2018年~2019年にかけては暖冬になる可能性が高いと言われています。寒い季節が苦手、という人にとってはありがたく聞こえるかもしれませんが、気候が生育に大きく影響する農作物にとっては、暖冬はあまり好ましい気候ではありません。
暖冬による農作物への悪影響
暖冬による悪影響にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
野菜においては、
- 生育の前進化
- 生育不良
- 病害被害 等
が挙げられます。
生育の前進化
成育の前進化が見られやすい野菜には、露地野菜ではブロッコリー、キャベツ、白菜、ホウレンソウなどが挙げられます。暖冬によって生育が早まり、「生育量が増えた」ととらえることができる農家にとっては望ましい事態とも言えますが、前進化によって「出荷が早まる」という難点もあります。
北海道のある農家は、冬取り結球レタスを育てています。冷涼な気候を望むレタスですが、価格の高い11月下旬~翌年3月を狙って出荷するはずが、暖冬により一部のハウスの生育が早まり、出荷が前倒しになってしまいました。
生育不良
ニラなどの葉野菜類は、暖冬によって気温が高くなると収穫までの日数が短くなってしまいます。充実した生育が望めないまま収穫となるため、軟弱な株を収穫することになります。
病害被害
イチゴは気温が高いと生育が進んでしまい、うどんこ病などの病気やアブラムシ等の害虫に目を付けられてしまいます。また生育の前進化により早い段階で着色してしまうことでイチゴの果実が小さくなってしまうことも難点のひとつです。
暖冬による影響は、冬場でも力強く生育するはずのネギにも及びます。ネギの場合、黒斑病やべと病といった病気の発生がよく見られます。
冬の寒い気候が得意な野菜もあれば、寒い気候がまったくダメな野菜もあるので、暖冬による影響が必ずしも悪だとは言えませんが、野菜の特性を知って対策をとらないと収益にも影響が出てしまいます。
暖冬への対策
暖冬により生育が進む農作物の場合には、軟弱徒長してしまうことが懸念されます。農作物の生育の様子をよく観察し、追肥量を減らしたり、不良苗を取り除いたりするなど、健康な苗だけが育成されるような状態を維持しましょう。
ホウレンソウなど
収穫時期に合わせた温度管理が重要です。暖冬によって生育が前進化するのが困るという場合には、よりいっそうハウス内の温度管理を徹底しなければなりません。また気温が高くなると病害虫が発生しやすくなります。初期防除に努めましょう。
イチゴ
温度管理に注意しましょう。ハウス内部の換気や土壌が乾燥しないように気を配るなど、収穫時期にズレが生じないようその生育を観察する必要があります。また温度が高くなると病害虫の発生率が高くなるので、事前に防除しておきましょう。
ネギ
温度が上がることで考えられる病気に黒斑病やべと病等が挙げられます。発生してしまった場合には被害拡大を避けるために防除に努めましょう。基本的には他の野菜同様、暖冬を見越した温度管理が必要になります。
なお生育が進んでしまい軟弱徒長した作物には病害虫がつきやすくなります。病害虫は薬剤散布等で対策することは可能ですが、窒素肥料の多用には注意してください。病害の発生を助長することがあります。また害虫に対する対策は、暖冬に限らず、あらかじめ防虫ネットなどの物理的防除を行ったり、事前の薬剤散布等を行っておきましょう。
今年度の冬の予想
2018年11月、気象庁は「エルニーニョ現象」の発生を発表しました。エルニーニョ現象は、大気の流れや気圧に影響し、世界的な異常気象を引き起こします。その現象によって、東日本、西日本、沖縄・奄美で暖冬となる可能性が高いとされています。
ただこのエルニーニョ現象は、強い寒気が一時的に南下することで大雪を降らせることもあり、農業従事者にとっては厄介以外の何者でもありません。暖冬への対策だけでなく、突然訪れる可能性のある大雪に対しても対策を練る必要があるのでしょう。
大雪に対する対策として、今のうちから農業用施設の点検や整備を行い、大雪による被害を最低限に留められるように備えておく必要があります。冬の間使用していないハウス等設備の資材等も抜かりなくチェックしておいてくださいね。栽培に使用していないハウスは、被覆資材を外しておくことをおすすめします。大雪によるハウスの損壊など、大雪がもたらす被害は規模が大きく、その損失額もバカになりません。2018年2月、福井県で生じた豪雪による被害金額は23億円にのぼっています。
また万が一被害を受けた場合、すぐに経済的なリカバリーがきくよう農業保険に加入することを視野に入れておいてもいいかもしれませんね。まずは被害が起きないことが一番ですが、自然現象にはどうしても叶わない部分というのがあります。セーフティネットをいくつも設けておくことをおすすめします。
農業従事者にとって、気候変化などの自然現象は切っても切れない相手です。暖冬や突然の大雪などの被害から農作物を守るためには、常に気候変化等の情報に関心を向け、柔軟に対応し続けましょう。
参考文献