消費者の有機食品購買率が増えている
昨今、消費者の有機食品への関心が高まっています。
農林水産省が2019年8月下旬から9月上旬に行った調査によると、有機食品を食べる頻度について「週1回以上食べる」と答えた人が3割以上を占めています。
調査対象となったのは「1年以内に有機食品の飲食経験がある20歳以上の男女1099人」。有機食品を食べる頻度についての回答は、
- ほとんど毎日 5.9%
- 週に2、3回 12.1%
- 週に1回 16.7%
となり、「週に1回」は全体の34.7%を占めました。
有機食品の購入を増やしたい品目については、
- 生鮮野菜 59.5%
- 生鮮果実 25.8%
- パン 25.3%
- 米 22.6%
と、生鮮野菜が最多となりました。
また有機食品に対して「国産」を求める割合も高いことがわかっています。米は「国産しか購入しない」「割高でもできるだけ国産を購入する」という回答の割合が86.2%を占め、青果物に関しても
- 生鮮野菜 67.4%
- 冷凍野菜 56.6%
- 生鮮果実 54.7%
の割合で「国産」が求められていました。
有機農産物を始めるメリット
消費者の有機食品、「国産」への購買意欲の高さは、有機農産物の栽培を始めようと考えている人の後押しになるのではないでしょうか。以下に有機農産物を始めるメリットについて紹介していきます。
新たな販売機会が生まれる
有機食品への関心が高まっている今、有機食品を積極的に取り入れている小売店やレストランなどへ販売する機会が生まれます。
有機農産物のブランド化にも力を入れれば、農産物の流通先が増えるだけでなく、朝市や直売所、ファーマーズマーケットなど、お客様と直接やりとりできる機会を増やすこともできます。
現代の価値観に沿った生業ができる
有機食品を通じて、現代の価値観を知ることができます。
日本人の「生活満足度」のピークは1984年と言われています。1970年代に働き盛りだった人たちを「モーレツ世代」と表すことがありますが、現代の生き方は「モーレツ世代」とは異なるものです。
若い世代は「人と環境にやさしい社会」を望む傾向にあります。都市から地方へ移住したり、「半農半 X 」と呼ばれる生き方を実践したり、「モーレツ世代」の時代には考えられなかった働き方をする若い世代は増えつつあります。
そんな彼らは「人と環境にやさしい社会」を考える中で、しばしば有機食品に触れています。有機農産物の栽培は、現代の価値観に沿った生業につながります。
新たなビジネスにもつながりやすい
また有機農産物を生産・販売するだけでなく、グリーンツーリズムなど、新たなビジネスにもつながりやすいのもメリットのひとつです。
グリーンツーリズムとは、参加した人が農村漁村に滞在し、農漁業体験を楽しむ活動のことです。有機食品に関心の高い消費者の中には、実際に農業体験をしてみたいと考える人も少なくありません。そこで、有機農産物を生産しながら、農業体験も提供するのです。
地域の人々との交流を図ることができるグリーンツーリズム。地域全体で農産物の有機栽培に取り組み、人々を呼び込んでいるところもあります。
有機農産物のデメリットを理解する
関心が高まっている有機食品ですが、有機農産物に取り組むにあたり、課題やデメリットが立ちはだかります。
昨今の新規就農者は有機農業志向が強いと言われています。全国農業会議所「2010 年度新・農業人フェアにおけるアンケート調査によると、新規就農者の有機農業への関心は、
- (有機農業を)やりたい 28%
- 興味がある 65%
となりました。新規就農者だけでなく、すでに農業に従事している人たちの関心も高まっていますが、彼らの回答には「条件が整えば有機農業に取り組みたい」という意向があります。
有機農業は生産するのに手間がかかります。
化学農薬・肥料を使用すれば、即効性がありますし、成分が均一に与えられることにより、生産量や品質を一定に保つことができます。しかし有機農業では化学農薬・肥料を用いることができないため、生育不良や病害にあったときも即効性のある農薬・肥料を使うことができません。
味や見た目にばらつきが生じやすく、出荷できる数に限りがあります。十分に育たなかった場合には、出荷できないことも。
また生産物に「有機」と表記するためには第三者から認定を受ける必要があるのですが、認定にはお金がかかります。
これらの課題・デメリットを乗り越えるには、
- 生業としてどうありたいかを明確に定めること
- 有機農産物の販路を練っておくこと
が重要なのではないでしょうか。
農林水産省の調査からもわかるように、消費者の有機食品への関心は高まっています。彼らが買いたくなるような有機農産物を生産することももちろん重要ですが、有機食品を求めている層に確実に届くような販路を練りましょう。
生産にかかる手間やコストを取り返すためには、価格設定やブランド化も重要ですね。
参考文献