本記事でご紹介するのはバナナ、パイナップル、マンゴー、そしてアボカドです。熱帯果樹の種類は多く、日本国内では他に、パッションフルーツやパパイア、アセロラ、チェリモヤ、ピタヤ、レイシなどの栽培が行われています。
バナナの生理的特性と栽培方法
生育適温:25°C〜30°C
開花から成熟までの期間:約3〜6か月
最適な土壌pH:5.5〜6.5
土壌条件:良好な排水性を持つ肥沃な土壌
世界でもっとも生産量の多い果樹であるバナナには多くの品種・系統があります。
品種・系統の違いや栽培環境によって異なるものの、いずれも高温多湿な環境を好みます。土壌pHが5.5〜6.5の間、排水性が良く肥沃な土壌を好みます。
本来バナナは月の平均気温27℃が栽培適温とされており、10℃以下になると生育が停止することから、ほとんどが温帯に属する日本、特に本州地方では栽培が難しいとされてきました。
上記をふまえ、日本では、比較的暖かい地域である沖縄県や鹿児島県でのバナナ生産が盛んですが、近年では適切な管理の下、兵庫県や岡山県、新潟県や秋田県といった寒い地域での栽培も広がりを見せています。
なお、生育適温が高く、10℃以下になると生育を停止してしまうバナナですが、熱帯高地のような低温環境下で時間をかけて成熟したもののほうが品質は良いとされます。
パイナップルの生理的特性と栽培方法
生育適温:24°C〜27°C
開花から成熟までの期間:約12〜18か月
最適な土壌pH:5.5〜6.0
土壌条件:良好な排水と風通しの良い土壌
パイナップルは暖かい気候とpHが5.5〜6.0の排水性のよい砂土、砂壌土を好みます。パイナップルには耐塩性もあります。一方で、霜に弱いため、寒冷地では栽培が難しいとされています。そのため国産のほとんど全てが沖縄県で栽培されています。
葉に棘があるものとないものがありますが、基本的には作業性から棘のないものが選抜されます。
パイナップルは乾燥条件に適した光合成型を持つCAM植物です。この特徴から生育が緩慢なため、苗を植え付けてから収穫まで2年ほどかかります。
マンゴーの生理的特性と栽培方法
生育適温:22°C〜30°C
開花から成熟までの期間:約4〜6か月
最適な土壌pH:5.5〜7.5
土壌条件:良好な排水性を持つ肥沃な土壌
マンゴーは世界の熱帯地帯で栽培される果物です。生育適温は22°C〜30°Cで、10〜15℃の低温や乾燥条件で花芽分化が促進されます。乾燥に強い特徴がある分、湛水など湿害には弱いです。また霜を受けたり、0℃以下になると枯死してしまうことに注意が必要です。
一般的には沖縄県など南国気候の地域で栽培が行われています。寒冷地では温室栽培が必要になりますが、冬季の温度を5℃以上に管理すれば北海道でも栽培が可能です。
沖縄県産・宮崎県産の出荷が5月・6月に対し、北海道産のマンゴーは7月・8月頃に出回ります。北海道新聞によると2023年時点で、北海道内5カ所でマンゴー生産が行われているとのこと。温度を保つために利用するエネルギーには温泉熱の他、灯油ボイラーやバイオガス発電の余剰熱、下水道汚泥の処理熱があげられます。
またマンゴーは元々樹高が10〜20m以上になる高木性常緑樹なのですが、日本ではハウスで栽培されるため樹高を低く抑えるために剪定作業が必要です。
アボカドの生理的特性と栽培方法
生育適温:20°C〜30°C
開花から成熟までの期間:約8〜18か月
最適な土壌pH:6.0〜7.0
土壌条件:良好な排水と風通しの良い土壌
アボガドはメキシコ系、グァテマラ系、西インド系の3系統とこれらの交雑種があります。系統によって生理的特性が異なります。たとえばアボカドは高温多湿な気候を好みながらも耐寒性があります。その耐寒性は、メキシコ系では-6℃、グァテマラ系は-4.5℃、西インド系は-2.2℃です。
アボカドの主な品種と着果を安定させるための方法(混植または人工授粉)は下記の記事も参照してください。
密かなブーム。国産アボカドと種類。
注目集まる国産アボカド栽培。アボカド栽培のポイントとは
参考文献:荻原勲『図説園芸学』(朝倉書店、2020年)
参照サイト
- 雪国でも…栽培広がる日本産バナナ なぜ皮も食べられる
- 日本のバナナ、特に沖縄の島バナナに迫る | 現地レポート | セイコーエコロジア
- 令和4年産パインアップルの収穫面積、収穫量及び出荷量(沖縄県)
- <若林彩記者が読み解く>極寒の地で完熟マンゴー エネルギー消費大でも続くワケ:北海道新聞デジタル
(2024年4月12日閲覧)