「畝内施肥」とは、機械で畝立てを行う際、畝の一部分または局所にのみ肥料を施用する方法です。
一般的な施肥法との違い
一般的な施肥法として、全面全層施肥法があげられます。これはほ場全面に肥料を施す方法です。そのため、作物の根が分布していないところにも肥料が施用されることになります。
一方、畝内施肥では先述した通り、畝の一部分または局所にのみ施用します。作物の根が分布していないところには肥料が施されていない状態です。
畝内施肥は細かく分けると「畝内部分施肥」と「畝内局所施肥」があります。これらの違いは以下の農林水産省の資料をご参照ください。
露地野菜生産における施肥の現状と課題
(うね内部分施肥とうね内局所施肥の違いを表した図は、スライド番号12に掲載)
畝内施肥は、畝立て・施肥・マルチ張りといった作業を減らし、効率化を図りたい人、コスト削減や環境保全などの目的で施肥量を減らしたい人におすすめの施肥法です。
畝内施肥は歴史ある技術!?
畝内施肥の導入事例を調べていたところ、群馬県・嬬恋村では、この地域特有の土壌でキャベツを栽培するにあたり、土壌改良と作業効率の向上をカバーする上で重要な技術として昭和40年代後半から導入され始めたとあります。
畝内施肥のメリット
作業の省略化ができる
専用機械を用いて畝内施肥を行う場合は、畝立てと施肥の作業を一工程で行うことができます(専用機械を用いない方法で畝内施肥を行うことはできます。ただし、その場合にはこのメリットは得られません)。
作業効率アップが図れる専用機械は、先述した「畝内部分施肥」と「畝内局所施肥」などの施肥法に適応した機械が農機メーカーから販売されています。
下記に記載したJA全農のリンク内「野菜のうね内(局所/部分)施肥法」(PDF資料)に代表的な農機が掲載されています。ご参照ください。
なお、機械を用いない場合には、肥料を筋状に散布した後、通常の農業機械で畝立てを行うと畝内部分施肥となります。
施肥量が削減できる
農研機構が公開する成果報告マニュアル「キャベツ・ハクサイ等露地野菜作において生産コストと環境負荷を大幅に低減できるうね内部分施用技術」では、肥料の施用量を30%削減して施用しても、初期生育が良好であること、全面全層施用同様順調な生育を示すことがわかっています。
また同マニュアルによると、キャベツの場合、全面全層施用と同等以上の結球重が得られたことも記されています。
コストが削減できる
たとえば化成肥料であれば、畝内施肥によって施用資材費を5,000〜10,000 / 10a程度低減できます。
導入時の注意点
専用機械を用いて行う際には、畝内施肥専用のアタッチメントを購入する必要が生じます。
天候に左右されやすい面もあります。畝内局所施肥の場合、局所にのみ施肥されることから、定植後から長い間雨が降らない場合には、土壌中の塩類濃度が高まることがあります。天候と作物の状態を注意深く観察し、生育不良等に十分注意してください。
また畝内施肥は、作物ごとに生育に及ぼす影響などが多少異なりますので、作物ごとに適した畝内施肥を選ぶことが重要です。
参照サイト
(2024年3月5日閲覧)