ぼかし肥料の「ぼかし」の意味、ぼかし肥料の作り方について紹介していきます。
ぼかし肥料とは
ぼかし肥料は米ぬかや油かす、鶏糞などの有機質肥料を主な原料とし、それらを微生物により分解、発酵させてつくる肥料を指します。
ぼかし肥料の原料として用いられる米ぬかや油かす、魚粉、骨粉、鶏糞などはそれ自体でも有機質肥料として直接土壌へ施用することができますが、その後すぐに作物を栽培すると、施用初期の急速な分解による有機酸の生成や発生したアンモニアガスなどが、発芽や植物の生育を阻害することがあります。
そこで、それらの有機質肥料を直接施用するのではなく、使用前に土などと混ぜて微生物による分解・発酵を行い、急速な分解や肥効を「ぼかす」ことが行われました。ぼかし肥料の「ぼかし」はここからきています。
ぼかし肥料には明確な定義はなく、ぼかし肥料に使う原料にも特に規定はありません。そのため、化学肥料とは異なり、含まれる成分やその濃度は一定ではありません。とはいえ、さまざまな原料が用いられる分、その種類や量を変えれば、肥料効果の程度、効き方、土壌改良効果などを調節できるともいえます。
ぼかし肥料の作り方
まずは材料について。
よく使われる有機質肥料とそれぞれに含まれる窒素、リン酸、カリウムの%を以下に示します。
有機質肥料 |
窒素(%) | リン酸(%) |
カリウム(%) |
米ぬか |
2〜2.6 | 4〜6 | 1〜1.2 |
乾燥鶏糞 |
3〜4.5 | 2.5〜6 | 1.5〜3 |
大豆油かす |
7〜7.2 | 1〜1.3 | 1〜2 |
なたね油かす |
5〜5.5 | 2 | 1 |
魚かす |
7〜8 | 4〜6 | 1 |
肉かす粉末 |
8〜12 | 微量 | 微量 |
参考元:3 参考資料 4 ぼかし肥の作り方 土壌肥料対策指導指針:農林水産省
「土壌肥料対策指導指針:農林水産省」によると、窒素の多いものとリン酸の多いものを組み合わせることが基本とされています。ぼかし肥料にはよく米ぬかが用いられますが、これは窒素、リン酸、カリウムがバランスよく含まれていることが理由として挙げられます。上記を見ると分かる通り、有機質肥料にはあまりカリウムが含まれていないので、不足している場合には草木灰などで補います。
「ぼかす」ためには上記有機質肥料とほぼ同量の土が必要になります。土は山土(泥分を適度に含む赤土)や粘土資材など保肥力の強い土を使用します。
保肥力の強い土が手に入らない場合には、ベントナイトやゼオライトなど陽イオン交換容量(CEC)の高い資材を利用すると、土壌の保肥力を改善することができます。ゼオライトは脱臭効果にも優れているので、発酵時に発生するアンモニアガスの匂い軽減にも役立ちます。通気性や保肥力の改善効果に優れたバーミキュライトもおすすめです。
次に作り方です。
気温が高いと虫が発生しやすいので、気温の低い時期に作るのがおすすめです。
雨の当たらない屋内で作るのが望ましいですが、屋外で作る場合には雨よけと保温をかねてビニールシートで覆いましょう。
ブルーシートや透水性のあるシートを敷き、その上に材料を広げます。各材料を薄い層にして何層にも積み重ねたら、切り崩しながら水をかけ、まんべんなく混ぜ合わせます。
注意しなければならないのは水分の量です。理想的な水分量は50〜55%。手で握ると形が残り、指で軽くつつくとほぐれるのが理想です。
なお、水分が多すぎると温度が上がらず、腐れの原因となり、悪臭が発生します。水分が少なすぎるのもNG。微生物による発酵の温度は水分が少ないほど上がりやすいのですが、水分が少なすぎると急速に高温になり、アンモニアが揮散してしまいます。アンモニアが揮散すると窒素が減少します。
混ぜ合わせた材料は、シートの上で30cm程度の厚さになるように広げます。材料を厚く重ねすぎると内部の温度が上がりすぎてしまい(60℃以上)ます。アンモニアが揮散してしまうだけでなく、酸素が不足し、分解・発酵を行う微生物が働けなくなってしまうので、重ねすぎには注意しましょう。
発酵を均一に促進するために「切り返し」を行いましょう。
発酵が始まっている堆肥を発酵途中に積み替えることを堆肥の「切り返し」という。
発酵が進み温度が高くなっている内部と外側を入れ替えるように行います。表面から深さ10cmの温度が50〜55℃になったら切り返しを行います。夏季であれば1昼夜、冬季では3昼夜ぐらいで50℃前後になります。切り返しを行うと一時的に温度が下がりますが、発酵が進むと再び温度が上がっていきます。これを3〜5回繰り返し、切り返し後の温度の上昇が落ち着いてきたらぼかし肥料の完成です。
完成したぼかし肥料は、播種や植え付けの7〜10日前に施しましょう。
先でも紹介した通り、原材料の種類や量を変えれば、肥料効果の程度、効き方、土壌改良効果などを調節することができますが、肥料成分が少ないこともあるので、場合によっては他の肥料との併用をおすすめします。
参考文献