本記事では、「すす病」についてご紹介していきます。
すす病の症状と原因
すす病とは
すす病とは、葉や枝、果実に発生するもので、葉の場合、葉の表面に黒色のすす様のかびが生えます。かびが密になると、すす様のかびは厚さを増し、葉の大部分が覆われてしまいます。果実の場合、へたの部分からかびが生えていき、果実が暗褐色になっていきます。
すす病の原因
すす病の原因となるかびは数多く存在するものの、かびが植物自体に寄生することはありません。すす病を発生させる主な原因は、アブラムシやカイガラムシ、コナジラミといった植物の汁を吸う害虫の排泄物にあります。
アブラムシやカイガラムシ、コナジラミなど、吸汁性害虫と呼ばれる害虫は甘露(かんろ)と呼ばれる物質を出します。これは糖分を多く含んだ排泄物です。吸汁性害虫の体内で濃縮された糖分を含んだ排泄物である甘露を栄養源に、かびが増殖することですす病が発生します。
すす病の名称から植物に寄生する病原菌の印象を抱きますが、実際には葉や枝、果実に汚れが付着し、それにかびが生えているといった状態を表しています。
被害症状
すす病の発生が多くなるのは、吸汁害虫が多くなる時期に当たり、夏以降から秋にかけて発生が多くなります。
すす病では、葉や枝の表面などがかびで覆われます。初期段階の症状では、葉の表面がつやを失ったり、枝や果実がうっすらとすす様のかびで覆われる程度ですが、すす病が進行すると黒い菌の膜で覆われることで植物の外観が損なわれるだけでなく、葉であれば、かびに覆われることで十分な光が当たらなくなって光合成ができなくなるため、植物の生育が衰えるといった症状も見られます。
すす病が発生しやすい条件
一般的に日当たりが悪く湿度の高いところで発生しやすいです。すす病の原因となるかびが繁殖するのに最適な気温は23〜28℃で、湿度は60%以上です。高温多湿な環境ではかびが急速に増殖します。
吸汁害虫が多発しやすい圃場ではすす病の発生が多く見られます。また菌叢(ある特定の環境に生息する微生物の集まり、集合体のこと)上にできた胞子は雨によって流されたり、風で飛び散ったり、昆虫や鳥によって伝播します。
すす病の対処法
根本的な対策には、すす病の原因となるアブラムシやカイガラムシ、コナジラミといった吸汁害虫の駆除があげられます。吸汁害虫が発生しやすい時期を確認し、あらかじめ防除策をとり、害虫が発生した場合には適切に駆除を行います。スミチオン乳剤、オルトラン水和剤など、害虫や作物に合わせた適切な殺虫剤を選び、定期的に散布することをおすすめします。
それから、すす病が発生しやすい条件をあらためて確認し、発生リスクを低くしましょう。圃場環境が高温多湿な条件にならないよう、密植や過繁茂になることを避け、風通しを良くしておきましょう。定期的に剪定作業を行うことも風通しを良くすることにつながります。
湿度が高くなりやすいハウス栽培ではすす病が発生しやすくなるため、温度と湿度管理を徹底する必要があります。ハウス内の換気や環境整備に気を配りましょう。
もしすす病が発生してしまった場合、初期段階であれば、水でこすり洗いをすることで表面についたかびを落とすことができます。実を覆うかびは収穫の際、水洗いすることでも洗い流すことができます。症状が進んで真っ黒になっている場合には、思い切って剪定しましょう。
参考文献