天候不順に強い野菜の品種開発進む!新品種の事例と新品種がもたらすメリットとは

天候不順に強い野菜の品種開発進む!新品種の事例と新品種がもたらすメリットとは

集中豪雨や大型台風などの天候不順により農作物が被害を受けているという話題をよく耳にします。あらゆる国が気候変動への対応策に取り組んでいるものの、気候変動の問題がすぐに改善されるとは考えにくいもの。今後も天候不順による被害は起こることでしょう。

そんな中、種苗会社や農研機構などが天候不順に強い新品種の育成に取り組んでいます。すでに商品化されている品種もあります。新品種の普及は、天候不順により不安定になりやすい生産量や価格を安定させることができると期待されています。

そこで本記事では、今注目されている天候不順に強い野菜をご紹介していきます。

 

 

天候不順に強い野菜

天候不順に強い野菜の品種開発進む!新品種の事例と新品種がもたらすメリットとは|

 

トマト

猛暑に対応できる新品種が注目を集めています。

「サカタのタネ」が販売している大玉トマト「麗月」

  • 夏場の高温期
  • 梅雨の曇天期

の着果性に優れているのが特徴です。

従来の大玉トマトは、夏の高温期に着果すると、9〜10月の温度が下がり始める時期に実が割れやすく、収量が低下してしまうのが課題でした。しかし「麗月」は着果性に優れているだけでなく、実が割れにくい特徴があり、収穫スケジュールが多少遅れたとしても安定した収量を得ることができます。

また筑波大学らの研究グループは猛暑に耐えられるトマトの品種を育成しました。研究グループの発表によると、受粉が無くても果実が実る「単為結果性」を誘導する遺伝子をトマトに導入し、暑い時期に育成したところ、野生のトマトは暑さにより収量が低下したのに対し、遺伝子を導入したトマトは高い収量を維持しました。

単為結果性は受粉作業を要しないため、作業の効率化をはかることができると期待されています。その上で高温耐性が備わるのであれば、人手不足や天候不順などの課題がある中でも作物を育てやすくなりますよね。

イチゴ

栃木県が開発した「栃木i37号」は、猛暑により起こりやすいイチゴの病気「萎黄病」に耐性をもっています。

萎黄病は葉を変色、奇形化させ、生育不良をもたらす病気です。気温25度以上で発病しやすくなり、30度を超えると多発するといわれています。近年の猛暑は、イチゴにとって大敵でした。

「栃木i37号」は萎黄病に強いだけでなく、栃木県の主力品種「とちおとめ」と同等の食味、一回り大きい実、2〜3割多い総収量と利点がたくさんあげられる注目の品種です。

コメ

穀物の種子が徐々に発育・肥大していくことを「登熟」といいます。稲穂が出て、開花・受粉すると、光合成によって生産されたデンプンが胚乳に溜められ、玄米が充実していきます。

しかし登熟期に気温が高くなると、粒が未熟になり白くなってしまいます。この「白未熟粒」の多発はコメの品質低下につながります。

農研機構が開発した「にこまる」は地球温暖化に対応するために開発されました。高温年であっても白未熟粒の発生が少ないのが特徴です。また高温年における収量も安定しています。

ハクサイ

秋冬どりのハクサイの露地栽培は、

  • 9月中下旬 定植
  • 11〜2月中旬 収穫

が一般的な時期ですが、近年は集中豪雨や大型台風が定植時期に重なることが多く、栽培が難しくなりつつあります。台風が来る前に定植した場合、台風の被害を直接受けて痛んでしまう可能性があります。一方で、台風の時期が過ぎた後に植えてしまうと、苗がその間に老化してしまい、定植しても生長不良が起き、肥大不足や不結球を招くことがあります。

「タキイ種苗」が開発、販売する「ほまれの極み」は遅まき、遅植えが可能な品種です。先で紹介したような「直接被害に耐える」特徴があるものではないかもしれませんが、「定植時期をずらせる」ことも、天候不順に対応するには必要な観点と言えます。

 

 

天候不順に強い農作物がもたらすもの

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天候不順に強い農作物がもたらす恩恵を受けるのは生産者だけではありません。農作物が天候不順の影響を受けると、収量や品質の低下により市場の卸値が高くなり、必然的にスーパーの店頭価格も上がります。新品種の登場で安定的な供給が可能になれば、値上がりをカバーすることができるでしょう。

天候不順に対応する方法は新品種を使う以外にもあります。栽培環境を工夫したり、農業資材を活用するのも手です。ただ、気候変動の問題はすぐに解決できるものではありません。

「環境に対応できる品種」の存在を頭に入れておくこともおすすめします

 

参考文献

  1. 極硬玉で裂果に強い夏秋栽培向け大玉トマト『麗月 … – サカタのタネ
  2. 暑さに強いトマト品種開発に道 ~単為結果性がトマト高温耐性獲得に有効であることを証明〜筑波大学
  3. 栃木県がイチゴ新品種 耐病性や収量性高く 日本経済新聞
  4. Vol.36 2019年3月号 – JAグループ栃木
  5. とちおとめに猛暑の影 病に強い新品種に託す
  6. にこまる|お米|とれたて大百科|JAグループ
  7. 九州で評価を上げるハクサイ「ほまれの極み」 タキイ種苗株式会社

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