農業生産、特に施肥を行う上で、土壌の状況を把握しておくことはとても重要です。土壌の分類を知るのに便利なものには「日本土壌インベントリー」のウェブサイトで公開されている「農耕地土壌図」が挙げられます。
関連記事:インターネットで手軽に使える「農耕地土壌図」の使い方。土壌図の活用と土性の判定で農地に適した作物を知る!
そしてもう一つ、土壌の状況を把握するのに便利なのが「土性区分」です。
土性区分とは
土性とは「粒径組成による土壌の分類(出典元:百科事典マイペディア)」のことです。
国際土壌学会法では土性の区分を砂、シルト(砂より小さく粘土より粗いもの)、粘土の含有量の割合に基づき、12種類としています。日本農学会法では上記区分をより簡略化し、粘土の割合のみで5種類に分類しています。本記事では日本農学会法の土性区分を紹介していきます。
日本農学会法の土性区分では、まず単位粒子が
- 粗砂(2〜0.25mm)
- 細砂(0.25〜0.05mm)
- 微砂(0.05〜0.01mm)
- 粘土(0.01mm以下)
に区分されます。
その上で、細土(粒径2mm以下の土壌粒子)中の粘土の割合により
- 砂土(12.5%以下)
- 砂壌土(12.5〜25%)
- 壌土(25〜37.5%)
- 埴壌土(しょくじょうど)(37.5〜50%)
- 埴土(50%以上)
に区分されます。
土性は保水性や通気性、養分の保持力、供給力、耕しやすさなど、農作物の生育に大きく関係する部分です。土性の特徴は以下の通りです。
土性区分 | 特徴 |
砂土 | 触った感触はザラザラしていて粘土の感触はほとんどない。 保水力、保肥ともに低い。 |
砂壌土 | ザラザラとした砂の質感とつるつるとした粘土の質感が少しある。 やや乾きやすい。 |
壌土 | 中間的な土壌。 ザラザラした砂の質感とつるつるした粘土の質感が半々。 |
埴壌土 | 粘りが強くつるつるとした質感。 |
埴土 | 粘りが強くつるつるとした質感。 保肥力は高いが、排水不良。 |
壌土は砂壌土や砂土よりも保水力が優れているため、最も農耕に適しており、その次に埴壌土が挙げられます。
ただし、上記で紹介した記事にも書きましたが、土作りを行う際は、土壌の状況を土壌の分類や土性区分単体で判断するのではなく、土壌に関するさまざまな情報を考慮する必要があります。というのも、火山灰土(火山灰の風化物からできた土壌)や低地土(河川、湖沼、海岸などの近くの低地の土壌)では、表層と下層で土性が異なる場合があるからです。浅い部分の土性だけで判断しないよう注意しましょう。
土性の判定法
正確に分析する場合には、砂、シルト、粘土の含有量を機械で分析する必要がありますが、農業従事者の土作りにおいて、日本農学会法の5つの区分であれば、土を指でこすり合わせた時の触感や、少量の水を含んだ土を棒状に固めた時の形状(↓)で判定する事ができます。
土性区分 | 形状 |
砂土 | そもそもばらばらで形にならない。 |
砂壌土 | 棒にはできない。 |
壌土 | 鉛筆ぐらいの太さにつくれる。 |
埴壌土 | マッチ棒ぐらいの細い棒がつくれる。 |
埴土 | コヨリぐらいの細い棒がつくれる。 |
土性区分別、おすすめの農作物
農作物の栽培に適した環境を決定づけるのは、決して土性だけではありませんが、土性区分別にまとめてみました。
土性区分 | 野菜 |
砂壌土 | キャベツ・カブ・ホウレンソウ・レタス・ニンジン・アスパラガス・ジャガイモ・ショウガ等 |
壌土 | トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・カボチャ・イチゴ・エンドウ・ダイコン・ゴボウ等 |
埴壌土 | ニンニク・ラッキョウ・タマネギ・タケノコ等 |
砂土は排水性が良い分、保肥力が悪く、対する埴土は肥沃ですが排水性や通気性が悪いので、有機物を多く施すなどして土壌改良を行うことで、栽培に適した環境に整えていきましょう。
適地適作には、土壌図を利用したり、実際に現地の土に触れて土性区分を判断することが重要です。
参考文献
- 土壌の基礎知識
- Ⅱ 土 壌 の 診 断 – 農林水産省
- 4. 現場での土性の簡易判定法
- 一般社団法人日本土壌協会『図解でよくわかる 土壌診断のきほん 土の成り立ちから、診断の進め方、診断に基づく施肥事例まで』(2020年、誠文堂新光社)
- 野菜の土壌条件(2)
- 野菜づくりの基礎知識 土づくり/熊本県地産・地消サイト