以下の通りです。
- 草刈りロボットが暗渠を入れた部分の窪みやスピードスプレーヤー(薬剤噴霧機)のタイヤ跡にハマって停止してしまう。
- 切断した古い誘引ヒモが刈り刃に絡まって停止してしまう。
- 圃場に残っていたせん定枝が本体に引っかかって停止してしまう。
- 樹と支柱の間に草刈りロボットがハマって停止してしまう。
自動で1時間充電、1時間稼働するはずの草刈りロボットが、一日に何度も園内のどこかで停止するという事態が起きました。
そこで、
- 草刈りロボットが窪みに引っかからないよう土を平らにならす
- 古い誘引ヒモやせん定枝など、草刈りロボットの障害物となるものは、日頃から取り除く
- 草刈りロボットが入ってほしくない場所には手前に杭を打つ
などの対策がとられました。
そうすることで、本来の機能通りの稼働が可能になり、効率よく草刈りが行われるようになった、とあります。
雑草が鬱蒼と茂る場所に草刈りロボットを導入することで満足いく草刈りが行われる……というわけではありません。草刈りロボットを効率よく稼働させるためには、草刈りロボットの性能を高めるための環境整備を事前に行うことが大切です。
大鎌活用
「ロボット草刈機のために圃場を整える必要があるなら、自分で草刈りもやった方が楽なのでは?」と感じた人にオススメしたいのが大鎌を使った草刈りです。
ロボット草刈機とは違い、人力作業になりますし、刈払い機に比べると一度に刈れる面積も及びませんが、燃料を必要とせず、エンジン音もしないことがメリットとしてあげられます。
大鎌は1m以上の長い柄が特徴です。立ったまま草を刈れることから立ち鎌とも呼ばれています。『現代農業 2022年8月号』では大鎌草刈りの達人・中川原敏雄さんの特集記事が掲載されています。
YouTubeには、中川原さんによる大鎌草刈りの実演動画が公開されています。
酢の力を活用する
草刈りの省力化を図るために、雑草を生えにくくする対策もオススメです。除草対策として注目されているのが酢の散布です。
『現代農業 2020年9月号』(農文協、2020年)では「酢酸なら、選択的に除草できる」という記事が掲載されました。水稲栽培の除草対策において、酸度を2.5%程度に調整した酢を散布すると、イネを枯らすことなく雑草だけを選択的に除草することができます。
ただし、酸度10%以上の場合は雑草のみならずイネにも被害が出てしまうため、希釈倍率には十分注意しましょう。
また除草効果を得るためには、散布方法や散布するタイミングにも注意が必要です。
酢は接触した部位のみを枯らすので、雑草全体にしっかり散布することがポイントです。イネは酢に耐性がありますが、出穂〜開花期に散布してしまうと不稔が発生しやすいため、出穂前に散布を行います。一方、イネ科の雑草を除草したい場合には、この特性を活かし、開花期に合わせて散布することで除草効果が高まります。
酢の濃度で除草効果が発揮されることから、酢の濃度が薄まってしまう湿度が高い条件(霧がある朝や夕方、曇天、雨の前など)では散布せず、気温25℃以上、湿度が低く、風が弱い日に散布すると効果的です。ただし、気温15℃以下の条件では酸度が低くてもイネに障害が出ることがあるので注意しましょう。
なお、酢には除草への効果だけでなく、殺菌や植物の乾燥耐性の向上などにも効果を発揮します。
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参考文献
『現代農業 2022年8月号』(農文協、2022年)
『現代農業 2020年9月号』(農文協、2020年)