野菜の生育に適した土壌は、pH5.5 ~ pH7.0程度の弱酸性から中性の土壌とされています。しかしpHが約5.7の弱酸性を呈する雨が降った後の土壌をそのままにしていたり、未熟な有機物を土壌に施したりすると、土壌は酸性に傾いていきます。条件によってはアルカリ性に傾くこともあります。
野菜の生育に適した土壌に調整するために、土壌酸度計が役立ちます。
土壌酸度計で分かること
土壌が酸性化する仕組み
土壌の酸性を表すものにpHと酸度があります。
農林水産省の資料によると、pHは土壌酸性の強さを表し、酸度は土壌を酸性にする物質の全量を表す、と書かれています。
冒頭でも紹介したように、土壌が酸性化する原因には雨水や未熟な有機物などが挙げられます。
雨には大気中の二酸化炭素や汚染物質などが取り込まれるため、酸が含まれており、pHは約5.7の弱酸性を呈しています。雨が土壌中に浸透すると、土壌中を流れる水に含まれる酸と土壌中のカルシウムなどの養分が交換されるのに伴い、養分と入れ替わった酸が土壌中に残り、土壌が酸性化します。
また未熟な有機物を施した場合、未熟な有機物が分解する際に酢酸や酪酸、ギ酸などの有機酸を生成するため、土壌が一時的に酸性化します。
土壌pHを改良する目的
pH5.5 ~ pH7.0程度の弱酸性から中性の土壌が野菜の生育に適した土壌pHです。とはいえ、作物ごとに適したpHは異なります。土壌pH別に最適な野菜をまとめたものを以下に示します。
酸性(5.0〜5.5) ジャガイモなど
弱酸性(5.5〜6.0) パセリ、サトイモ、トウモロコシ、ダイコンなど
微酸性(6.0〜6.5) トマト、ナス、キュウリ、ニンジン、キャベツ、レタスなど
中性(7.0) ホウレンソウ、タマネギ、ゴボウ、アスパラガスなど
土壌pHを調べることは、作物の生育をよくするだけでなく、土壌が酸性化することによって生じる生育障害を避けることにもつながります。
土壌酸度計でpH値を確認することで、土壌の状態を知ることにつながります。pH値は、土壌改良をすべきかどうかの目安になります。pHは土壌酸度計を用いることで簡単に測定することができるので、1年に1回程度は測定することをおすすめします。栽培途中、作物の生育不良などが起きた場合には、土壌酸度計で測定することでpHバランスを確認することができます。
土壌を改良する場合には、まず育てる作物ごとの改良目標値を定め、pHが目標値内に達するよう資材を施用します。もちろん実際の現場では、pHだけでなく塩基バランスも重要になりますが、本記事ではpHのみに着目します。
土壌酸度計にはどんなものがあるか
土壌酸度計には、アナログ式とデジタル式があります。
アナログ式は電池などの電源を必要とせず、センサー電極部を土に挿すだけで測定できます。pH値は左右に触れる指針で表示されます。pH値の表示はpH0.2刻みのものが多いため、大まかな数値を知りたいときにおすすめです。機種によってはpHとともに土壌の水分を測れるものもあります。
一方デジタル式は電池で作動します。液晶画面にpH値が表示されます。アナログ式よりも多機能なのが特徴で、多機能な機種を選べば土壌酸度や土壌水分のみならず、地温、EC(電気伝導度、土壌溶液中の肥料濃度が高いか低いかの目安になる)なども計測できます。使用前に初期設定や校正が必要になりますが、アナログ式より細かな数値を知ることができます。
また、アナログ式よりも簡易的な測定方法もあります。それは酸度測定液を用いたpHの測定です。pH値を知るというよりは、土壌が酸性か中性かを知るためのものといえます。酸度測定液を用いる場合は、以下の方法でpHを確認します。
- コップなどの容器に、測定する土壌1に対し水道水を2の割合で加えてよくかき混ぜる
- 土やごみを取り除いた上澄液を専属の試験管に指定量とる
- 測定液を添加し、試験管のふたをしてよく振る
- pHに応じて色が変化するので、添付の比色表で比較して測定する
アナログ式、デジタル式の土壌酸度計の使い方
まずは3度を測りたい場所の土の状態を整えます。酸度を測りたい場所の土が乾燥していると、土壌酸度計が反応しなかったり、正しい数値が得られない場合があるため、その場所の土に水をよく含ませ、20〜30ほど置いてから計測します。土が団子状に握れる程度の湿り気が目安です。
土壌酸度計の測定部を10cmくらいの深さで土に垂直に差し込みます。この際、土と測定部が密着するように土を踏み固めるのがポイントです。デジタル式の場合はスイッチを押して計測を始めましょう。数値が安定するまではしばらく静置します。
デジタル式はアナログ式に比べると精度が高いですが、土壌水分や測定する場所の肥料濃度のムラなどが要因で数値に差異が出ることもあるため、計測は1箇所で終わらせるのではなく、複数の場所で行い、平均値を求めるようにしてください。
また、事前に土壌改良を行った場合は、土壌改良に用いた資材が土と馴染むまで、1〜2週間ほど経ってから計測するようにしてください。
参考文献