2023年2月27日に公開された日本農業新聞の記事によると、冷凍野菜の2022年の輸入量が過去最多を更新しました(114万7729トン)。冷凍食品の消費量が増加し、需要が高まったことが要因とされています。そんな中、期待を寄せられているのが国産野菜の供給です。
国内野菜のシェア獲得に期待あり!?
冷凍野菜の輸入量が過去最多となる中、その価格は顕著に上昇しています。同記事によると、1キロあたりの価格は前年比29%高の246円となっています。そのうえ、日本が買い負ける状況も起きています。
他国との競争で仕入れ価格が高止まりし、輸入野菜を安定的に調達するためのコストやリスクが増すことが予想されています。そのため、需要が高まる冷凍野菜の国内供給が注目されているのです。
冷凍野菜の国内生産量について
「冷凍野菜事業者をめぐる情勢」によると、冷凍野菜の国内生産量は平成元(1989)年以降、8万〜10万トンで推移しています。しかし冷凍野菜の国内流通量から見ると国内生産量は決して多くありません。
冷凍野菜の国内流通量は増加傾向で推移しており、平成24(2012)年以降は100万トンを上回る水準となっていますが、増加分の大半を占めているのは輸入冷凍野菜です(流通量90万トン以上)。
とはいえ、国内冷凍野菜の販路として期待が高まる市場もあります。
それは国内の惣菜市場です。
生鮮野菜と加工野菜の消費量の変化
野菜の消費量そのものは減少傾向で推移していますが、ライフスタイルの変化に伴い、外食需要や中食需要が増加しています。家庭での生鮮野菜の消費量は減少している一方で、スーパーやコンビニなどの中食でサラダをはじめとする加工し調理品の消費が増加しています。
新型コロナ禍の影響で、外食等の食料消費が大幅に減少しましたが、家庭内調理が増加した際、調理で使用する野菜として、カット野菜や食材キットを含む生鮮野菜、冷凍野菜、野菜惣菜などの購入額が大幅に増加しました。
このような背景から、野菜の需要は家計消費用から加工・業務用に移行しています。
加工・業務用のために新たな品種が開発されている
近年、加工・業務用に求められる品質や規格に沿った、新たな強みをもった品種の育成が行われています。
農林水産省の資料「加工・業務用野菜をめぐる情勢」のなかで、加工・業務用野菜に求められる特性が取り上げられていました。
- 加工歩留が高い
→加工に向いた形状をしている、大型である - 低コストで生産できる
→病害虫に強い、収量が多い - 加工に向いている
→加工後変色が少ない、加工した際煮崩れしにくい、水分が少ないなど
加工・業務用に適した品種には、労働生産性に優れるホウレンソウの「サイクロン」や煮崩れしにくいカボチャの「くりひかり」などが挙げられます。
加工・業務用野菜生産を通じて所得向上を図るには
低コスト・省力化で規模拡大を可能にすることが重要です。上記農水省の資料では、機械化一貫体系の導入をすすめています。
また、以前本サイトでは、業務用野菜生産の助成金について紹介しています。
注目集まる業務用野菜生産【後編】業務用野菜生産の助成金について
この記事(↑)は2020年に公開されたものです。
加工・業務用野菜に関する最新の支援事業を探してみたところ、農林水産省のウェブサイト「加工・業務用野菜対策」のページに「持続的生産強化対策事業」とありました。その内容の中に、すでに公募期間は終了していますが「大規模契約栽培産地育成強化推進事業」がありました。
大規模契約栽培産地育成強化推進事業の概要にはこう記載されています。
加工・業務用を中心に輸入量が多い又は拡大している野菜について、輸入からのシェア奪還を見据え、国内産が需要に応えきれていない品目や作型の作付拡大等を推進します。
助成額は事業対象面積×15万円(10a当たり)です。
気になる方は、農林水産省や独立行政法人農畜産業振興機構のウェブサイトを随時チェックしてみてください。
- 加工・業務用野菜対策:農林水産省
- 各種業務の実施に関する情報(野菜) (「野菜農業振興事業」の項目があります)
参考文献