素朴な疑問。なぜ除草剤は雑草に効くのか。どのようにして雑草の生育を抑制するのか。

素朴な疑問。なぜ除草剤は雑草に効くのか。どのようにして雑草の生育を抑制するのか。

田や畑に生えてくる雑草はしばしば作物の生育に悪影響を及ぼします。そんな雑草を田畑から取り除く方法の一つに除草剤の利用が挙げられます。除草剤は雑草の生育を抑制しますが、ではなぜ雑草“にだけ”効くのでしょうか。また、どのようにして植物に影響を与えているのでしょうか。

 

 

雑草に効くのはなぜ?

素朴な疑問。なぜ除草剤は雑草に効くのか。どのようにして雑草の生育を抑制するのか。|画像1

 

まず、雑草も田畑で育つ作物も植物であり、生理機能は基本的に同じです。

そのため「非選択性除草剤」と呼ばれる除草剤を用いると、雑草も作物も区別せずに枯らしてしまうので使用する際には注意が必要です。

一方、「選択性除草剤」と呼ばれるものは、雑草と植物を区別します。これは雑草と植物のわずかな性質の違い(例えば根や葉の形や大きさ、除草剤の植物体内への吸収のされ方など)を利用しています。

「選択性除草剤」には以下のようなものもあります。

物理的差異を利用した選択性除草剤とは、土壌表層0~1cmに除草剤の層(薬剤処理層)をつくり、種子の小さい雑草の大部分が土壌表面の浅い部分から出芽することを利用して、幼芽などが処理層に触れて枯死させるというものです。

引用元:今月のテーマ: 除草剤①除草剤の選択性

また

  • 作物が除草剤の効果を不活性化させる酵素を持っている
  • 雑草が除草剤の効果を活性化する酵素を持っている

ことを利用して、雑草と植物を区別する除草剤もあります。この除草剤の仕組みに関しては、遺伝子組み換えによって決まった薬剤に耐性を持つようになった作物とセットで考えると効く仕組みがより分かりやすくなります。除草剤をまくと、その除草剤に耐性をもった作物だけが枯れずに育ちます。

関連記事:除草剤「ラウンドアップ」の損害訴訟について知っていますか|農業メディア|Think and Grow Ricci

 

 

除草剤が効くのはなぜ?

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どのように吸収されるのか

除草剤が効果を発揮するためには、有効成分が作用させたい部位に到達する必要があります。しかし植物の構造によって有効成分の到達が阻まれたり、植物体内の代謝系で分解されたりして、効果を発揮できないことも。そのため除草剤によっては、きちんと効果が発揮できるよう、植物の特性に対応した工夫がなされているものもあります。

例えば、葉から吸収される「茎葉処理剤」の場合。植物表面を覆うクチクラ層は、外側は親油性(水との親和性がない)、内側は親水性の物質で構成されています。

親水性の化合物を用いた薬剤では、クチクラ層の高いバリア機能によって、表面張力が働いてしまい、薬液が葉の表面に広がらない、表皮細胞までの浸透が妨げられるなど、効果を発揮できません。そこで「茎葉処理剤」には展着剤などの補助剤が活用されています。補助剤の活用により、薬剤を葉に密着させることができ、吸収可能な状態を保持することができます。

葉面散布の場合は、このクチクラ層の特徴を理解することで、より効果的に薬剤の効果を発揮することができます。例えば、健全に育った成葉のクチクラ層は最も発達していますが、若い葉は未発達です。そのため、雑草の発生初期に散布するとより高い効果が期待できます。

「土壌茎葉処理剤(または茎葉土壌処理剤)」は生育期の根から吸収されます。根は葉と違い、クチクラ層がないため、薬剤が浸透しやすいです。

「土壌処理剤」は種子や、出芽前〜出芽期にある土壌中の幼植物の表皮から吸収されます。「土壌処理剤」は水とともに受動的に吸収されますが、発芽しようとしていない休眠中の種子は給水を行わないため、水も薬剤成分も吸収されません。

どのように雑草の生育を抑えるのか

阻害剤の効果で代表的なものを表に示します。

概要

特徴

光合成を阻害する

光合成を妨げ、雑草の成長を阻害する 一年生雑草の土壌処理剤が多い

効果が現れるのは遅い

細胞分裂を阻害する

細胞分裂やそれにかかわるタンパク質の合成を阻害する 一年生雑草の土壌処理剤が多い

長期間効果が持続する

ホルモンバランスを乱す

細胞分裂や伸長促進作用がある植物ホルモン「オーキシン」に類比した化学物質を用いて、ホルモンバランスを乱す 広葉雑草の茎葉処理剤が多い

ゆっくり〜中程度に効果が現れる

成長が乱れたり、奇形果が生じたりする

栄養代謝阻害

細胞伸長や発芽促進作用がある植物ホルモン「ジベレリン」や分裂組織の代謝を阻害する 土壌処理・茎葉処理両方に効果あり

効果が現れるのは遅い

アミノ酸の合成を阻害する

植物の成長に必要なアミノ酸の生合成を阻害する 広葉雑草によく用いられる

土壌処理・茎葉処理両方に効果あり

少ない量で効くが、効果が現れるのは遅い

 

参考文献

  1. 農薬はどうして効くの?|教えて!農薬Q&A|農薬工業会
  2. 日本植物防疫協会『農薬概説』
  3. 松中昭一『農薬のおはなし』(2000年、日本規格協会)
  4. 松中昭一『きらわれものの草の話―雑草と人間』(1999年、岩波書店)
  5. 除草剤と植物-その1:雑草はどうして枯れるのか – J-Stage
  6. 今月のテーマ: 除草剤①除草剤の選択性
  7. 今月のテーマ: 除草剤②除草剤の作用メカニズム
  8. 展着剤の役割と使い方|日本農薬株式会社
  9. 雑草を攻略!除草剤の使い方|ハウツー|住まいと暮らしのDIYセンターダイシン

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