雑草マルチとは、雑草を利用して地表を覆う草マルチのことです。圃場に生える厄介な雑草を利用して、雑草の生育を抑制できるのが魅力ですが、雑草の中にはマルチ材として向かないものもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、雑草マルチの注意点についてご紹介します。
雑草マルチの注意点
広葉雑草、特に多年草の広葉雑草はマルチ材に向いていません。広葉雑草とはイネ科の雑草以外で葉の形が広く、葉脈が網状の雑草を指します。タンポポ、ハコベ、ホトケノザ、シロツメクサなどが挙げられます。
マルチ材に向かない理由の一つに、多年草の広葉雑草が持つ栄養繁殖(栄養生殖)する機能が挙げられます。栄養繁殖とは
無性生殖の一。主に植物の栄養体の一部が、母体から分離して新個体を形成する生殖法。地下茎・むかごを生じてふえるものや、挿し木・取り木など人工的に行うものもあり、遺伝的には母体と同一。栄養体生殖。栄養繁殖。
出典元:小学館 デジタル大辞泉
という意味です。
栄養繁殖する広葉雑草の茎葉を圃場に施用すると、圃場で発根して根付く可能性が高くなります。
茎葉から溶脱する物質が作物の生育を妨げること(アレロパシー現象)も知られています。
もちろん、これらの雑草が一切活用できないわけではありません。広葉雑草は水分と養分が多いため、土への栄養補給効果は高いとされています。ただし、分解されるのが早すぎる傾向があったり、梅雨など雨の多い時期にこれらを雑草マルチとして敷いてしまうと過湿の原因となることがあります。なので雑草マルチとして活用したい場合には、野菜から少し離れた場所(畝の端など)に敷くとよいでしょう。
ほふく性の雑草、ツユクサやメヒシバなども、雑草マルチにはあまり向いていません。これらの雑草は地上部を刈っても、茎から根を出してなかなか枯れないことがあります。これらを活用する場合もまた、野菜から少し離れた場所に敷くことをおすすめします。
雑草マルチとしておすすめできるのはイネ科の雑草です。ススキ、カヤ、ヨシ、イヌムギ、ネズミムギなどが挙げられます。イネ科の雑草が周りに生えていないなどの場合には、イネ科の緑肥作物を畑の周辺に植えて、地上部を繰り返し刈り取って活用しましょう。
なお、圃場全体に3cm程度の厚さの草マルチを施したい場合には、圃場の面積の2〜3倍の草地が必要になります。雑草マルチを効果的に活用したい場合には、1年ごとに雑草マルチを補給することも大切です。
マルチングのメリット
マルチ材は大きく3つに分類することができます。雑草や落葉、剪定枝葉などを利用した「有機物マルチ材」、雑草やカバークロップなどを利用した「植物マルチ材」、そして合成化学製品(塩化ビニルやポリシートなど)を利用した「無機物マルチ材」です。
どのマルチ材でマルチング(植物の株元の地表面を覆うこと)を行った場合も、地表の乾燥や温度変化を緩和する効果が挙げられます。土に直射日光が当たると、地表面が乾燥し、温度が上がり、表面近くの根に影響が及びます。マルチングを行えば、水分の蒸散が妨げられることで乾燥が緩和され、急激な温度変化も緩和されます。
また土壌病害の被害軽減にも役立ちます。土壌病害の原因となる病原菌は土の中にも生息しています。降雨時のはねあがりによって茎葉に付着することで、植物は感染してしまいます。マルチングをすればはねあがりが抑えられるため、土壌病害の予防になります。
雑草や草をマルチにした場合
雑草や草をマルチ材として利用すると、外気温が極端に高くなったり低くなったりしても、その影響を受けにくく、地温が安定しやすいという特徴があります。
無機物マルチ材よりも、通気性が良く、過湿になりにくいのも特徴です。雑草自体が水分を吸収するので、土壌の水分量を調整する役割を担います。
そのほか、マルチ材そのものが土壌に有機物を補給する役割も担います。それにより土中の微生物の働きが維持され、土壌の団粒構造の維持につながったりといったメリットもあります。
敷きワラと雑草マルチ、どちらを使う?!
かつて地表面を覆う資材にはワラが用いられてきました(敷きワラ)。敷きワラに用いられる稲わらは、種もみの収穫を終えた後の枯れた茎葉です。枯れた茎葉は炭素率が高く分解されにくいので、長期間土を覆うことができます。
ただし、種もみに栄養をほとんど使っていることから、稲わら自身に栄養が残っているとは考えにくいため、土壌への栄養補給効果も狙うのであれば、雑草マルチの方がおすすめです。
参考文献
- 『AGRI JOURNAL』(vol.23/2022 SPRING ISSUE)
- Q12:マルチングってなんですか?またどんな効果があるのですか|住友化学園芸
- 雑草の分類|住友化学園芸
- 敷くだけで土が良くなる! 雑草マルチのススメ【畑は小さな大自然vol.98】|マイナビ農業