機能性野菜として注目集まるキクイモとは。キクイモの特徴や栽培する際の注意点など

機能性野菜として注目集まるキクイモとは。キクイモの特徴や栽培する際の注意点など

キクイモとは、見た目がショウガに似たキク科ヒマワリ属の多年草です。名前にイモと付いていますが、ジャガイモやサツマイモなどのイモとは異なります。北アメリカ原産で、可食部位である塊茎は生で食べるとシャキシャキとした食感が楽しめ、加熱するとホクホクした食感が楽しめます。

 

 

キクイモについて

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キクイモの歴史

北アメリカを原産地とするキクイモは、江戸時代末期に日本に導入されました。当時は「飼料作物」として導入されましたが、第二次世界大戦中には燃料用原料として、戦後は主食の代わりの食糧とされてきました。ジャガイモやサツマイモのようには普及しませんでしたが、近年キクイモに含まれる栄養素が注目されるようになりました。

キクイモの栄養

キクイモが注目されることになった栄養素とは「イヌリン」です。イヌリンは水溶性の食物繊維で、糖の吸収を緩やかにし、また腸内に棲む善玉菌のエサになるため、善玉菌が増え、腸内環境が整えられます。

キクイモは光合成産物を澱粉ではなく、多糖類のイヌリンとして蓄えるのが特徴です。そのため、キクイモにはイヌリンが豊富に含まれ、その量は生イモ100g当たり14gほどで、これはゴボウの2倍以上に匹敵します。また、乾燥させ、チップやパウダーに加工すると、100g当たり50gほどと含有量が高まります。

キクイモに含まれる栄養素には他に、クロロゲン酸と呼ばれるポリフェノールの1種があり、これは脂肪の燃焼を促進したり、血糖値の上昇を緩やかにしたりといった効果があります。

このような栄養素を多く含むことから、肥満や生活習慣病が気になる方に適した食材としてキクイモは注目されています。

キクイモの高い繁殖力

キクイモの繁殖力は、在来種の生態に影響を与えるほど高く、日本では野生化したキクイモは「要注意外来生物」に指定されています。

他の作物の成長を妨げるように繁殖するキクイモですが、その分、栽培が比較的簡単であるともいえ、高齢者による栽培、耕作放棄地への対策に適した作物ともいえます。

 

 

キクイモの栽培

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やや冷涼な気候に適したキクイモは、中間地では4〜10月が生育期間です。10月頃に開花した後、茎葉が枯れる11月から収穫期となります。繁殖には主に塊茎や挿し木を用います。

キクイモの栽培方法

重さ20g程度に切り分けた種芋(塊茎)は、株間50〜60cmの間隔で、深さ10cm程度の位置に植え付けます。

キクイモはどんな土でも比較的よく育ちますが、過湿は避け、やや乾燥気味に管理するのがポイントです。塊茎から多くの芽が出た場合には、芽かきを行い、2、3本だけ残します。

キクイモは草丈が3mにも伸びて倒れやすくなります。土寄せをし、支柱を立てて倒伏するのを防ぐほか、塊茎の肥大とイヌリン含量の増加には光合成が欠かせないことから、刈ってもわき芽が出て葉が茂る7月下旬まで、刈り込みを行うことも倒伏対策となります。

茎葉が枯れてきたら、地際から茎葉を刈り取り、塊茎を収穫します。掘り上げた塊茎はしなびやすく、鮮度が落ちやすいので、1〜3月までは土中に置いて必要に応じて収穫する、または11〜12月であれば、キクイモは深い休眠期に入っているので、新聞紙に包んで冷蔵保存することも可能です。

ただし、1〜3月は、生育に適した環境になれば生長が再開してしまう浅い休眠期のため、冷蔵保存しても1ヶ月ほどで発芽してしまうことに注意が必要です。

栽培・収穫時の注意点

先述した通り、キクイモは繁殖力が高く、野生化したものは「要注意外来生物」に指定されています。塊茎を畑に残すと野生化してしまうため、収穫時には全て掘り上げてください。なお、キクイモを収穫する際は、根の先のほうにも塊茎がついているのでそれを傷つけないよう、株の周辺から真ん中に向かって収穫していきます。

病害虫の被害は少ないですが、生育後半にうどんこ病が発生することがあるので注意してください。

種芋を定植してから放っておくと、草丈が3mにも伸びるキクイモですが、大風が吹くなどして倒伏すると根が枯れてしまい、イモができなくなってしまいます。先述した通り、支柱の設置や刈り込みなど、倒伏して根が枯れることのないよう、事前対策が重要です。

 

参考文献:『現代農業2023年11月号』p.208〜223(農山漁村文化協会、2023年)

参考サイト

(2024年7月5日閲覧)

 

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