昨今、有機栽培農作物の存在はごく当たり前のように浸透してきたように思えます。また環境に配慮した「循環型農業」に対する関心も高まってきていますね。そこで本記事では「有機栽培」や「循環型農業」の話題におけるキーワードとして度々目にする「バイオマス」に着目しました。バイオマスの存在や、化学肥料・有機肥料との関連性、そのメリット・デメリットについて紹介していきます。
バイオマスとは
バイオマスは生物資源(bio/バイオ)とその量(mass/マス)を表しています。「再生可能な、生物由来の有機性資源であり、化石資源を除いたもの」と定義されています。バイオマスは「太陽と水と二酸化炭素さえあれば、植物が持続的に生み出すことができるもの」とも言えます。バイオマスはカーボンニュートラルな資源、すなわち大気中で新たに二酸化炭素を増加させない資源として注目されています。
一般的にバイオマスと呼ばれるものには大きく分けて3種類あります。
- 廃棄物系バイオマス
- 未利用バイオマス
- 資源作物
「廃棄物系」と呼ばれるものには、家畜の排泄物や食品廃棄物、下水処理の際に発生する汚泥などが挙げられます。「未利用」は稲わらやもみ殻など、主に生産物の副産物で活用されていないものを指します。「資源作物」にはさとうきびやとうもろこしなど、食用にも使用される作物が挙げられます。
「循環型農業」を話題としたときには、主に「廃棄物系」「未利用」バイオマスの活用が話題に挙げられています。
バイオマス肥料と有機肥料の違いとは
バイオマス肥料は、バイオマス資源から作られた肥料を指します。
一方「有機肥料」は植物性または動物性の有機物を原料にした肥料のことを指します。例として油粕や魚粉、鶏糞などが挙げられます。バイオマス肥料も、植物性または動物性の有機物を原料にした肥料なので、「有機肥料」のひとつと言えるでしょう。ただ、どちらかというとバイオマス肥料は「循環」を強く意識した肥料なのではないかと考えられます。環境配慮への意識がより強く感じられるかもしれません。
有機肥料・化学肥料のメリット・デメリット
まず有機肥料のメリット・デメリットについて紹介します。
有機肥料は土壌微生物によって分解されます。有機肥料は、土壌微生物の生育を活発化させるエサとも言えます。そのエサを食べた微生物の生成物などによって土壌中の団粒構造が形成されると、保水性、排水性の良い土壌が出来上がります。植物が育つのに最適な土壌づくりに欠かせない存在と言えます。
ただし有機肥料には即効性がありません。ゆっくりと土壌微生物に分解されながら効く肥料のため、施肥による効果がすぐに感じられるということはありません。また成分量や成分バランスが肥料によって異なるため、微生物の活動によって肥料の効果が左右されてしまうという難点もあります。
一方で、化学的に生成された化学肥料は「即効性」と「肥料成分の割合のわかりやすさ」にメリットがあります。土壌診断を行った際、足りない栄養分だけをピンポイントに与えることができるのは、化学肥料だからこそできる技と言えます。また肥料の効果が長期間持続するタイプもあります。
その代わり、肥料成分の割合がわかりやすいがゆえ、それを加えすぎることによって土壌の栄養バランスが偏る場合も十分考えられます。
有機肥料にも化学肥料にも、メリット・デメリットはあります。なのでこれら肥料を活用する場合には、時と場合によって肥料を使い分けることをおすすめします。例えば有機肥料は、土壌を育てるという意味合いで「元肥」として活用し、化学肥料は農作物の生育を促進するという意味合いで「追肥」として使う等です。
バイオマス活用の今後
有機肥料のひとつとして考えることができるバイオマスですが、今後より注目される農業資材となるのではないでしょうか。現代社会において、環境配慮型の取り組みに逆行しようとする企業や団体は少ないはずです。そんなとき、バイオマスはひとつの重要なキーワードとなることでしょう。
例えば食品加工の工程で生じた食品残渣は、発生量の減少に取り組むだけでなく、食品残渣を利用した飼料・肥料の開発促進が進んでいます。家庭から出る生ゴミも、エネルギーとして利用されたり、コンポストに入れられ、肥料として生まれ変わることができます。
未利用バイオマスにおいても、家畜排泄物と混ぜて堆肥化させることで、土づくりに重要な資材として生まれ変わる研究が進められています。