需要高まる国産レモン栽培。寒い地域でのレモン栽培のコツ&耐寒性の強い品種とは

需要高まる国産レモン栽培。寒い地域でのレモン栽培のコツ&耐寒性の強い品種とは

日本で消費されるレモン(約5万トン)のうち、4.2万トンを輸入品が占めていますが、近年、円安などを背景に価格が高騰していることや、国産品が輸送時間が短く、収穫後の防カビ剤を使わずに済むことで皮ごと食べられるといった消費者が求める安心志向もあいまって、国産レモンの需要が高まっています。

そんな中、これまで温暖な地域で栽培されてきた国産レモンに変化が生じています。

 

 

山形県、新潟県でのレモン栽培

需要高まる国産レモン栽培。寒い地域でのレモン栽培のコツ&耐寒性の強い品種とは|画像1

 

山形県では「雪国レモン」と名付けられたレモンが栽培されています。また新潟県では、2022年12月から新潟県産のレモンを生産するといった試みが始まり、2026年の本格出荷を目指して栽培方法の普及などが進められています。

いずれの県も、主な栽培地である広島県や愛媛県などと違い、決して温暖な土地ではありません。しかし寒さに弱いというレモンの弱点を見込んだ栽培方法によって、寒い地域でのレモンの栽培・収穫を成功させています。

レモン栽培の基礎

まず、レモンを栽培するうえで知っておきたい基礎知識を以下に記します。

レモンは寒さが苦手です。最低気温がマイナス3度以下になると、寒さの影響を受け、果皮障害や枝の枯れ込み、花の減少などの被害が生じます。また風にも弱く、風が強く当たると落葉しやすくなり、それにより充実した花が咲かなくなるので、樹勢低下につながります。

他に乾燥ストレスやかいよう病にも注意が必要です。乾燥対策にはかん水が重要です。夏場はもちろん、梅雨の時期でも7〜10日以上雨が降らない場合にはかん水します。冬期(1〜5月)も乾燥しすぎると落葉が増え、安定な収量に悪影響を及ぼす場合があるので、冬期もかん水は効果的です。

 

 

寒い地域で栽培するには

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一般的にレモンの露地栽培に適した気候は、年平均気温が15.5度以上であること、年間の温度差が少ないこと、日照量が豊富なことなどがあげられます。また、冬季の最低気温はマイナス3度以上の地域がよく、マイナス4度が3時間以上継続すると凍害が起こる可能性があります。

山形県の事例では、耐寒性の優れた品種を選択すること、生育環境となるビニールハウスへの工夫が、寒い地域での栽培を可能にしました。耐寒性の優れた品種については記事の後半で紹介します。

山形県の事例では、ビニールハウスを二重(またはもう1枚内側にビニールを追加)することで室温を上昇させています。無加温でありながら、レモン栽培に最適な気温に保たれるのはなんと「雪」のおかげなのだとか。降り積もった雪が日光を照り返すことでビニールハウス内の温度が上昇します。

新潟県の事例も同様で、ビニールハウスが活用されています。なお、ビニールハウスは寒さ対策のみならず、雨や風、病害虫の影響を少なくするといった利点もあります。

新潟県の事例によれば、レモンの枝を紐で引っ張るなどして樹勢を整えることで収穫量の安定を図っています。実際、レモンは放置しても大きく育つ果樹ではありますが、樹体を大きくする栄養生長に傾くと、樹が高く伸びるばかりで果実の収穫にはつながりません。樹勢を整え、仕立てた樹であれば、生殖生長に傾き、花芽がつくようになります。

耐寒性に優れた品種、さまざまな品種

まず、日本で栽培されているレモンの大半は「リスボン系」と呼ばれるものです。耐寒性が比較的強いこと、樹勢が強いことが特徴としてあげられます。トゲの多さがやや難点です。

日本で消費されるレモンの主な輸入国であるアメリカ・カリフォルニアを原産とするのが「ユーレカ系」です。レモンの代表的な品種で、耐寒性は比較的弱いものの、トゲが少なく、良好な果形や香気、豊富な果汁が特徴です。

そして、耐寒性に優れた品種といえば「マイヤーレモン」です。

マイヤーレモンはオレンジとレモンの自然交雑で誕生した雑種のレモンで、マイナス6度まで耐えることができます。熟すと果皮のオレンジ色が濃くなります。酸味がまろやかなため、レモン本来の酸味を求める人にとっては物足りないかもしれませんが、国内の流通量は増加傾向にあります。

そのほか、マイヤーレモンを含めた比較的耐寒性の強い品種を以下の表にまとめます。レモンの品種は以下で記すものに留まりませんが、耐寒性がマイナス4度の品種は省略していることをご了承ください。

耐寒性 果実の大きさ 収穫時期 特徴

マイヤーレモン

−6℃ 100〜130g 9〜12月

皮が薄い
酸味がまろやか

リスボン

-5℃ 100〜140g 10〜3月

寒さに強い

アレンユーリカ

100〜120g 9〜5月下旬

樹勢がやや弱い
トゲが少ない

クックユーリカ

110〜130g 9月上旬〜12月上旬

香りがよい
酸味がしっかりある

ラフマイヤー

80g 10月頃

果汁が多い
病気にも強い

スイートレモネード 100g 11月中旬〜2月上旬

ミカンとレモンの交配種
手で皮がむける

 

参考文献

  • JA広島ゆたか編・大坪孝之監修『育てて楽しむ レモン栽培・利用加工』(創森社、2022年)(初版は2018年)
  • 農文協編『現代農業 2023年11月号 特集:レモンとユズと香酸カンキツ』(農山漁村文化協会、2023年)

参照サイト

(2024年6月17日閲覧)

 

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