本記事では、病害「青枯病」についてご紹介していきます。
青枯病とは
後述する病原菌の影響で、植物がしおれ、最後には枯死してしまう病気です。
青枯病の原因
原因となる青枯病菌はRalstonia solanacearum(ラルストニア・ソラナセアラム)という細菌です。この細菌は土壌中に生息しており、また青枯病に罹った株にも存在します。
青枯病に感染するとどうなる?
土壌中に生息している青枯病菌は、植物の根の傷口から侵入します。維管束内で広まり、道管を詰まらせて水の通りを悪くします。
青枯病菌に感染した植物は、まず葉の一部が日中にしおれ、夜間には回復するという症状が表れます。その後、株全体が緑色のまま急激にしおれ、そのままにしておくと最後には枯死します。
青枯病は地中温度が20℃を超えると発病が始まります。地中温度が25〜37℃まで高まると症状が顕著に表れます。
立枯病との違い
立枯れとは、病原菌の影響により植物全体がしおれ、草木が立ったまま枯れてしまう現象を指します。立枯病は発芽不良と発芽後の立枯れを引き起こします。立枯病の病原菌は植物によって異なりますが、代表的なものにはPythium megalacanthum(ピシウム メガラカンタム)やRhizoctonia solani(リゾクトニア ソラニ)などの糸状菌(カビ)があげられます。
青枯病菌はラルストニア・ソラナセアラムですが、これはタバコ立枯病の病原菌でもあります。タバコ以外のラルストニア・ソラナセアラムによる病害は主に「青枯病」と呼ばれています。
関連記事:【植物の病害あれこれ】立枯病について。立枯病の原因や立枯病になりやすい作物、対処法を紹介
青枯病になりやすい作物
青枯病菌は200種以上の植物への感染が確認されています。青枯病になりやすい代表的な作物にはトマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ、ショウガ、バナナなどがあげられます。
たとえばラルストニア・ソラナセアラムに感染したトマトは、発病すると急に株全体が緑のまましおれ、数日後には枯死してしまいます。ピーマンが感染すると、まず日中、茎頂部が萎凋し、夜間に回復する症状が見られます。その後、次第に萎凋が株全体に及び、やがて枯死します。
ショウガも青枯病を発症します。ショウガ青枯病は、平成9(1997)年に高知県で初めて確認され、その後、平成20(2008)年に鹿児島県、平成21(2009)年に栃木県、長崎県、宮崎県、平成24(2012)年に島根県で発生が報告されています。ショウガの場合は、葉の黄化、萎凋、根茎の腐敗が見られ、診断結果よりラルストニア・ソラナセアラムによる青枯病だと判明しました。
青枯病の防除方法
青枯病が発生しやすい状況を知る
青枯病が発生しやすい条件を簡潔にまとめると以下の通りです。
- 酸性土壌より中性土壌で発病しやすい
- 地温が20℃を超えると発病する
- 地温が25~37℃で症状が顕著になる
- 土壌水分が過剰になると発病が多くなる
- 植物の根が傷むと発病が助長される
先でも紹介した通り、青枯病は地中温度が20℃を超えると発病が始まります。地中温度が25〜37℃まで高まると症状が顕著に表れます。高温多湿条件で発病しやすいことを覚えておきましょう。
また青枯病菌は植物の根の傷口から侵入するため、植物の根が傷むような生育環境下にあると発病のリスクが高まります。根が傷まないよう土壌水分の急激な変化や土壌の過湿、過乾燥がないように適切なほ場管理を行いましょう。
青枯病菌は土壌中で1〜数年生存できます。また地下1mの深さにも生息します。ただし、土壌水分20%ほどの乾燥土壌においては10日間以上生存できないこと、病原菌の菌密度が高いのは地表から40cmぐらいまでだともいわれているので、後述する土壌消毒や輪作などの防除法で根絶させることは難しいかもしれませんが、対策をとることはできるといえます。
一般的な防除法
耕種的防除法として間作、輪作、土壌改良、土壌消毒などがあげられます。また高温多湿条件で発病しやすいため、高温時期を避けた作型に変更したり、敷きわらなどを用いて地温上昇を抑制したり、青枯病菌が水とともに移動するため土壌排水を改善するといった方法も一般的です。
現時点で最も安定した効果を発揮しているのは抵抗性品種の利用です。
どれか1つだけの方法で青枯病を完全に防除することは困難です。そのため、複数の手段を組み合わせて、被害を最小限に食い止めることが重要です。
コンパニオンプランツの活用
青枯病を抑制するのに役立つといわれているのがニンニクやネギ、ニラといった作物です。ネギ科植物の根に共生する拮抗菌が青枯病菌を抑えるといわれています。
またマリーゴールドも青枯病抑制に役立つとされています。堀田光生『マリーゴールドを利用した青枯病の防除』(植物防疫第62巻第2号、2008年)によると、マリーゴールドの根部および茎葉部から抽出された液に含まれる成分が青枯病菌に作用し、生育を阻止していることを報告しています。開花期のマリーゴールドの茎葉部を乾燥、粉砕したものをトマト青枯病に人工的に汚染させた土壌に混入(重量比3〜30%)し、土壌中の菌密度を調べた結果、混入1週間後に青枯病の菌密度が低下した、とあります。
上記論文では、マリーゴールドの茎葉粉末を土壌中に直接混入した際、10%以上混入するとトマトの生育を抑制してしまうといったデメリットも報告されています。
ですが、マリーゴールドは植物寄生性線虫を減少させる効果もあり、線虫による根の傷が減ることで、青枯病菌が入りにくくなるといったメリットもあります。
マリーゴールドを畝の肩部に植えたり、マリーゴールドの茎葉部を細かく切って土にすき込んだりといった対策も合わせて活用してみてください。
発病が確認された際の注意点
一度青枯病が発生すると、宿主となる植物が栽培されていなくても、青枯病菌は長期間土壌中で生存します。前作で発病した場合は、太陽熱や土壌くん蒸剤などで土壌消毒を行いましょう。育苗には無病土壌を用いてください。
発病株は見つけ次第、ほ場外に持ち出して処分しましょう。なお、発病した株のわき芽除去や整枝時の汁液で伝染するため、発病が認められた圃場ではハサミなどの道具を消毒し、二次伝染を防ぎましょう。
近年、台風や集中豪雨などが頻発しています。大雨などで圃場やハウス内に雨水が流入すると発病が増える可能性があります。施設周りの明渠を深くするなど排水対策もしっかり行ってください。
参考文献