海に近い場所にある農地では、古くから塩害との関わりが不可避でした。こうした地域では古くから塩害対策が伝統的に行われていますが、近年では海から離れている農地でも塩害の発生が指摘されており、その復旧手法である「除塩」の重要性が高まっています。
塩害のメカニズムや発生要因を押さえた上で、塩害対策である除塩について必要な情報を解説します。
■そもそも、塩害とは?
当サイトの読者の方にとって、塩害とは農地に及ぼす悪影響のことを指すというイメージをお持ちだと思いますが、塩害自体は農地だけの問題ではなく、建物や機械類に対する悪影響を総称したものです。
よく「海に近いところの建物は早く傷む」「海沿いで使っているクルマは早く傷む」と言われていますが、これらも根拠のない噂話ではなく、いずれも塩害による悪影響の中で分かりやすいものばかりです。
塩分の多い水分が空気中に含まれている場合は空気に触れる全てのものが塩分の影響を受けやすくなり、それは農地も同じです。空気中に浮遊していた塩分が農地の表面に溜まってしまうことにより、農作物の生育が困難な土壌環境になってしまいます。
■塩害の発生要因
塩害が発生する要因として、多くの方は「海に近いから」というイメージを持っているため、海水からの影響を受けて発生すると思われがちです。もちろんこれも大きな要因なのですが、近年では農業という人為的な要因によって発生する塩害の事例も多くなっています。そこで、塩害の要因を自然によるものと人為的なものの2つに分類してみましょう。
・自然現象による塩害の発生要因
自然からの影響で発生する塩害の大半は、海風や潮風と呼ばれる海から吹き付ける塩分濃度の高い空気によるものです。冒頭で「海に近い建物は早く傷む」というのも、海から吹き付ける風に含まれる塩分が原因です。
その他にも強風が吹きつけた時に海水が高波となって海沿いの農地に飛散、侵入することがあります。時間が経てば海水は海に戻り、蒸発によって水分もなくなりますが、海水に含まれていた塩分の一部が農地に残ってしまい、これが蓄積すると塩害に発展します。他にも地盤沈下や、それに伴って地下水に海水が混ざってしまうことでも発生します。
・人為的な塩害の発生要因
自然現象による塩害に対して、農業を営むことによって土壌の塩分濃度が高くなってしまう塩害もあります。最もよく指摘されるのが連作障害です。同じ農地で同じ農作物を栽培する時に使用した肥料の中で農作物が吸収しなかった成分が化学反応を起こして塩分濃度が高くなることがあります。肥料に塩分が含まれていなくても土の中にある金属イオンと結合することによって塩化ナトリウムが生成され、それが一定濃度を超えると塩害を引き起こします。
・なぜ塩害になると農作物は生育しないのか
「塩害になると農地が使い物にならなくなる」ということは多くの方がご存知ですが、なぜ「使い物にならなくなる=植物が育たなくなる」のか、ご存知でしょうか。
土壌は植物の根と直に接しており、植物の根が水分や養分を吸収しやすい環境でいる必要があります。しかし土壌中の塩分濃度が高くなると浸透圧に差が生じてしまい、植物の根は土壌から水分を吸収しにくくなり、それと同時に根から水分が流出してしまいます。水分が足りなくなると植物は枯れるため、農作物が育たなくなるのです。
・塩害から農地を復旧する「除塩」
塩害によって使い物にならなくなった農地は、適切な措置によって復旧することができます。その農地復旧作業のことを、除塩といいます。この除塩作業を平たく表現すると、真水で土壌を洗い流すというイメージになります。実際にはそれだけだと効率が悪く、実際の除塩はより化学的なアプローチによって行われます。
塩分は塩素とナトリウムが化合して、塩化ナトリウムとなることで発生します。除塩に効果的とされる物質としてよく用いられているのが石灰ですが、この石灰がなぜ農地の除塩に効果的なのかと言いますと、土壌の中にあるナトリウムに代わって石灰に含まれているカルシウムが結合することによって「ナトリウムを除去=塩化ナトリウムを除去」という化学反応が起きるからです。除塩に効果的な土壌改良資材として販売されているものにほぼ必ず石灰が多く含まれているのは、この化学反応を狙っているというわけです。
土壌の表面を水はけの良い状態に改良し、そこに石灰を多く含む土壌改良資材をまきます。化学反応を促進するために土の掘り起こしをこまめに行い、そこに水を入れて排水をすることカルシウムが置き換わったことで追い出されたナトリウムが排出され、これを繰り返すことにより土壌の塩分濃度が下がります。
■まとめ
津波や高波などの影響で発生する塩害はもとより、農業で使用した肥料の影響などで多くの農地が塩害のリスクにさらされています。しかし塩害は除塩によって土壌を改良することができるので、塩害に対する正しい知識を持って農地の「健康を守る」という意識を持ちましょう。
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