農作物を育てる上で、雑草は厄介者といえるでしょう。農作物と肥料の取り合いになり、農作物の生育不良を招くこともありますし、病害虫が発生しやすくなる原因でもあります。しかし、そんな雑草にも農業に役立つ植物としての一面があります。
雑草は畑の状態を表す指標!?
雑草の代表格メヒシバ
メヒシバは全国どこでも生えている雑草の代表格です。メヒシバは乾燥に強く、土壌pHの影響をあまり受けないのが特徴です。一方で、湿地にはあまり生えません。
メヒシバだけが茂るような畑は、乾燥しており、他の雑草も生えないほどの酸性土壌だといえます。乾燥していて酸性の土壌、と聞くと何の野菜も育たないように思えますが、この状態の土壌と相性が良い作物にジャガイモやサツマイモがあります。
ジャガイモは弱酸性(pH5.0〜6.0)の土を好みます。サツマイモは土壌pHに鈍感なので酸性土壌でも育ちます。
このように、雑草は畑の状態を表す指標として捉えることができます。
メヒシバ以外の雑草の場合
土壌pHと雑草の関係は以下の通りです。
土壌pH |
雑草の種類 |
強酸性(pH4.5〜5.5) | スギナ、スズメノテッポウ、白クローバーなど |
弱酸性(pH5.5〜6.5) | カタバミ、アカザ、ギシギシ、オオバコなど |
微酸性(pH6.5〜7.0) | レンゲソウ、ナズナ、コニシキソウなど |
中性(pH6.5以上) | ハコベ、オオイヌフグリ、ホトケノザなど |
メヒシバやヨモギ、ススキなどは土壌pHを選ばず、どんな場所でも生育します。
また雑草が示すのは土壌pHだけではありません。ハコベやオオイヌフグリ、ホトケノザなどは土壌中の有機物や窒素分が増えてくると生えてきます。メヒシバやスズメノテッポウは土壌が肥沃になってくると、茎葉は大きくなりますが実をつけるのは遅くなります。ハコベは田んぼにも生える雑草で、保水性、排水性の良い環境で多く生えますが、もし水田裏作を行う際、ハコベが生えてこないのであれば、その圃場は湿度過多や排水不良が疑われます。
雑草の種類で育てやすい作物が分かる
生えている雑草の種類によって、その圃場で何を育てるのが最適なのかが分かります。
イネ科の雑草カヤは、栄養分の少ない痩せた土地で育ちます。カヤが生い茂っている畑では、同じく痩せた土地でも育つダイズがおすすめです。
エノコログサやヒエなどが生える畑はpH4.5〜5.5の酸性土壌と考えられます。作物の栽培条件は決して土壌pHだけではありませんが、先でも紹介した通り、酸性土壌とジャガイモは相性が良い組み合わせです。
弱酸性〜微酸性を好む雑草(アカザやギシギシなど)が生えてきたら、pH5.5〜7.0あたりを好む果菜類を、pH6.5以上の中性を好む雑草(ハコベなど)が生えてきたら、結球野菜を植えることができます。
先にも述べた通り、土壌pHだけが、雑草や農作物の育つ指標になるわけではありません。雑草や作物の生育はその土地の気候や土の質などにも影響を受けます。ですが、一つの目安としてぜひ活用してみてください。
雑草とうまく付き合うポイント
畑の指標となる雑草の利点について紹介しましたが、農作物と競合し、農作物の生育に悪影響を与えることがあるのも事実です。そこで、雑草とうまく付き合うためのポイントを紹介します。
作物の生育初期に生える雑草を抑える方法
作物の生育初期に生える雑草は、作物の生育を邪魔する厄介者なので、以下の方法で抑えるのがおすすめです。
- 播種、定植の1ヶ月前に軽く耕起し、雑草の発芽を促す
- 雑草が生え、その草丈が1〜2cmになったら再度耕す
- 2.のタイミングで播種を行う
こうすることで、雑草の発芽を遅らせることができ、競合を防ぐことができます。
雑草が作物より優勢になったら……
雑草が作物より優勢になると、作物の生育が悪くなる可能性が高まり、病気も発生しやすくなります。そこで、雑草が優勢になる頃を見計らって刈り取るのですが、その際、刈り取った雑草をそのまま圃場に敷きます。刈られた雑草は新芽を出しますが、刈り取った後に敷かれた雑草に邪魔されて生育が遅れます。また、新芽を好む害虫が生育の遅れた雑草の新芽に集中することで、作物への食害を軽減することにもつながります。
雑草を草マルチとして利用すると、上記のような雑草抑制効果や害虫被害の削減に役立つだけでなく、地表面に直射日光が当たらないため、地温の寒暖差を抑えることができたり、土の乾燥を防いだり、といった効果もあります。
参考文献
- 農文協編『農家が教える自然農法 肥料や農薬、耕うんをやめたらどうなるか』(2017年、農文協)
- ジャガイモを植える前に石灰はまかなくてよいと聞きます。ジャガイモの生育にはカルシウムは必要だと思うのですがなぜでしょうか。
- サツマイモ (ヒルガオ科)| 根菜類いも類|農作業便利帖|みんなの農業広場トップページ
- Agri横浜5月号 vol.194
- 土づくり編 – 有機農業参入促進協議会
- ダイズという植物の特徴 – FoodWatchJapan
- よい土がよい野菜を育てる|[野菜]山田式家庭菜園教室|調べる|タキイ種苗株式会社