刈払機の使い方には注意が必要です。
消費者庁には刈払機使用中に起きた事故の情報が多数寄せられています。1年のうちに事故が発生しやすい5月と7〜8月近くになると、消費者庁は度々刈払機使用中に起こる事故への注意喚起を発信しています。
消費者庁のニュースリリースによると、刈払機による事故情報は平成21年9月から平成29年6月末までに計140件、平成27年4月から令和2年3月末までに計88件寄せられています。少々古いデータではありますが、2010年12月〜2013年3月までに医療機関ネットワーク※には、刈払機を含む芝刈り機の事故情報が34件寄せられています。時期が重なっている情報もありますが、いずれにせよ、毎年のように、ある一定数の事故が起こっていることがわかります。
※医療機関ネットワークは、消費者庁と独立行政法人国民生活センターが共同で実施している事業。参画医療機関から消費生活上の事故に関する情報を提供してもらい、それらを分析・評価し、再発防止に取り組んでいる。
事故によるケガの種類、ケガの部位、年齢は?
(独)国民生活センター「刈払機(草刈機)の使い方に注意−指の切断や目に障害を負う事故も−」によると、刈払機の事故で報告されたケガは
- 刺傷・切傷・裂傷 55%
- 切断 14%
- 骨折 12%
- 異物侵入 9%
- 筋・腱の損傷 9%
と報告されています。またケガを負った部位に関しては
- 手指 23%
- 足指 21%
- 太腿・下腿 17%
- 足指から先(指を除く) 12%
- 目 12%
- 顔面 6%
- 上腕(肩)・前腕 6%
- 手掌・手背(手首) 3%
と報告されています(いずれも回答者34名)。
年齢別にみると60代が最も多く、次いで70代、50代となっていますが、20〜40代の報告がないわけではありません。また10歳未満の子供が刈払機の刃に触れてしまいケガをした事例もあります。
どんな事故が起こりやすいのか
事故状況として主に挙げられるのが「作業中の刈刃」による事故、次に「飛散物」、他に「刈刃に草などが絡まった際」「作業中に転倒した際」などが挙げられます。
事故事例には
- 刈払機使用中に誤って足の指を切った
- 作業中、障害物にあたった刃が跳ね、足をケガした
- 作業中、飛散した石のようなものが肘にあたった
- 作業中、植物の破片が目に入った
- 刈払機使用中に軍手が絡まり、手がそのまま巻き込まれてしまった
- 作業中に転倒し、刃が体に触れてケガをした
などが挙げられています。
事故を起こさないためには。原因と対策
大前提として、まずは取扱説明書をよく読み、使用方法や起こりうる危険についてよく理解した上で使用してください。目的以外での使用や、使用上の注意を無視した使い方は事故のもとです。
また事故を防ぐために、作業する際は以下のものを着用してください。
- 長袖、長ズボン
- 保護メガネ
これらに加えて、下記の項目でも紹介しますが「肩掛けバンド」の着用も忘れずに。
どんなに作業時間が短くても、以下で紹介する「キックバック」や「飛散物」による事故でケガを負わないために、体を防護する服装で作業を行なってください。
作業中の刈刃による事故
金属製の刃を使用する際、「キックバック」と呼ばれる現象に注意する必要があります。キックバックは“障害物や地面に接触すると、刈払機ごと刈る方向とは反対側に強く跳ね返される”現象のことです。使用者の周りに、他の作業を行う人などがいた場合、キックバックによってケガを負うことがあります。
そのため作業する際は、周囲を確認し、周りに人がいないか、障害物等がないかを確認しましょう。
飛散物による事故
刈払機は通常、飛散防護カバーを所定の位置に取り付けます。これは使用者を飛散物からまもるために取り付けるものですが、草が絡まりやすくなるなどを理由にこのカバーを取り外して作業している人もいるようです。
前提として、飛散防護カバーを外しての作業は「誤使用」です。防護用カバーは取り外さないでください。また作業前には必ず、障害物や飛散物になり得るものがないか周囲を確認し、小石や空き缶などがあった場合には片付けましょう。
刈刃に草などが絡まった際の事故
草などを取り除く前に、必ずエンジンを切る、またはバッテリーやコンセントを外してください。
草などが絡まると刃の回転が止まることがありますが、エンジンを切らずにいると、絡まったものを取り除いた途端に刃が回転し、手をケガする可能性があります。
作業中に転倒した際の事故
刈払機での作業中は、適当な長さに調整した肩掛けバンドを必ず装着してください。肩掛けバンドを装着した状態で転倒すると、刃が身体に触れにくくなります。
また足場の悪い場所での作業は転倒する危険性が高まるため、そのような場所では「かま」などを使って手で草刈りを行うことも検討してください。
事故防止のため、刃の種類を変えるのも◯
ナイロン製のコードを回転させて雑草を刈り取る「ナイロンカッター」は、チップソーや金属刃に比べると刈りにくい草や飛散物が多くなるデメリットもありますが、キックバックが生じません。ナイロンカッターで取り除くことができる柔らかく短い葉が生えている場所や、キックバックが起こる可能性の高い障害物の多い場所などでは、ナイロンカッターの使用も検討しましょう。
参考文献