ナッツは「堅い殻に包まれた果実の総称」で、クルミやアーモンド、ピーナッツなどが挙げられます。世界のナッツ製品市場は成長を続けており、その背景には消費者の健康志向の高まりやグルテンフリー、植物由来といった製品への嗜好の高まりなどが挙げられます。
日本においても、低糖質を意味する「low-carb」からきている「ロカボ」を謳ったナッツ製品や、塩や油を使わないナッツ製品など、健康的な食品として購入する人が増え、また新型コロナウイルスによる巣ごもり消費もあって、その消費量は拡大しています。
人気のあるナッツ類にはアーモンドやクルミ、カシューナッツ、ピスタチオなどが挙げられます。近年では、ヘーゼルナッツやピーカンナッツへの関心も高まっています。
そんなナッツ類ですが、国内で流通している商品のほとんどが輸入品です。
国産ナッツの育成に注目集まる
2019年11月20日の日本経済新聞によると、埼玉県は遊休農地を活用してピーカンナッツの栽培普及に乗り出しました。ピーカンナッツとはクルミに似た木の実です。クルミやアーモンドよりも柔らかく、殻を手で割ることができます。
ピーカンナッツの生産は、収穫のしやすさと高い収益性が利点として挙げられます。ピーカンナッツの実は熟すと自然と木から落ちるため、収穫は落ちた実を集めるだけです。同紙面には「食品の輸出入業者によると、2018年産のピーカンナッツは1kgあたり2,500円で取引された」とあります。これは1kg1,000円のアーモンドや1kg1,000〜1,500円のクルミよりも高い価格です。
なお、岩手県陸前高田市もピーカンナッツ生産、加工・販売を通じて、街おこしを進めています。同市は、東京大学と菓子製造と販売を行う株式会社サロンドロワイヤルと共同研究契約・連携協力協定を締結し、「ピーカンナッツによる農業再生と地方創生プロジェクト」を立ち上げ、6次産業化を目指しています。
2022年7月には、市が整備した「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設」内に、加工工場も併設した「サロンドロワイヤル タカタ本店」が開業しました。5〜6年度には、陸前高田市で栽培されたナッツを使った商品が並ぶ予定です。
商品の大半を輸入品が占めるヘーゼルナッツもまた国産化の動きが出てきています。長野県と山形県で、生産者による研究会が発足しています。
ヘーゼルナッツは実が堅い殻に覆われた木の実で、濃厚な味わいと香りが特徴です。堅い殻に覆われているおかげで鳥獣害被害に遭いにくいこと、苗を植えて実をつけるまで3〜5年程かかってしまうものの、栽培に手間がかからないことがメリットです。
輸送に時間がかかるとヘーゼルナッツ特有の香りが落ちてしまうため、国産への期待は強くなっています。
日本国内のナッツ栽培は難しい?!
ピーカンナッツやヘーゼルナッツの事例があるように、日本国内での栽培に全く適していないということはありませんが、どの農作物にもいえるように、最適な立地条件を工夫する必要はあります。
たとえばアーモンドの最適な気候条件は、生育期間中に乾燥する温暖な気候です。アーモンドはオリーブやレモンなどの果樹類が好む気候と同じといえるので、露地栽培であれば瀬戸内海沿岸地域は適しています。
果樹の中でも耐乾性があるアーモンドは、梅雨の時期には病害虫対策に努めましょう。また耐寒性に弱いので、早春の低温で悪影響が及ばないよう防寒対策が重要です。
一方、クルミの場合はマイナス30℃近くでも耐える耐寒性がありますが、夏の暑さには弱いので、夏場高温が続くような地域では栽培が難しくなります。
とはいえ、埼玉県や岩手県、長野県や山形県でピーカンナッツやヘーゼルナッツ栽培に関する取り組みが積極的になされていることから、栽培しやすい立地条件を工夫することで、さまざまな地域でのナッツ類の栽培が期待されます。
参考文献
- ナッツ製品の世界市場は2027年まで年平均成長率6.30%で成長する見込み
- ナッツに熱視線、ロカボ・巣ごもりで消費拡大: 日本経済新聞
- ピーカンナッツでもうかる農業 埼玉県、遊休農地活用: 日本経済新聞
- 岩手:ピーカンナッツ施設開業 陸前高田、チョコなど販売
- 陸前高田の復興と地方創生を目指す!「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設」内に、加工工場も併設した東北エリア最大店舗「サロンドロワイヤル タカタ本店」を開業。
- ピーカンナッツによる我が国の農業再生及び地方創生 | 東京大学
- 「ほぼ輸入」殻破れ ヘーゼルナッツ、栽培研究会続々と
- あなたもヘーゼルナッツを栽培してみませんか
- 庭先で育てるおいしい果樹~アーモンド、クルミを育てよう