近年、スーパーマーケットにはさまざまなトマトが並ぶようになりました。青果部門や惣菜部門でサラダバーを開設している店舗では、トマトだけで数種類用意されていることも。中でも「甘いトマト」の需要は年々高まっています。
本記事では、そんな人気の高い「高糖度トマト」について紹介していきます。
高糖度トマトについて
「高糖度トマト」は、その名の通り、高い糖度か特徴のトマトで、フルーツ感覚で食べることができます。高糖度トマトと呼ばれるより「フルーツトマト」の名のほうが一般的かもしれません。
消費者の多くは食味のよい高糖度トマトを好みます。世界ではトマトを加熱調理して食べるのが一般的なのですが、日本では生で食べられることが多いため、生食が主体となったトマト栽培が発展してきました。そのため甘さの強いトマトほど、付加価値の高いものとして消費者に好まれる傾向にあります。
高糖度トマトを生み出す栽培技術
販売されている高糖度トマトのサイズはどれも小さいのが特徴ですが、実は大玉トマトを利用して栽培しているものがほとんどです。というのも、トマトには果実の大きさと糖度に相関関係が認められています。大玉トマトの果重を小さく栽培すると、糖度が上がるのです。高糖度トマトをつくりだす代表的な栽培方法が「節水栽培」です。水分ストレスをかけ、果実が大きく育たないように栽培することで、糖度を上げる方法です。
ただし節水栽培はトマトにストレスを与える栽培方法のため、カルシウムが欠乏し尻腐れ果が発生したり、葉が茂らなくなり日焼け果が発生したりと「障害果」が発生しやすくなる点に注意が必要です。
高濃度トマト栽培のポイント
高糖度トマトづくりに適した品種を選ぶ
高糖度トマトづくりは、通常のトマトの栽培方法とは異なる栽培方法で行います。節水栽培によるストレスに耐えられるものである必要もあります。
そのため、
- 元々甘味の強い品種を選ぶ
- 障害果が発生しにくい品種を選ぶ
- 節水栽培しても小ぶりになりすぎない品種を選ぶ
ことが大切です。
果実の大きさと糖度に相関関係が認められていますが、はじめて高糖度トマトに挑戦するのであれば、甘味が強い、障害果が発生しにくい、病気になりにくいといった条件の揃った「中玉トマト」や「ミニトマト」の品種を利用することをおすすめします。
おすすめの品種は、
- フルティカ
- 千果
- 桃太郎ファイト
などが挙げられます。
フルティカは、高糖度トマトづくりに比較的取り組みやすい中玉トマトで、元々糖度が高く、実が割れる率も少ないためおすすめです。
ミニトマトである千果も、元々糖度が高いのでおすすめです。葉かび病などに耐性のあるものを選ぶと、より挑戦しやすいですよ。
水分量に注意しよう
果実が大きくなる時期に、いかに水を少なくするかが高糖度トマトをつくるうえでのポイントです。ただし、枯れてしまっては意味がありませんから、土壌水分測定器などを活用しましょう。例えば与える水の量を、土壌水分測定器の数値がpF2以上になるように調整すると、糖度8%以上の高糖度トマトが栽培できる可能性が高くなると言われています。しかし、よりいっそう付加価値の高い高糖度トマトを目指すのであれば、日々トマトの様子を観察し、水分量を適宜調節して、データを測定していくことをおすすめします。
なお、果実が育てば育つほど、水分ストレスによる効果が小さくなってしまうと言われているため、開花後できるだけ早く水の量を制御することがトマトの糖度を高めるポイントです。
水はけのよい土壌を用意する
水の量を制御しても、水はけの悪い土壌では意味がありません。水がすぐに抜ける土壌を用意するのがポイントです。例えば、高糖度トマトの土壌には「砂地」がよく使われています。
高糖度トマト栽培に役立つフィルムがある?!
先で紹介したような「高糖度トマト栽培のポイント」を駆使することで、甘いトマトをつくることができますが、水分量の制御は難しく、失敗する可能性も否めません。
そんななか注目を集めているのがアイメック®※フイルムと呼ばれるフィルムを用いた「フィルム農法」です。この特殊なフィルムは、水と養分を吸収し、トマトに必要最小限の水と養分だけを与えます。トマトはこのフィルムに吸収された水と養分を得ようと根を張り巡らせ、栄養を蓄えようとするため、栄養価の高く、甘いトマトができます。またこのフィルムには、ウィルスや病原菌を通さない特徴が。そのため、水分ストレスにさらされても、病害虫被害に遭いにくく、はじめて高糖度トマト栽培に挑戦する人にうってつけのアイテムです。
※アイメック®はメビオール株式会社の登録商標
AIを駆使した高濃度トマト栽培事例
水分量の調整にAIを駆使することで、高糖度トマト栽培を順調に進めている事例もあります。農業法人サンファーム中山は、静岡大学と協力して、AIを用いたシステムを導入しています。AIを導入したことで、経験と勘で日射量を判断し、水を制御していたときよりもトマトがひび割れしにくくなり、品質の高いトマトを供給できるようになりました。
現在はAIを用いた病害虫対策に取り組んでいるところです。トマトを対象となる病害虫から防除できるよう、AIの判断で農薬散布ができるよう開発が進められています。
参考文献