促成栽培、抑制栽培、いずれも通常の収穫・出荷時期をずらして栽培することを指します。
促成栽培とは
促成栽培は、通常の収穫・出荷時期より「早めに」収穫・出荷する栽培方法です。温暖な気候を活かして野菜の生育を早めます。温暖な高知県や宮崎県で、ビニールハウスなどを利用して促成栽培が行われます。
促成栽培は収穫時期の前進程度の大きい順に「促成栽培」「半促成栽培」「早熟栽培」の3つに区分されています。トマトやピーマンなどの野菜を、ハウスやトンネルなどを使用して定植、加温または保温、収穫を下記の時期に行います。
定植時期 | 加温または保温時期 | 収穫時期 | |
促成栽培 | 晩夏から秋にかけて | 晩秋から春まで | 11月末頃から翌年6月頃まで |
半促成栽培 | 11〜1月 | 春まで | 2〜3月から6〜7月まで |
早熟栽培 | 3月頃 | 春まで | 通常の収穫時期より1ヶ月前進(5月頃から) |
抑制栽培とは
一方、抑制栽培は通常の収穫・出荷時期よりも「遅らせて」栽培する方法です。通常の適期よりも遅くに種を蒔いたり、高冷地など夏が涼しい気候や立地条件を利用して出荷時期を遅らせます。
抑制栽培の代表的な事例には愛知県・渥美半島の電照菊や八ヶ岳(長野県・山梨県)、浅間山(長野県・群馬県)の高知を活かしたレタスなどの高原野菜が挙げられます。
促成栽培と抑制栽培のメリット・デメリット
いずれの場合にも言えるのが、旬の時期よりも早く(または遅く)に出荷することで商品価値を高めることができるというメリットです。通常出回らない時期に生産・出荷することで、高い値段で販売することができ、利益を得ることができます。
デメリットとして挙げられるのが、ハウスやトンネルといった設備にかかる費用、作物が育ちやすい環境を整えるために温度や湿度を調整するための設備や燃料にかかる費用です。
抑制栽培の高温対策について
施設園芸では冬場に栽培を行う際、温度調整のためにボイラーなどが必要になり、コストが高くなる傾向にあります。抑制栽培の場合は、高冷地などで栽培を行うため冬場のコストはかかりにくいですが、夏場は高温対策が必要になる場合があります。
抑制栽培を行う際、ハウス内の高温対策としては
- 換気
- 遮光
- 気化冷却
が挙げられます。
換気による温度調節には限界がありますが、換気窓を利用した自然換気や換気扇を利用した強制換気の方法があります。
自然換気の場合、換気窓の開口部面積が広いことが重視されますが、高軒高(軒高:地面から軒の敷げたの上までの高さのこと(出典元:不動産売買サイト【住友不動産販売】不動産用語辞典))のハウスでは一般的に側窓がない設計になっており、ハウス面積が広いと換気が期待できないこともあります。また開口部が広くても、防虫対策のため換気窓に目合いの細かい防虫ネットを設置していると、換気性能は低下します。
強制換気はハウス妻めん(妻:建物の棟(むね)と直角の両側面をいう(出典元:株式会社平凡社 百科事典マイペディア))に大型の換気扇を設置することでハウス内に気流を発生させ、排気を行う方法です。
遮光は、遮光資材を使用して直達光(直線的に到達する太陽光)を遮り、室温の上昇を抑制します。遮光率が大きい遮光資材ほど高温対策の効果は上がりますが、光合成に必要な光が十分確保できないという懸念もあります。
また遮光資材自体に吸収した熱の再放射があるので、被覆内に遮光資材を設置する内部遮光の場合は、換気と併用して室温上昇を防ぐ必要があります。
最後に気化冷却です。気化冷却は、水が蒸発(気化)する際に周囲から熱を奪う現象を利用したものです。代表例には、ミスト(細霧)を発生させる細霧冷房が挙げられます。細霧冷房で発生するミストが細かい粒径であるほど冷却効果は高くなります。
細霧冷房装置の設置は比較的高価なので、高温対策の中では比較的初期投資がかかるものといえます。
ハウス内の相対湿度が高くならないよう換気を行うことで、細霧冷房の気化冷却効果を高めることができます。
参考文献