耕さない農業。不耕起栽培とは?

耕さない農業。不耕起栽培とは?

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不耕起栽培(ふこうきさいばい)という言葉をご存知でしょうか?
読んで字のごとく、田畑を耕さずに作物を栽培する方法です。耕す行程が減るため、「今まで苦労して耕していたのはなんだったんだ!?」と思う方もいるかもしれません。
そんな不耕起栽培について、メリット・デメリットも合わせてご紹介します。

 

不耕起栽培とは?

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冒頭にも述べたとおり、不耕起栽培とは「農地を耕さずに作物を栽培する」方法です。
田畑を耕し整地する工程を省略することができるうえ、作物を刈った後の株や“わら”などを廃棄せず、そのまま田畑の表面に残して利用することができます。
作業時間の短縮にもつながるため、省エネルギーな栽培方法として注目を集めています。
不耕起栽培の起源とも言えるのは、1943年、アメリカのエドワード・フォークナーの「有機物を表土に混ぜ込むだけで肥沃な土壌は維持できる」という主張や、持続可能な農業を研究していたウェス・ジャクソンによる「耕起を基礎とした農業は持続可能性が証明されていない」という指摘です。
これらはいわば不耕起栽培の大元ですね。

 

不耕起栽培のメリット

土壌環境が改善される

不耕起栽培の特徴の一つに、刈り取った後の株やわらをそのまま土壌表面に残すことが挙げられます。これらの有機物は、土壌に棲む生物達の餌となります。
有機物はミミズや微生物などの土壌生物によって分解され、彼らの排泄物や生成物によって土の団粒化が進みます。それはすなわち、作物の生育しやすい豊かな土壌環境へ変わることを意味します。

また人為的に土壌の養分調整をする必要がなくなります。

・作物の生育が良好→養分の無機化が促進される
・作物の生育が不良→余分な養分を土壌生物が利用

イメージとして「作物に必要な養分の調整を土壌が行ってくれる」、そんな土壌環境になります。
この状態にするのにどうしても時間はかかりますが、養分過多による病害被害を抑えることはできます。

植物が強くなる

植物にとって根を伸ばしやすいのは、耕された農地のほうです。しかし耕されていない土を根が突き破ることによって、根や茎は太く、強くなります。
作物そのものがたくましくなるのが、不耕起栽培の利点です。また刈り取った株をそのままにするため、土の中に根が残るのですが、それにより保水性が高まります。養分が土壌から流出する可能性が減り、作物にとって最適な土壌環境を保つことができます。

農作業の労力を減らすことができる

現代では、耕運機などの農機具により、畑を耕すのが楽になりました。しかしそれでも広い農地を耕すには時間が必要になります。また農機具本体にかかる費用や、燃料費などの維持費もかかります。不耕起栽培はその名の通り、畑を耕す作業を省略します。そのため、農作業の労力はぐっと減らすことができるのです。

 

不耕起栽培のデメリット

病気が広まる可能性

耕さないことにより病気が広がる可能性もあります。
植物に感染する病気の中には、空気を嫌う「嫌気性菌」が原因のものもあります。嫌気性菌は、畑を耕し空気に触れさせることで退治することができますが、不耕起栽培の場合には、彼らが空気に触れる機会がほとんどありません。
もちろん逆の例もあるので一概には言えませんが、病気の種類によっては、不耕起栽培が原因で被害が広がる可能性もあるのです。

うまく育成しない可能性も

土を混ぜないということは、植物の栄養分が土の表面に集中してしまうことを表します。畑を耕せば、地中に栄養分をすき込むことができるので、土の奥へと根が伸びていくことでしょう。ただ土表面に栄養が偏っていると、植物の根が土の表面に伸びてしまい、うまく育たないことがあります。

 

不耕起栽培の注意点

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ただし「全ての農作物において不耕起栽培が良い」というわけではありません。
土壌は常に変化するものですから、農地の状態や栽培作物によって最適な栽培方法は異なります。
不耕起栽培のメリットとして「土壌環境が改善される」と挙げましたが、土壌環境が整うまでに膨大な時間を必要とします。
安定した収量を早く収穫したい場合には、従来の栽培方法のほうが安定した収入につながるのではないでしょうか。
「不耕起栽培で育てた、たくましい農作物を消費者に提供する」という強い目標があるのなら、一つの手段として、不耕起栽培は有効なものになるでしょう。

 

日本で不耕起栽培を実践している農家は少ない

しかし不耕起栽培の現状は少々厳しように感じます。
日本で実践しにくい理由があるのです。アメリカでは成功例も報告されている不耕起栽培ですが、日本にはアメリカのような広い農地がほとんどありません。
他の農地と隣り合っていることが多く、万が一、自分の農地で問題が起きた時、隣り合っている農地へも被害が拡大する可能性が否めないのです。

また不耕起栽培の成功例がアメリカにあると書きましたが、日本とアメリカでは気候や農業環境が異なります。日本での成功例、不耕起栽培の実践的なノウハウが少ないことも、不耕起栽培が少ない要因と言えます。

 

まとめ

不耕起栽培自体はとても魅力的ですが、それ相応の条件が必要になります。
土壌によっては不耕起栽培が向かない土地もあるでしょう。気軽に実践できる栽培方法ではありませんが、今後、日本国内で実践できれば、食料自給率の低下や耕作放棄地などの問題解決の糸口になるかもしれません。
 

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