化学肥料の価格が高騰していることから、代替肥料として有機質肥料や堆肥などが注目を集めています。有機質肥料といえば、米ぬかや油かす、鶏ふんなどが挙げられます。本記事では、有機質肥料と堆肥の違いや施し方で変わる肥料の効き目について紹介していきます。
有機質肥料と堆肥の違い
有機質肥料は「動植物質資材を原料にした肥料の総称」(出典元:有機質肥料-ルーラル電子図書館-農業技術事典 NAROPEDIA)です。
堆肥は
古くから利用されている自給肥料の一つで,稲わら,麦わら,落葉などの植物残渣(ざんさ)を堆積し,発酵腐熟させてつくる。
出典元:株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版
という意味です。
なお、自給肥料とは「農家が自然に得られる資材を利用して自給的に用いて来た肥料」(出典元:自給肥料-ルーラル電子図書館-農業技術事典 NAROPEDIA)を指し、自然に得られる資材には人や家畜の糞尿、山野草、動植物遺体、これらを腐熟させた堆きゅう肥などが挙げられます。
有機質肥料も堆肥も大きく括ると「肥料」の1つです。
肥料取締法では、肥料を「特殊肥料」と「普通肥料」に大別していますが、有機質肥料は普通肥料に、堆肥は特殊肥料に分類されます。
肥料取締法において、堆肥は「わら、もみがら、樹皮、動物の排せつ物その他の動植物質の有機質物(汚泥及び魚介 類の臓器を除く。)を堆積または撹拌し、腐熟させたもの」とされており、有機質肥料の種類には肉かす粉末や米ぬか油かす及びその粉末などが挙げられていることから、腐熟の有無が有機質肥料と堆肥の違いといえます(腐熟しているのが堆肥)。
有機質肥料と堆肥は合わせて使うのが◎
元肥として有機質肥料を用いる場合には、堆肥と合わせて施します。
有機質肥料の代表といえる米ぬか、油かす、鶏ふんなどは窒素やリン酸、カリウムなど、野菜の生長に必要な要素を豊富に含みます。土壌に必要な養分を補う有機質肥料と、土壌改良効果が望める堆肥を合わせて施しましょう。
肥効がコントロールできる!?施し方
化学的に合成された肥料に比べ、有機質肥料や堆肥の効き目は穏やかです。ですが、施し方を工夫すると肥料の効き方が変わります。
有機物をゆっくり分解させ、じわじわと長続きする肥効を求めている場合には、基本的な施し方である「全層施用」がおすすめです。
有機質肥料と堆肥を畝の表面にまき、畝全体にすき込む方法です。鍬で深さ約20cmまで耕します。播種や定植は全層施用して最低3〜4週間おいてから行います。
全層施用よりやや速く分解される方法に「層状施用」があります。この方法は、有機質肥料や堆肥を畝の約15cmの深さに層状に埋めるというもの。根を深く張る野菜におすすめの方法です。全層施用に比べ、有機物をまとめて施すため、分解はやや速くなるのですが、土の深い部分は酸素が少なく、有機物を分解する微生物の働きが低くなるため、分解が遅くなり、肥効は長続きします。
早めに分解させたい場合には有機質肥料や堆肥を畝の表面にまき、表層5〜10cmのところで混ぜる「表層施用」を行います。土の表層部分は空気が豊富で、微生物の働きも活発になり、分解が進みます。地温の低い時期にも有効です。
追肥に利用するなら……
栽培途中で養分が不足してきたときに施す場合、元肥のように肥効がゆっくり長続きするよりも必要な養分がすぐに行き渡る方が好ましいです。
有機質肥料は腐熟していないため、追肥として発酵していない有機質肥料を使う場合には早めに施します。もしくは発酵済みの肥料(ぼかし肥料や発酵鶏ふんなど)を利用すると速やかに肥効が表れます。
それから、有機質肥料を土の表面にまとめて置くのも効果的です。肥料が分散されているよりもまとめて置かれているほうが微生物の働きが良くなり、分解が進みやすくなります。
土の表面にパラパラまくのではなく、株の周りにリング状に置いてまく、スジ状にまくのがおすすめです。
参考文献
- 『野菜だより 2019年3月春号』(学研プラス、2019年)
- 有機質肥料-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA
- 自給肥料-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA
- 15 肥料取締法について