2020年12月3日の日本農業新聞によると、「改正種苗法」が参院本会議で可決、成立されまました。記事によると
品種の開発者が栽培地域を国内や特定の都道府県などに限定できるようにする改正は、2021年4月に施行。品種登録した品種(登録品種)の自家増殖を許諾制にする改正は22年4月に施行する。
とあります。
改正種苗法の目的は、優良品種が海外に流出するのを防止するためなのですが、「自家増殖の許諾性」について、大規模な種苗企業によって市場が独占されるのではないか、許諾料の発生等で農家の負担が増えるのではないか、など懸念の声や反対意見もあがっています。
芸能人が改正種苗法に声をあげたこともあり、人々の間で種苗への関心が高まる中、近年、気になるキーワードとして「エアルーム種」が目に入るようになりました。
エアルーム種について
エアルーム種のエアルームは英語のheirloom varietyからきており、heirloomには「家宝」という意味があります。アメリカ、サウスカロライナ州にあるクレムソン大学は「エアルーム野菜にはさまざまな定義がある」と述べた上で、「一定期間栽培された野菜の品種」を指すもの、「家族やある団体によって受け継がれてきたもの」を指すものを挙げています。品種の継代に関わる人を栽培者一般にするのか、家族や団体、組織に限定するのかについてはまだ明確に定義づけられていないようですが、いずれにせよ、長年にわたり受け継がれてきた品種を指すとのこと。ただし、エアルーム種は「固定種」であることが前提です。
固定種とは、親と同じ形質が子へ孫へと受け継がれている品種を指します。一方、現代で多く用いられているタイプの種は「F1種子」と呼ばれるもの。これは異なる特性を持つ親を人為的に交配させたもので、生産量や品質の向上をはかることができます。
先で紹介したように、エアルーム種は“長年にわたり受け継がれてきた品種”を指すため、同じ形質が受け継がれる必要があります。F1種子のような交配種は、F1、すなわち第1世代には、異なる親の特性を引継ぎ、望ましい形質を持ちますが、後代に引き継ぐことは困難です。そのため、エアルーム種は「固定種」であることが前提なのです。
エアルーム種を用いることで得られるメリット
Clemson Cooperative Extensionが運営するサイトHome & Garden Information Centerには
種子を購入する費用が節約できる
遺伝的形質を維持することで、病害虫の被害が増加するのを避けられる
ことがメリットとして挙げられていました。
特に注目すべきは費用の節約です。先で紹介したように、市販されているF1種子は、後代に同じ形質を受け継がせることができず、同じ特徴を維持するためには、毎年同じF1種子を購入する必要があります。エアルーム種であれば、毎年同じ形質を持った野菜を育てることができ、購入費用を節約することができます。
今後、エアルーム種に注目が集まる!?
もちろん、エアルーム種はF1種子と違い、単一生産や大量生産には向いていないため、この点をデメリットとして捉える人もいるでしょう。とはいえ近年、消費者の食に対する志向性は多様化しており、野菜のさまざまな形状や色、味わいを楽しむ人は増えています。
個性的なエアルーム種への注目に期待が高まります。
参考文献