緑肥で経済的にも環境にも優しい農業を

緑肥で経済的にも環境にも優しい農業を

より良い品質の農作物を生産するために、また消費者の食に対する安心・安全志向の高まりをふまえて、生産方法や使用する肥料にこだわる人も少なくないでしょう。

ただ生産者にとって、生産コストについて考えることは避けられません。コスト削減を考えた時、肥料代も削減するか否かを考える要因の一つとなることでしょう。

そこで今回は、生産者側にも、農薬や肥料への不安を抱える消費者側にも寄り添った「緑肥」と呼ばれる肥料についてご紹介していきます。

 

緑肥ってなに?

緑肥で経済的にも環境にも優しい農業を│画像2

肥料と言うと化学的に合成された肥料や畜産物の排泄物など有機素材を利用した肥料が浮かびますが、緑肥はすでに栽培されている植物をそのまま田畑にすきこみ、後から育てる作物の肥料にしてしまう方法、またはそのために育てられた植物のことを指します。

緑肥は決して最新の農業技術と言うわけではありません。
化学肥料の大量生産、一般化が進むまでは、畑に生えていたクローバーやレンゲソウなどを利用して、そのまま田畑にすきこむことで肥料としていました。
緑肥ではありませんが、かつては人糞や尿、魚などを肥料として利用していた時代もあるのです。

 

緑肥がもたらす効果

緑肥で経済的にも環境にも優しい農業を│画像3

農作物が育つ良い土の条件には、土がふかふかで、肥料を蓄えやすく、生物多様性に富んでいることが挙げられます。
物理・化学・生物の観点で、それぞれ良い条件が揃うことが好ましいのですが緑肥がもたらす効果は、

有機物が増え、土壌微生物の繁殖に役立つ

・土の団粒※構造の形成が促される
・排水性・保水性が良くなる

土壌微生物の生態バランスを整えられる

・病害虫予防につながる

など、それぞれの観点に相互作用をもたらす効果が期待できます。

※小さな粒子が集まり、土の粒ができます。大小様々な土の粒ができると、通気性・保水性・排水性に優れた物理的観点から好ましい土の条件となります。

 

化学肥料の現状

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肥料について調べ、そこで初めて知ったのですが、1トンの化学肥料には760リットルもの原油が必要になると聞きました。
CO2排出量も2.07トンにのぼり、原油価格の高騰のことも考えると、経済的にも環境的にも、好ましい現状とは言えません。
化学肥料の価格があがれば、必然的に生産コストも高くなります。それに加えて、今回調べた参考文献にあるように、環境面でも利点がない状態の現状を消費者が知れば、化学肥料そのものに対する風当たりも強くなってしまうのではないかと考えています。そこで今回「緑肥」をご紹介したわけです。

 

緑肥の選び方

まず農作物に合った緑肥を選ぶことが大切です。農作物も緑肥用の植物も様々な品種があり、土壌環境や畑の状況に合わせて選定する必要はあります。

そのため人によっては、緑肥に取り組むデメリットの一つとして「品種を選ぶ手間」が挙がってしまうかもしれません。ただ「有機栽培の実現のため、化学合成肥料を減らし、緑肥に替えたい」のか「土壌環境を整えたい」など、目的を明確に定めることは、緑肥を使う・使わないに関わらず、収量や品質の向上をはかるうえでとても重要です。
なお参考文献の中に、緑肥・景観用作物特性表(http://www.takii.co.jp/green/ryokuhi/tokuseihyo/index.htmlがあったので参考にしてみてください。
緑肥に適した作物を選ぶうえで、C/N比(炭素率)の値について考えると、選びやすくなります。C/N比についてはご存知の方も多いとは思いますが、今一度おさらいしていきましょう。

C/N比は、その数値が10の場合、窒素1kgに対し炭素が10kg含まれることを表します。C/N比の数値が高い有機物を土壌中にすきこむと、土壌中の微生物がその有機物を分解するために多くの窒素を必要とします。

しかしその結果、土壌中の窒素分が激減し、土壌は窒素飢餓となってしまいます。
植物は窒素・リン・カリウムの3大要素を必要としますから、窒素飢餓の状態での生育は厳しいものになります。ただC/N比が低い有機物をすきこむと、多くの窒素が無機化されます。それにより後から栽培する作物にとって利用しやすい土壌環境が出来上がります。
緑肥の例として「緑肥:マメ科植物、後作:タマネギ」が挙げられます。タマネギはC/N比の高い植物です。そのため事前にC/N比の少ないマメ科植物を緑肥に選ぶことで、窒素を必要とするタマネギが生育しやすい土壌環境に整えることにつながるのです。C/N比の高い緑肥を選んでしまった場合、タマネギには窒素が必要なのに、窒素飢餓の土壌に植えることになり、良い生育は期待できないでしょう。

 

緑肥は結果、肥料代0に?

緑肥は肥料代削減のために役立つと書いておきながら、「緑肥植物が必要」と書きました。緑肥について調べた時、「種子を購入し、事前に畑で撒くとなると、化学肥料を購入するのと同じで出費があるじゃないか!」と思いましたが、更に詳しく調べてみると、国の制度をうまく活用すれば、緑肥代を浮かすことができそうです。

現在国は化学肥料の使用を低減する取り組みを行っており、加えて環境保全型農業に取り組んでいる農業従事者に対し環境保全型農業直接支払を実施しています。

制度を利用できる基準をクリアする必要はありますが、基準さえ乗り越えられれば交付金がもらえる制度です。化学肥料で生産コストが圧迫されているのであれば、うまく切り替えて、交付金を利用した経済的にも環境的にも優しい農業を行ってみてはいかがでしょうか。

また普段農地で目にしている雑草をそのまま利用するのもいいのでは?と考えています。もちろん一個人の意見なので、良い結果につながるかどうかは保証できないのは申し訳ないのですが、緑肥用の植物として活用されているマメ科の植物「クローバー」などは“雑草”として農地で目にしている人もいるのではないでしょうか。わざわざ購入せずとも、植物についてある程度知識を蓄えておけば、厄介がっていた雑草が、そのまま肥料に化けることも考えられるのではないでしょうか。

 

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