農産物トレンドを知る、振り返る【後編】2025年注目の野菜とは。

農産物トレンドを知る、振り返る【後編】2025年注目の野菜とは。

前編では2024年のヒット野菜を振り返りました。続く後編では、2025年に注目が集まる野菜についてご紹介していきます。

 

 

2025年に注目が集まる野菜

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日本農業新聞が毎年実施している農畜産物トレンド調査で、2025年はブロッコリーが1位を獲得しています。ブロッコリーは簡単に調理できる手軽さが消費者に支持されています。また、健康指向の高まりと筋トレブームを受けて、ブロッコリーの高い栄養価にも注目が集まっています。加えて、農林水産省がブロッコリーを国民生活に欠かせない重要な野菜として26年度に「指定野菜」に追加するのを見越して、今後の生産や需要の拡大が期待されています。

2024年まで6年連続1位だったサツマイモは2位にランクイン。甘い品種の「べにはるか」や「栗かぐや」などが注目されており、焼き芋やスイーツの素材としての需要が高まると予測されています。

また3位にはサラダや弁当に適した簡便さが支持されているミニトマト、4位には物価高や節約志向を背景に需要が高まったもやし、5位、6位には調理法が簡単で食味もよいタマネギやスナップエンドウがランクインしました。

なお、果実においては愛媛県のブランドかんきつ「紅まどんな」が2年連続で1位となっています。産地限定で栽培されている希少性とおいしさが評価されています。そのほか、2位にイチゴ「とちあいか」、3位に極早生ミカン「ゆら早生」がランクインしています。

野菜や果実の上位の品目・品種を見ると、味や簡便性に加え、気候変動下でも品質や出回り量が安定した“手堅さ”が再評価されています。

 

 

トレンドキーワードで見る野菜の需要

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有機・無添加食品やミールキットの通信販売を行うオイシックス・ラ・大地株式会社が発表した最新の青果トレンドで、興味深いトレンドキーワードが登場しました。本記事でご紹介するのは「スペパ」「タイパ」「国産トロピカル」です。

「スペパ」「タイパ」はそれぞれ「スペースパフォーマンス」「タイムパフォーマンス」の略で、消費者のニーズを反映した新しいキーワードです。簡便性と効率性を求める現代のライフスタイルに対応した野菜が注目されると予想しています。

たとえば「スペパ」では、家庭で使いやすく、冷蔵庫やキッチンのスペースを無駄にしないミニサイズの野菜に注目が集まります。ミニサイズであれば食材を使い切りやすく、保存の負担を軽減するだけでなく、包丁を使わずに簡単に調理できたり、忙しい日常の中で便利に活用できるとして注目されています。

一方「タイパ」では、時短調理に適した野菜が注目されています。

もう一つのキーワード、「国産トロピカル」はその名の通り、国内で栽培されるトロピカルフルーツです。昨今、東北や北海道でもバナナが収穫できるようになりました。国内で栽培されるトロピカルフルーツは害虫リスクが少なく、農薬を使わない高品質なものが産出されています。品質の高さと安心感を提供する国産のトロピカルフルーツは、今後ますます需要が高まると予測されています。

 

 

2025年の農畜産販売におけるキーワード

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日本農業新聞は売れ筋野菜のトレンド調査だけでなく、販売キーワードも調査しています。その結果、最も注目されるキーワードに「適正価格」があがりました。このキーワードは上昇するコストの転嫁が引き続き課題となる中で、消費者の節約志向と企業の経営状況を反映しています。

また3位には「安定供給」がランクイン。気候変動や異常気象による供給の不安定化が進む中、安定した供給体制が実現できるかどうかが課題となっています。特に、近年は夏の猛暑や天候不順が農産物の需給バランスに影響を与えており、農業現場の苦しさが顕在化しています。

消費者の節約志向が強まる中、「値頃感」へのニーズも増しています。1位にあがった「適正価格」を保ちつつも、消費者にとって手頃な価格設定が求められます。そのため、価格転嫁の難しさが生産者や流通業者にとって大きな課題となるはずです。

加えて、2025年における販売キーワードの6位には「外国人需要」がランクイン。輸出やインバウンド需要の拡大が期待されています。日本産農産物の価値向上や新たな市場開拓のチャンスが生まれるのではないかと見込まれています。

 

 

海外のトレンド

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最後に、海外の注目トレンドについても見ていきます。2025年に注目される食のトレンドには、植物由来の加工肉、健康志向の高まりに沿った食品などがあげられます。

植物由来の加工肉

動物製品から植物および細胞ベースの代替品を推進する非営利団体Good Food Instituteによると、植物由来の代替肉は、動物由来の同等品に比べ、価格が平均して77%高く、その売り上げは2021年から2023年にかけて減少しています。

とはいえ、アメリカのニュースチャンネルCNNの記事によれば、植物由来の加工肉(ハムやソーセージ、パテ、テリーヌなど)は普及しつつあります。その背景には、購買層がスライスされた惣菜肉の値段が割高であってもその購入に慣れており、植物由来の加工肉の価格にそれほど悩まされていない、とあります

また、日本の発酵食品に欠かせない「麹」が注目を集めています。デリ製品や豚肉製品に焦点を当て、米麹をベースとする食肉生産会社Prime Rootsは、硝酸塩、保存料、コレステロール、大豆、小麦を一切使わず、スパイスと麹だけで作られた「Koji-Meats」なるものを販売しています。

健康志向の高まりに沿った食品

イギリスの小売業者マークス&スペンサーのウェブサイトでは、健康的な食事に関する考え方が進化し、オメガ3や亜鉛などの栄養素が含まれた「ブレイン・フード」(脳に欠かせない栄養素が豊富に含まれている食べ物)のような製品が人気を集めている、とあります。

そのため、2025年には従来のダイエット法よりも、長期間に渡って健康で豊かな生活を送るために必要な食品が注目されると予測されています。

健康食品として注目を集めるものにはキノコ類があげられます。「山伏茸」や健康食品として利用されている「霊芝」(日本ではマンネンタケとも)を使った製品が話題となっています。

そのほかの注目食品

東南アジア料理の定番果物「カラマンシー」のスーパーマーケットやレストランでの利用が広がると予測されています。カラマンシーはミカン科ミカン属の常緑低木で、フィリピンを中心に東南アジアで栽培されている柑橘類の一種。シークワーサーやすだちに形や大きさが似ていますが、シークワーサーの皮には強い苦味がある一方で、カラマンシーの皮は薄く、苦味だけでなく甘味があります。

そのほか、すでにスイーツなどでも使用されている「ピスタチオ」も注目食品として、2025年のトレンド食品を紹介するいくつかの記事に掲載されています。なお、ピスタチオの国内生産は難しいといわれていますが、前述した「国産トロピカル」に通ずるような取り組みも行われています。

広島県福山市にある徳永製菓株式会社は、約99%を輸入に頼るピスタチオの国産化を目指し、耕作放棄地を活用して国産ピスタチオの栽培を始めています。

【参照元】進む食品の“国産化”への挑戦 ピスタチオにコーヒー、アボカドも… 「海外からピスタチオが届かない」約99%が輸入品|日テレNEWS NNN

これらのトレンドは、健康意識の高まりと新しい食文化の進化を反映し、消費者の選択肢に多様性をもたらしています。

 

参照サイト

 

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