遊休農地の活用にナッツを育てる。育てやすいナッツまとめ

遊休農地の活用にナッツを育てる。育てやすいナッツまとめ

遊休農地とは「現に耕作されておらず、かつ、引き続き耕作されないと見込まれる農地」のことです(引用元:遊休農地・荒廃農地について|滋賀県「1号遊休農地」より)。

遊休農地があるということは、その農地が適切に維持管理されていないことに他なりません。そうなると、雑草が繁茂することで病害虫の温床となったり、食害をもたらす鳥獣の住処となったりするなど、遊休農地周辺の営農活動に悪影響を与えることになります。また、遊休農地への土砂やゴミの不法投棄を誘発することにもつながります。

遊休農地を発生させないことが重要ですが、発生してしまった場合には再生利用によって活用することが、紹介した悪影響を回避するためには大切です。

再生利用のアイデアにはさまざまなものがありますが、本記事ではナッツの栽培について紹介していきます。

 

 

日本でも栽培しやすいナッツ

遊休農地の活用にナッツを育てる。育てやすいナッツまとめ|画像1

 

日本の気候でも栽培しやすく、栽培事例のあるナッツには、ヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミがあります。アーモンドについては、もともと夏場に雨が少ない地域の果樹ということもあり、雨に強い品種を選ぶ必要がありますが、果樹の手入れが比較的簡単であることや果肉を取り除いて乾燥させれば日持ちするため、年間を通じて販売することができます。

以下の表は、本記事で紹介するヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミの特徴をまとめたものです。

植え付け時期 剪定 結実 収穫時期

ヘーゼルナッツ

12月〜翌2月

寒冷地は春植え

適度に切り戻しや間引きを行う必要あり

雌雄異花

2品種以上の混植がオススメ

国内生産量の95%を占める長野県では8月下旬〜9月上旬(成熟期)

アーモンド

冬季に長い結果枝の先端を切り詰める、込み合っている部分のみ間引く、残す結果枝の本数は少し多め 自家不結実性の品種の場合は、異品種の混植または異品種の花粉を授粉

カリフォルニア産アーモンドの場合、8月中旬〜10月

外側の果肉がさけ、乾燥した殻が見えてきたら

クルミ 枝が込み合ってきたら間引きや側枝の切り戻しが必要 雌雄異花

雌花と雄花の開花時期のずれが小さい品種を選ぶ、または数品種の混植がオススメ

場所や品種による

カリフォルニア産クルミの場合、8月下旬〜11月下旬

日本の栽培品種のほとんどが栽培されている長野県では9月下旬〜10月中旬

ヘーゼルナッツ

遊休農地の活用にナッツを育てる。育てやすいナッツまとめ|画像2

 

日本で栽培されているヘーゼルナッツの95%が長野県産です。他の果樹同様、定植してすぐ実がとれるわけではありませんが、栽培で気をつけるべき病害虫が少ないこと、殻が厚いために鳥獣害に遭いにくいこと、手をかけずに育つ最適な土地を選ぶ必要はあるものの、主な管理作業が株間の草刈りと剪定、収穫は果実が成熟すると地面に落ちるので、その実を拾うだけ、といった労力の少なさから国内での栽培に注目が集まっています。

ヘーゼルナッツは水はけがよく日当たりがいい場所を好みます。たくさん植える場合には5mくらいの間隔を設けます。以下のような手順で植え付けます。

  1. 直径50〜60cm、深さ40cm程度の植え穴を掘る
  2. 堆肥、一握りぐらいの化成肥料を表土部分の土と混ぜる
  3. 1の穴に苗の根をよく広げて植える
  4. 植え付けたら支柱を1本添えて固定する

ヘーゼルナッツは地下茎から伸びた枝が広がり、茂る性質があります。そのため、主枝を3〜5本くらいに制限して低い樹高に仕立てます。

先述した通り、気をつけるべき病害虫は少ないです。注意が必要となるのは、カミキリムシやコウモリガなど、枝幹を侵す害虫です。また葉を食害する害虫が発生した際は防除が必要です。

アーモンド

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日本国内では、鹿児島県や埼玉県、山形県で栽培が行われています。冒頭でも紹介したように、元来アーモンドは乾燥する温暖な気候を好みます。耐乾性はあるものの、耐寒性は低く、冷害や霜害には弱いので、寒く霜による被害が起きやすい地域の栽培には適していません。

アーモンドを露地栽培する際は、変則主幹形(主幹を途中で切り戻し、側枝を伸ばして丸い形に作っていく)または細めな主幹形(主幹が中央にまっすぐ伸びた状態)に仕立てます(参照サイト:果樹の仕立て方について)。

日本でも栽培しやすい品種である「ダベイ」は、高温多湿でも栽培しやすく、また自家結実性なので、花が咲けば受粉などの作業を施すことなく実が付きます。もちろん自家不結実性の品種もあります。自家不結実性の場合には、異品種の混植、または異品種の花粉を受粉させて結果させます。

病害虫については、アーモンドがモモの仲間であることから、モモに準じた防除が必要になります。先で紹介したダベイは病害虫に強い品種ではありますが、せん孔細菌病、縮葉病、炭疽病などの病害や、シンクイムシ類やコスカシバ、アブラムシ類、カイガラムシ類といった害虫には注意が必要です。

クルミ

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農林水産省が実施した「令和3(2021)年特産果樹生産動態等調査」(かんきつ類以外の果樹【落葉果樹】)によると、2021年に調査されたクルミの生産量は長野県が50.1トンで全国1位となっています。そのほか北海道、青森県、愛媛県が栽培地域としてあげられています。

なお、日本で栽培されている品種のほかに、日本原生の「オニグルミ」や「ヒメグルミ」がありますが、オニグルミ・ヒメグルミは野生種を収穫して利用するのが主体となっています。

胡桃は一般的に変則主幹形に仕立てます。樹勢が強く、伸びるに任せて育てると大木となります。クルミの収穫は落下した殻果を拾えばいいのですが、あまりに大木になりすぎると病害虫の防除が困難になるので、適宜、整枝・剪定の作業が必要です。

冒頭の表でクルミの結実について記していますが、開花時期のずれが小さい品種を選ぶか混植がオススメな理由は、クルミの雌花と雄花が別々に咲くうえ、雌雄の開花時期がずれる品種が多いからです。

クルミ科の樹木に特有な害虫にはクルミハムシやムラサキイラガ、クスサンなどがあげられます。クルミ黒斑細菌病にも注意が必要です。

 

参照サイト

(2024年6月18日閲覧)

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