減肥栽培のコツ。コスト削減や環境負荷削減に注目集まる減肥栽培に取り組んでみませんか?

減肥栽培のコツ。コスト削減や環境負荷削減に注目集まる減肥栽培に取り組んでみませんか?

減肥栽培、始めてみませんか?

減肥栽培のコツ。コスト削減や環境負荷削減に注目集まる減肥栽培に取り組んでみませんか?|画像1

 

農作物が育つのに重要な主な栄養素としてチッ素、リン酸、カリウムが挙げられます。農作物を栽培する土壌を放置していると、これらの栄養分は不足しがちです。そのため不足した栄養分を効率よく与えられる化学肥料の生産が盛んになりましたが、生育に必要な物質を「過不足なく」「バランスよく」与えられるかは、意外と難しいもの。

人が偏った食生活を続けると、肥満になったり病気になったりするのと同じで、植物も、いくら必要な栄養といえど与え方が偏ってしまうと病気になったり、農作物には害にならなくても、農作物が消化しきれず蓄積した栄養分が、それを食べる動物や人に悪影響を与える場合があります。

『農耕と園芸 2017年12月号』の特集「露地夏秋どりネギのチェーンポット内施肥によるチッ素・リン酸減肥栽培技術」には、北海道の農業改良普及センターが行った聞き取り調査等で、北海道でネギの露地栽培を行う生産者の施肥量が、収穫量の確保にそれほど施肥量は必要ないにもかかわらず、施肥の基準値などを示している「北海道施肥ガイド」(北海道農政部)の基準値を超える施肥量が確認されています。

<北海道施肥ガイドより>

(↓)作付け前、土壌診断値がない場合

  • チッ素 16kg/10a(夏どり)または14kg/10a(秋どり)
  • リン酸 リン酸15kg/10a(夏、秋どり共通)

(↓)土壌分析による診断値がある場合

  • チッ素 10〜19kg/10a
  • リン酸 0〜20kg/10a

(↓)聞き取り調査の結果

  • チッ素 24kg/10a程度
  • リン酸 18kg/10a程度

化学肥料は不足している特定の栄養素だけを与えることができ、有機質肥料に比べて即効性もあるため、使い勝手のいい肥料といえますが、過剰な施用は農作物に影響を及ぼすだけでなく、環境に負荷をかけることになります。

そこで注目が集まっているのが減肥栽培。環境負荷を低減するだけでなく、価格が高騰している化学肥料のコスト削減にも役立ちます。

例えば、独立行政法人農畜産業振興機構が更新した「減肥によるてん菜栽培の低コスト化について」という資料によれば、てん菜栽培の労働費を除く材料や機械などにかかる費用の22.5%を肥料にかかる費用が占めています。これはてん菜の養分吸収量が他の農作物と比較してかなり多く、多量の施肥が必要になることなどが理由として挙げられます。肥料費低減の試算をもとに実証実験を行ったところ、実証実験が行われた年次や事例によって変動はあるものの、減肥栽培を行った区画と慣行施肥の区画で同等の糖収量となる場合が多く、減肥栽培はコスト低減と収量維持に有効であると考えられています。

参考資料:減肥によるてん菜栽培の低コスト化について|農畜産業振興機構

 

 

減肥栽培のコツ

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まずは土壌診断結果をふまえ、土壌中の栄養分の量に応じて施肥量を調整することが重要です。なお圃場によって土壌中の養分量にはばらつきが生じるはずです。また養分蓄積が進んだ圃場もあることでしょう。減肥栽培を行う場合には、圃場の状態を常に把握しておきたいもの。そのため、少なくとも5年に1度程度は土壌診断を行うことをおすすめします。

農作物に必要な栄養分を効率よく与えられる施肥技術(養液土耕※や局所施肥※など)を導入したり、化学肥料ではなく有機質肥料を積極的に取り入れたりすることも、環境負荷低減、コスト削減につながりますが、いずれの場合もいきなり栽培作物で試すのではなく、実証実験を行い、結果を確認してから導入するようにしましょう。

※養液土耕
土耕栽培を対象とした、元肥(基肥)を施用しない、水に肥料を溶かした液肥を施用することで、灌水と施肥を同時に行う栽培方法のこと。

※局所施肥
肥料を株元に施肥することで、養分の吸収率を上げつつも施用量を減らす方法。ただし速効性の肥料を株元に施肥すると濃度障害が起こる可能性があるため、先でも示した通り、実証実験を行い、結果を確認すること。緩効性の肥料を用いると取り組みやすい。

 

参考文献

  1. 藤岡幹恭、 小泉貞彦『よくわかる「いま」と「これから」 農業と食料のしくみ』(日本実業出版社、2007年)
  2. 園芸作物のための施肥コスト低減マニュアル
  3. 『農耕と園芸2017年12月号』(誠文堂新光社、2017年)
  4. 減肥によるてん菜栽培の低コスト化について|農畜産業振興機構

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