RACとはResistance Action Committeeの略称で、日本語では「抵抗性(耐性)対策委員会」と訳されています。RACコードは農薬の作用機構の分類コードです。
RACコードを理解しておくと、農薬を使い続ける中で、病気や食害の原因となる害虫や微生物に対して薬剤が効きにくくなるのを防ぐことにつながります。
IRAC、FRAC、HRACの違い
RACコードは殺虫剤、殺菌剤、除草剤によってそれぞれIRAC、FRAC、HRACに分けられます。
- IRAC(Insecticide Resistance Action Committee)
IRACコードは殺虫剤の作用機構を示す - FRAC(Fungicide Resistance Action Committee)
FRACコードは殺菌剤の作用機構を示す - HRAC(Herbicide Resistance Action Committee)
HRACコードは除草剤の作用機構を示す
RACコードの読み方については後述しますが、IRAC、FRAC、HRACそれぞれのコードには注意点があります。IRAC、FRAC、HRACそれぞれの団体の成り立ちが異なり、独自に活動していることから、同じ「RACコード」でありながら、その表記方法には統一性がありません。
それぞれのコードに同じ記号や番号が使われている例があるので、確認する際は注意が必要です。
農薬が効かなくなる前にRACコードを確認
農薬を繰り返し使い続けていると、薬剤が効かなくなる個体群が発生することがあります。薬剤が効かなくなってきた……と感じる前に確認しておきたいものこそがRACコードです。病気の原因となる害虫等に薬剤抵抗性を付けさせないため、ローテーション防除を心がけている人は少なくないと思いますが、異なる農薬を使っているように見えても、RACコードが同一の場合には、どんなにローテーションしているつもりでも、連用散布、すなわち効き方が同じ農薬を連用していることになってしまいます。
効き方の異なる農薬によるローテーション防除を行うためには、RACコードを確認する必要があるのです。
RACコードの読み方
RACコードは数字、アルファベット、または数字とアルファベットを組み合わせた記号で表されます。たとえば殺虫剤を見てみると、有機リン系の殺虫剤は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]と表されます。
先述したとおり、IRAC、FRAC、HRACは独自に活動していることから、コードの表記方法に統一性がありません。殺虫剤(IRAC)の場合、[11]が「微生物由来昆虫中腸内膜破壊剤」を意味し、[11A]の有効成分は「Bacillus thuringiensisと殺虫タンパク質生産物」ですが、一方で殺菌剤(FRAC)の[11A]は呼吸に作用する有効成分「メチルテトラプロール」を指します。
RACコードは製品ラベルやチラシなどに記載されます。IRAC、FRAC、HRACの3つは[I][F][H]と短縮表記されることもあります。
「殺虫剤分類 1A、14」とあった場合、有効成分が2つ混合されていることを表します(RACコードは1A、14)。「殺虫剤分類 2B、殺菌剤分類6」とあった場合は、殺虫剤と殺菌剤が混合されていることを表します(RACコードは殺虫剤が2B、殺菌剤が6)。
ただし、全ての農薬製品にRACコードが記載されているわけではありません。また、RACコードが決まっていないものは「-」と記載されます(例「殺虫剤分類 1A、-」)。
農薬ラベルの読み方やRACコード記載例が掲載されているので、下記資料もぜひご活用ください。
参照サイト
農薬工業会が提供する「RAC コード」 情報について
RACコード – 公益社団法人 緑の安全推進協会
【農薬のローテーション防除】RACコード先進国、日本!?(全文掲載) – 現代農業WEB
農薬の効き目が落ちない!RACコードでローテーション防除 | ルーラル電子図書館の更新情報
農薬の種類と使用について – アグリポートWeb
(上記2024年2月1日閲覧)