昨今、国産大豆のニーズが高まっています。
2021年9月に公開した記事「日本の大豆生産について。大豆生産の現状や国内外の需給、今後期待されることとは。 | 農業メディア│Think and Grow ricci」では、日本の大豆生産の伸び悩みについて触れていますが、期待されていた国産大豆の需要の高まりは増える見込みがあります。
本記事では改めて、国産大豆のニーズと国内外の生産等の現状についてご紹介していきます。
日本の大豆の年間需要量、生産量
年間需要量
大豆製品には味噌、醤油、豆腐、納豆などが挙げられ、日本人の馴染み深い味には大豆が欠かせないことがわかります。
日本の大豆の年間需要量は2020年で約350万トンです。そのうち約229万トン(65%)はサラダ油などの精油用に使われています。残りのうち、約105万トン(30%)が先で挙げたような大豆製品などの食品用として利用されます。
生産量
一方で、2020年産国産大豆の生産量は21万1千トンです。これらのほぼ全量が食品用として使われます。大豆の自給率は、全体では6%、食品用では20%となっているのが現状です。
なお、世界の大豆生産量は約3.7億トンで、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンでの生産が約8割を占めています。世界の大豆輸出入量は約1.6億トンで、輸出は生産量の大きいブラジル、アメリカで総輸出量の約8割を占めます。輸入は先でも触れましたが、近年中国の輸入量が増加傾向にあり、世界の総輸入量の約6割を占めています。中国においては消費量の伸びも著しく、現在は世界の総消費量の1/3に相当する約1億トンを消費しているのだとか!世界の大豆消費のうち、約9割が搾油用等の生産に、約1割が食用や飼料用などに充てられています。
国産大豆の生産量は気象災害の影響等で減少する場合がありますが、2021年の生産量は九州の一部の地域を除いて天候に恵まれたこともあり、24万6,500トンで前年比13%増となりました。作付面積も、近年は横ばいの状態が続いているものの、2021年産は全国的に増加し、14万6,200ヘクタールで前年比3%増となりました。
日本政府は米の転作作物として大豆の生産を促進しています。また日本は2020年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」で、30年産の生産努力目標を現状の1.5倍強の34万トンに設定しています。
国産供給への期待
大豆の自給率は伸び悩んでいるものの、消費者の健康志向の高まりから、豆腐などの大豆加工品市場が拡大。安全・安心へのニーズの高まりや高付加価値化のために国産原料が求められており、国産大豆商品の売上は多い傾向にあります。加えて外国産大豆は中国などの需要の高まりにより価格が高騰したことで、調達が不安定になっています。非遺伝子組み換え大豆も世界的に需要が増えており、このような背景から、国産大豆のニーズは増えるだろうと期待されています。
「大豆をめぐる事情」(農林水産省、令和4年6月)の実需者に実施したアンケート結果によると、全ての業界(豆腐、豆乳、納豆、煮豆、味噌、醤油、きなこ等その他:n=107)において今後5年間の大豆使用量は増加する見込みがあります。国産大豆においても、価格や供給量、品質の安定という前提はありますが、需要が堅調となると予想されます。
今後国産大豆の使用を増やす予定の事業者はその理由に
- 消費者ニーズに応えることができる
- 加工適正・味に優れている
- 付加価値を付与できる
と挙げています。
課題は「安定生産」
一方で、国産大豆を減らす予定の事業者の回答には、
- 価格が高い
- 価格が不安定
- 安定して入手できない
が挙げられており、国産大豆の課題が浮き彫りになっています。
大豆の生産は気象災害の影響などにより減少する場合があり、これに伴って価格も大きく変動します。価格の安定は国産大豆の供給における重要な条件であり、国産大豆の安定生産が引き続き課題となっています。
課題を解決する糸口として期待されるのが、国産大豆の新たな品種と大豆の増収・高品質
化に向けた栽培技術です。一般社団法人全国農業改良普及支援協会のウェブサイトには「大豆安定生産促進事業」の情報ページにて、新しい品種や栽培技術に関する情報が提供されています。
大豆品種に関する資料(平成26年度「新しい大豆品種~生産の安定と多様な用途に応えるために~」)では、品種特有の性質(耐冷性、耐倒伏性など)や従来の品種と比較した際の収量やタンパク含量、病害虫等への抵抗性などが掲載されており、品種の特徴がわかりやすくまとめられています。国産大豆の生産等に興味がある方は、ぜひご覧ください。
参考文献