オリーブオイルの原料であるオリーブ。巷ではオリーブオイルの健康効果に注目が集まっていますが、その人気の高まりからオリーブビジネスに変化が現れています。
これまでは国産オリーブ発祥の地とされ、国内オリーブの収穫量の9割以上を誇る香川県小豆島産のオリーブが国産オリーブを牽引してきましたが、近年、オリーブ栽培に挑戦する地域が、九州や瀬戸内海沿岸だけでなく関東地方にも広がっています。
日本政策金融公庫農林水産事業が実施した「平成31年1月消費者動向調査」によると、消費者の食の志向は「健康志向」が続伸しており、また国産食品と輸入食品に対する「国産=高い、輸入=安い」という従来のイメージは変化し、そのイメージの差は縮小傾向にあります。今後、国産オリーブの需要は高まるのではないでしょうか。
そこで本記事では、注目集まる国産オリーブ栽培の魅力と注意点についてご紹介していきます。
国産オリーブ栽培の魅力
高付加価値が期待できる
冒頭でも紹介しましたが、消費者の現在の食の志向として「健康志向」が挙げられています。これは「平成26年1月消費者動向調査」で達成した過去最高の記録「46.5%」を上回る結果となっています(46.6%、前回比+0.9 ポイント)。
オリーブは
- オレイン酸(血液を良好な状態に保つ。心疾患や糖尿病予防につながる)
- ポリフェノール(抗酸化作用。疾病や老化を防ぐ)
- ビタミンE(抗酸化作用)
- ミネラル(カルシウムや鉄など)
- 食物繊維
などの豊富な健康成分を含んでいます。
メディアなどに取り上げられたことで、健康志向の人を中心に「体に良い油」が注目を集めていますが、さまざまな「体に良い油」の中でも、オリーブオイルはクセが少なく、どんな料理にも合わせやすいのが魅力。また美容面で注目を集めることもあり、幅広い需要が期待できます。
労力負担を軽減できる
オリーブ栽培の魅力の一つとして「摘果の少なさ」が挙げられます。
一般的に、農作物は良い果実を得たり、枝を保護するために余分な果実を採る「摘果」という間引き作業を行う必要があります。この作業は年に数回行う必要があり、負担が大きい作業とも言われています。
しかしオリーブは摘果の回数も作業量も比較的少ないので、負担が小さくなります。
加えて、オリーブは樹勢が強く、丈夫なため、生育条件さえ合えば手がかからないとも言われています。
オリーブ栽培は魅力的だが簡単ではない
とはいえオリーブは、栽培が簡単だと断言できる植物ではありません。
例えばオリーブは、木の状態が良好であればマイナス10℃の低温にも耐えるタフな植物ですが、生育には十分な日射量だけではなく寒暖差も必要です。どの植物においても当てはまりますが、水はけなど生育環境を整える必要もあり、本当に手がかからなくなるまではコツがいります。
またオリーブといえば、オリーブオイルへの加工が一般的に知られていますが、その搾油量はたった10%前後しかありません。栽培から加工、販売までを考えている場合には、100kgの実から10kgしかオイルを採ることができないことも、頭に入れておく必要があります。
オリーブが簡単に収支が合う作物ではないため、収益性の高い作物の栽培を優先してしまう農家もいるようです。オリーブは、栽培条件さえ合えば、3年目から本格的に収穫ができるようになりますが、それまで時間や手間をかける余裕がない、なんてことも。
小豆島でオリーブの有機栽培を行う「山田オリーブ園」の生産者が綴るブログには「オリーブ栽培だけで食えている農家は少ない」「オリーブ以外の本業や食用ではなく化粧品のオイルで儲けていたり、海外のオイルを日本で瓶詰めするなどして儲けているところもある」と、収益につながるまでの厳しさが垣間見える一文も。
簡単ではない面もありますが、「山田オリーブ園」のブログには「栽培面積を広げられず、量が取れないからこそ、質に突破口があると考えている」とありました。
どうすれば収益がよくなるか試行錯誤しながらオリーブを育てたい人には、やりがいのある農作物と言えるのではないでしょうか。
参考文献
- 『農業ビジネス ベジ 2019 vol.25 春号』,2019年5月30日,イカロス出版
- ビジネス特集 参入相次ぐ 国産オリーブ競争|NHKニュース
- オリーブ栽培が日本の農業の救世主に…日本中で増加の不思議、高齢農家も続々参入
- 健康志向 – 日本政策金融公庫
- 長寿の切り札?オリーブに秘められた3つの健康成分と効果的な摂り方
- オリーブは楽して儲かる?|山田オリーブ園
- Qオリーブ栽培は儲かりますか?→A売上の現状数値|山田オリーブ園