農業で活用されるもみ殻は「もみ殻くん炭」に加工して使われることが少なくありません。もみ殻くん炭とは、もみ殻を炭化させたものです。本記事では、もみ殻くん炭の効果と作り方について紹介していきます。
もみ殻くん炭の効果
土壌の排水性・保水性改善効果
もみ殻を炭化したもみ殻くん炭の内部は多孔質になります。多孔質とは、多数の目に見えない小さな穴があいた状態を指します。多孔質なもみ殻くん炭を土に入れることで、水はけや通気性がよくなります。
一方で、もみ殻くん炭は比重に対して600倍以上もの保水力があるといわれています。そのため、保水性・保肥性を高める効果もあります。
土壌の排水性・保水性が改善されることで、土壌微生物が増えるというメリットもあります。土壌微生物が増えると、土はふかふかになり、植物にとってより良い環境になります。
pH調整効果
もみ殻くん炭はpHが8〜10のアルカリ性です。
日本は降雨量が多く、また雨水は空気中の二酸化炭素が溶け込み弱酸性であることから、日本の土壌は酸性に傾きがちです。作物が育ちにくい酸性の土壌を中和するのに、アルカリ性のもみ殻くん炭が役立ちます。
害虫予防効果
アブラムシはもみ殻くん炭の臭いを苦手としています。もみ殻くん炭を土に撒くことで、アブラムシなどの害虫を寄せ付けない効果があります。
その他の効果
農林水産省が公開する「こどもそうだん」というウェブページによると、もみ殻を焼いて畑にまくことで、
- イネが倒れにくくなる
- 植物の根から栄養を吸収しやすくする
- 連作障害を防止する
などの効果が得られる、と書かれています。
もみ殻くん炭の作り方
「もみ殻くん炭」として商品化されたものを購入して使うこともできますが、もみ殻くん炭は自作することもできます。
自作する際には「くん炭器」という道具を使うのが一般的です。ホームセンターなどでトタン製とステンレス製のものが販売されていますが、トタン製は傷みやすいので、ステンレス製がおすすめです。
もみ殻くん炭作りの動画はYouTube上でいくつか公開されています。以下の動画は手順がとてもわかりやすいです。
農文協の書籍の紹介やDVD動画の一部を公開しているYouTubeチャンネルでも、もみ殻くん炭作りの一部を見ることができます。
DVDブック「モミガラを使いこなす くん炭・堆肥・もみ酢、そのまま生でも」
以下に、用意するものと手順を簡潔にまとめます。
- もみ殻
- くん炭器
- ドラム缶
- 薪や新聞紙など着火しやすいもの
- 着火剤(ライターなど)
- 水(消火に使用)
- ドラム缶に薪や新聞紙など着火しやすいものを入れ、火をつける
- 火が大きくなったら、くん炭器を上からかぶせる
- くん炭器のまわりにもみ殻を入れる
- もみ殻が炭化したらくん炭器の煙突部分をはずし、水をたっぷりかけて消火する
火をつけた後、温度が高くなりすぎると、もみ殻が燃え尽きて灰になってしまいます。温度が高くなりすぎないよう、また一部分だけに熱が加わって焼きムラが生じている場合などは、工程3.と4.の間でスコップなどを用いて撹拌するのもおすすめです。
完全に消火するためには、密閉するのが効果的です。水をかけて消火した後、ドラム缶にビニール袋を被せ、紐で縛って密閉すると、しっかりと消火することができます。
翌日、熱が冷めていることを確認したらもみ殻くん炭の完成です。
大量に作りたい場合には、ドラム缶を使わず、土の上で作るのもおすすめです。その際、もみ殻が風で飛ばされないよう注意が必要です。
『現代農業 2018年1月号』に掲載されていた記事では、トタン板程度の厚みの鉄板(長さ180cm、幅30cm)を3枚用意して直径約180cmの囲いを作り、それを地面に差し込んで固定して「くん炭窯」としていました。ドラム缶よりも背丈が低いことからもみ殻を入れやすく、容量が大きいのがメリットです。
籾殻くん炭を作るときの注意点
温度の上がりすぎに注意
作り方の手順の中でも記しましたが、温度が上がりすぎると炭化せず、燃え尽きて灰になってしまいます。もみ殻に火がついたり、灰になっていたりする場合には、水をかけて温度を下げてください。
風がある日は避ける
もみ殻くん炭作りには火を使います。風で火の粉が飛ぶと危険です。風がある日は避けましょう。
きちんと消火する
炭化したもみ殻は大量の水をかけて消火します。炭化したもみ殻は火がついていなくても高温です。火種が残っていると、そこから再燃することもあります。大量の水をかけるだけでなく、ビニールで密閉するのも効果的です。
火の取り扱いに関する一般的な注意事項を確認する
火の取り扱いに関する一般的な注意事項や野外焼却(野焼き)に関する注意事項も合わせて確認しておきましょう。
たとえば倉敷市消防局は、例外となる野焼きを行う場合の注意点として「消火の準備等、必要な措置をする」「風向、風速を確認する」「完全に消火するまでその場を離れない」「少しでも危険を感じたら中止する」などをあげています。
同サイトには“近隣住民の生活に配慮して行ってください”の一文もあります。もみ殻くん炭作りは火を使う上、大量の煙と匂いが生じます。そのため、住宅密集地でのもみ殻くん炭作りもNGです。
参考文献
『現代農業 2018年11月号』(農文協、2018年)