病害から農作物を守る!正しい殺菌剤の選び方&使い方

病害から農作物を守る!正しい殺菌剤の選び方&使い方

農業を営む人は農作物の病害による被害に、一度は頭を抱えたことがあるのではないでしょうか。農作物の品質や味に悪影響を及ぼす病害。その原因となる病原菌は、空気中や土の中に日常的に存在しています。病原菌の生育に適した条件が揃ってしまうと、植物は病気にかかってしまいます。

そんな病害から農作物を守るのに便利なアイテムに「殺菌剤」があります。本記事では、殺菌剤について着目し、農作物を守るのに適した正しい殺菌剤の選び方をご紹介していきます。

 

 

殺菌剤の効果

病害から農作物を守る!正しい殺菌剤の選び方&使い方|画像1

 

病害が発生する理由は、病原菌が生育しやすい環境条件になってしまうことです。そのため病害を予防するためには、病原菌が好まない生育環境をつくることが必要になります。殺菌剤には、

  • 予防効果
  • 治療効果

の、主に2つの効果があります。

1つ目は、農作物や農作物周辺に撒くことで、病原菌が植物に棲みつくのを阻止する効果があります。例えば殺菌剤には、病原菌の生体成分に影響を及ぼすものがあります。これにより、病原菌が生きるのに必要なアミノ酸やタンパク質などの合成を阻害し、病原菌の成長や増殖を抑えることができます。病原菌がうまく生育できなくなれば、農作物への感染を防ぐことができるのです。また病原菌の細胞壁を破壊する殺菌剤もあります。細胞壁が破壊されると、細胞が破裂してしまい、病原菌は死にます。

2つ目は、すでに病原菌に冒されている農作物に対して働きかける効果で、それ以上病害が進まないよう、病原菌を抑制する効果があります。代表的な効能として「メラニン生合成阻害」が挙げられます。病原菌の中には、植物に侵入する際菌糸を伸ばして侵入するものがいます。しかし治療効果のある殺菌剤により、病原菌のメラニン生合成が阻害されると、菌糸は侵入できなくなります。そのため、病原菌に冒されている農作物の感染を抑制することができるのです。

 

 

殺菌剤の種類

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予防殺菌剤

予防効果のある殺菌剤には、

  • ダコニール
  • オーソサイド水和剤など

が挙げられます。これらは、農作物の葉の表面に付着している病原菌や空気や土から飛んできた病原菌から農作物を守る効果があります。

治療殺菌剤

農作物がすでに病原菌で冒されている場合、すでに植物内に侵入している病原菌に効くのがこのタイプの殺菌剤です。

  • ベンレート水和剤
  • サプロール乳剤
  • トップジンM水和剤

などが挙げられます。

 

 

正しい殺菌剤の選び方

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殺菌剤を選ぶポイントは、

  • 病原菌の種類を知ること
  • 殺菌剤の特性、効果を知ること
  • 用途や使用方法に応じたものを選ぶこと

です。

殺菌剤に限らず、薬剤にはさまざまな種類があります。病害虫の種類や被害状況も多種多様なわけですから、それぞれに合った薬剤があるのです。そのため病害の種類を特定する前に誤った薬剤を使用してしまうと、効果が得られないこともあれば、その殺菌力の強さによって農作物に薬害が出る可能性もあります。正しく選ぶためには、はじめに敵(病原菌、病気)を知りましょう!

また殺菌剤をそのまま使用できるのか、水で薄める必要があるのか、これらの見落としには十分注意してください。使用する際には、殺菌剤に記載されている使用濃度で利用します。効果を高めたいからといってあまり薄めなかったり、コストを削減したいからと多めの水で薄めたりするのはNGです。記載されている濃度でないと効果を発揮しないと考え、選び方のポイントを参考に正しく選ぶとともに、正しい使用方法で使いましょう。

 

 

正しい殺菌剤の使い方

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殺菌剤を利用する際、起きうる問題があります。それは同じ殺菌剤を使い続けることで生じる薬効の低下です。農業において厄介な存在に、薬剤耐性をもつ菌の存在があります。ただし決して同じ殺菌剤を使い続けたから、菌が薬剤耐性をもった・・・というわけではありません。薬剤耐性菌は突然変異によってたまたま生じます。しかし同じ殺菌剤を使い続けると、耐性をもっていない菌だけがいなくなり、耐性菌だけが生き残る状況になります。そうなると、殺菌剤を撒いているにも関わらず、耐性菌を選択しているという皮肉な結果に陥ります。

殺菌剤を使用する場合には、違う薬効のある殺菌剤をローテーションで散布することがおすすめです。違う系統の殺菌剤を撒けば、Aという殺菌剤に耐性のある菌をBという殺菌剤で防除することができます。ただしここでも注意点が1つ。殺菌剤によって「混用可否」など注意事項が記載されています。ローテーション散布は効果的ではありますが、混用してはならない殺菌剤を使用してしまっては意味がありません。事前に殺菌剤の特性、効果を知り、殺菌剤に記載された禁止事項を誤って行わないよう注意しましょう。

農作物が病害被害に遭うと、品質が低下したり収量が減少したりと色々厄介です。ですが病害被害を早々に解決したいからといって、むやみやたらに殺菌剤を撒くのはNGです!必ず原因を突き止め、正しい用途の下で使用するようにしましょう。

 

参考文献

1,殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性 住友化学園芸
2,殺菌剤はなぜ効くのですか。 農薬はどうして効くの?|教えて農薬Q&A 農薬工業会
3,病害防除の基礎知識と殺菌剤の上手な使い方
4,howto情報|農薬の基礎知識|ホームセンター

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