バイオスティミュラントと農薬・肥料の違いとは。バイオスティミュラントが注目を集める理由

バイオスティミュラントと農薬・肥料の違いとは。バイオスティミュラントが注目を集める理由

バイオスティミュラントは、気候変動や土壌条件による非生物的ストレスを軽減し、植物の健康を保つ資材として注目されています。地球温暖化や異常気象への対応策として世界的に普及が進む中、日本では農水省の「みどりの食料システム戦略」において化学農薬の削減技術として位置付けられ、注目が高まっています。

 

 

あらためて、バイオスティミュラントとは

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バイオスティミュラント(Bio stimulants)は「生体刺激資材」を意味します。非生物的ストレス(高温、低温、干害、塩害など)を軽減することで、植物の成長や収量、品質の向上を目指す、いわば植物の健康を保つための農業資材です。

なお、ヨーロッパバイオスティミュラント協議会(EBIC)は、バイオスティミュラントを「植物や土壌に適用され、作物の生理学的プロセスを強化する製剤」と定義しています。その具体的な効果には、前述した非生物的ストレスへの耐性強化のほか、栄養利用の効率化、光合成の活性化、開花・着果の促進、根圏環境の改善、糖含有量などの品質向上などがあげられます。

バイオスティミュラントが持つこれらの特性が、環境問題が深刻化する現代において、持続可能な農業を支える重要な資材として注目を集めているのです。

 

 

バイオスティミュラントと農薬・肥料の違い

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バイオスティミュラントは農薬や肥料とは異なる新しいカテゴリーの農業資材であり、従来の農業資材と明確な違いがあります。

バイオスティミュラントと農薬の違い

農薬は病害虫や雑草などの生物的ストレスを直接的に駆除・抑制します。一方、バイオスティミュラントは植物を刺激し、その免疫力や回復力を高めることで、間接的に病害虫への耐性を向上させます。

また、農薬は農薬取締法の規制を受けますが、バイオスティミュラントには明確な法律の枠組みが存在しません。

バイオスティミュラントと肥料の違い

肥料は植物に直接栄養を供給し、成長を促します。一方、バイオスティミュラントは非生物的ストレスを緩和することで植物の生理機能を活性化させ、成長力や免疫力を高め、これにより作物の収量や品質、保存性の向上を実現します。

また、肥料は肥料取締法の規制を受けます。

バイオスティミュラントは新しいカテゴリーの農業資材

農薬は病害虫や雑草の防除が目的であり、肥料は植物に栄養を供給し土壌に化学的変化を促すものです。また、土壌改良剤は土壌の物理的・化学的・生物的性質さまざまな変化をもたらすものとして定義されています(加えて、土壌改良剤は地力増進法の規制を受ける)。

しかしバイオスティミュラントはいずれのカテゴリーにも当てはまらない、まだまだ新しいカテゴリーの農業資材です。主な効果や定義、規制を受ける主な法律は定まっていません。

加えて、前述した通り、バイオスティミュラントは除草剤や殺菌剤、殺虫剤のように雑草や害虫を直接的に駆除する作用はありません。そのため、製品の有効性を評価するためには科学的なデータを注意深く確認することが重要です。

バイオスティミュラント資材を用いる際には、その市場に厳しい制約がまだないことをふまえ、信頼性のある技術を見極める必要があります。

 

 

高まる市場規模

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まだまだ新しい存在のバイオスティミュラントですが、その市場は急速に成長すると予測されています。その背景には、世界的な持続可能な農業への需要の高まりが影響しています。日本においては人口減少が続いていますが、世界の人口は2050年には95億人に達すると予測されており、限られた耕作面積と地球温暖化による気候変動が食料供給に脅威を与えると推測されています。そのため、効率的な農業技術の必要性が増しています。

バイオスティミュラントは、環境由来のストレスに対する抵抗力を付与し、作物が本来持つ収量や品質ポテンシャルを引き出すとして注目されています。バイオスティミュラントによる代替は、化学肥料や農薬の使用を抑えることにもつながります。

農薬、肥料のように直接的な効果は測れず、明確な法律による枠組みもないことから、農作物への効果が捉えにくかったり、有効性や信頼性の低い資材が登場するリスクがあったりもしますが、環境に優しい農業実践への意識の高まり、化学物質の使用削減への動き、食料の品質向上の要求などがバイオスティミュラント市場の成長を後押ししています。

今後もバイオスティミュラント市場の成長は続くと考えられます。

 

参考文献:アグリジャーナル編集部『アグリジャーナルvol.33』(株式会社アクセスインターナショナル、2024年)

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