繁殖力が強い雑草は、農作物の成長を妨げる要因となったり、雑草についた病原菌や害虫が原因で農作物が食害や病害に遭ったりと、農作物を栽培する上で厄介な存在です。
雑草のない畑にするためにはどのような対策をすればよいのでしょうか。
本記事では、雑草が生えない土にするための方法と、近年の雑草処理の方法についてご紹介していきます。
雑草が生えない土にするために
雑草を生えなくするためには、
- 光合成できない環境にする
- 雑草を根付かせない環境にする
- 他の植物で覆い、雑草が優勢にならないようにする
方法が挙げられ、有効なアイテムには「マルチング」「除草剤」「被覆作物」が挙げられます。
マルチング
マルチングの効用は雑草抑制のほか、地中水分の保持、肥料流亡の抑制、植物病害の発生軽減などが挙げられます。
マルチングに使用される素材は多岐にわたります。
マルチ資材は有機資材と人工資材に分けられます。有機マルチ資材には樹皮や枝葉、木材チップや廃材チップ、竹チップやオガ屑のほか、稲ワラやススキ・ヨシなどの茎、芝生の刈りカス、モミ殻やコーヒーかす、牡蠣やホタテなどの貝殻なども利用されます。人工マルチ資材には不織布や砕石、アスファルトなどが挙げられます。
有機マルチ資材として使用する植物の種類によって、雑草の抑制効果や土壌を保全する機能に違いがあります。京都大学付属高槻農場(大阪府高槻市)で実施した試験によると、14種類の有機マルチ資材(針葉樹、広葉樹、被覆植物、芝類からそれぞれ2〜4種)すべてで雑草抑制効果が認められ、そのうち針葉樹の雑草抑制効果は相対的に大きく、中でもヒノキの抑制効果が大きかったとあります。
実験では、有機マルチ資材から溶出する物質によるアレロパシー効果※が雑草抑制効果に影響していることが推察されました。
※アレロパシー効果の定義
「生物が同一個体外に放出する化学物質が、同種の生物を含む他の生物個体における、発生、生育、行動、栄養状態、健康状態、繁殖力、個体数、あるいはこれらの要因となる生理・生化学的機構に対して、何らかの作用や変化を引き起こす現象」
人工マルチ資材の不織布シートや黒色のマルチ資材は雑草の抑制効果が高いことで知られています。
不織布は雑草抑制効果が高い分、太陽光で劣化しやすかったり高温になりやすかったりする欠点がありますが、他のマルチ資材と組み合わせて利用すると、これら欠点をカバーすることができます。例えば不織布の上に砕石を敷くと、紫外線による不織布の劣化を緩和できます。上に敷くのが木材チップであれば、不織布の劣化を緩和するほか、土壌が高温になるのを抑えたり、保水効果をよくしたり、などの効果があります。
除草剤
雑草処理に有効な方法で定番なものといえば「除草剤」です。
さまざまな除草剤が販売されていますが、液剤の除草剤は即効性があり、雑草の生え始めに早く効きます。これから生えてくる雑草を抑制するのであれば、粒剤の除草剤がおすすめです。粒剤の場合、液剤のような即効性はありませんが、長く効くのが特徴です。
除草剤を利用する際には、その除草剤の効果がどのような植物に及ぶのかを事前に確認することをおすすめします。除草剤の中にはある特定の植物だけに影響し、他の植物には影響を与えない「選択性」のものと、すべての植物に影響を及ぼす「非選択性」のものがあるので、畑の農作物に影響を及ぼさないためには「選択性」を選ぶのがおすすめです。
被覆作物
被覆作物(被覆植物)とは
土壌浸食防止、景観の向上、雑草抑制などを目的として、休閑地や畦畔などの露出する地表面を被覆するための植物
を指します。
被覆作物による雑草抑制効果の作用は、先述したアレロパシー効果のほか、被覆により雑草が光合成できない環境、雑草が優勢にならない環境になることや、養分競合によるものとされています。
雑草のない畑にするために、雑草を見て土壌環境を判断する
マルチング、除草剤、被覆作物をもってしても、凄まじい繁殖力を持つ雑草が一切ない畑にするのは至難の業です。ですが、そんな雑草を観察することで土の状態を知ることができます。土の状態を知り、農作物の栽培に適した土壌に整えることができれば、農作物の生育が優勢な、雑草の生えにくい畑にすることはできるはずです。
どのような雑草が生えているかを確認することで、土壌pHの状態や土壌環境を図ることができます。
たとえば、メヒシバやススキなどは土壌pHを選ばず、どのような場所でも生育しますが、ハコベやオオイヌノフグリはpH6.5以上の中性土壌を好み、一方でスギナやクローバーなどはpH4.5〜5.5の強酸性の土壌でも生育できます。植生を見ることで、土壌pHが酸性に傾いているかどうか確かめることができます。
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参考文献