ナス科に発生しやすい「病害」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)

ナス科に発生しやすい「病害」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)

本記事はナス科(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)に発生しやすい「病害」とその対策についてまとめたものです。

 

 

ナス科に発生しやすい病害

ナス科に発生しやすい「病害」とその対策(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ)|画像1

 

植物の病害に関する書籍や農業分野に関連企業が運営するウェブサイトが発信する情報など、さまざまな情報源を調べてみたところ、記載されている病害の内容にはやや違いがあります。とはいえ、よく見受けられる代表的な病害には共通しているものも多かったので、本記事ではそれらの内容をまとめています。

本記事で紹介する以外にも、ナス科に発生しやすい病害は多々あります。病害は本記事で紹介したものだけに限りませんので、その点ご了承ください。

各種病害の詳細は、記事の後半で取り上げます。

トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモに共通する病害

代表的な病害に「うどんこ病」があげられます。うどんこ病は、白い粉状のカビが葉や茎に発生し、光合成が阻害されて作物が弱る原因となります。特に乾燥した環境や昼夜の温度差が大きい場合に発生しやすく、症状が進行すると葉が黄変し、枯死に至ることもあります。

トマト、ナス、ピーマンに共通する病害

モザイク病
青枯病
灰色かび病
菌核病
白絹病
苗立枯病・立枯病

があげられます。

トマト、ピーマン、ジャガイモに共通する病害

「疫病」があげられます。

 

 

病害の特徴、発生要因、対策方法

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ここでは、前述した病害の特徴と発生要因、そしてそれぞれの対策方法についてまとめます。

うどんこ病

うどんこ病は、農作物の葉や茎に白い粉のようなカビが発生する病害で、特にトマト、ナス、キュウリなど多くの野菜や果樹に広く影響を及ぼします。主にカビ(糸状菌)によって引き起こされ、最初は葉や茎に小さな白い斑点が現れますが、次第にこれが広がり、作物全体を覆います。症状が進行すると、葉が黄変して枯死することもあり、光合成が妨げられるため、作物の成長や収穫量に大きな悪影響を与えます。

うどんこ病の原因菌は他のカビと違い、湿度が低く冷涼な環境を好みます。そのため、乾燥した環境や春、梅雨があけた時期や秋、昼夜の温度差が大きいときなどに多くみられます。一方で、湿度が高くなる梅雨の時期には発生しにくくなります。とはいえ、湿度の高い環境でも発生することはあります。ですが基本的には、水分が葉に直接かからない乾燥条件を好みます。

また、日照や肥料不足によって作物が弱っているときや、風通しが悪く過繁茂した圃場(原因菌は通気性の悪い場所を好む)などでは、うどんこ病が発生しやすくなります。

予防策としては、定期的な剪定や適切な株間を保つことで、風通しを良くすること、また、うどんこ病への耐性を持った品種を選ぶことも有効です。

発病後の対策としては薬剤防除があげられます。うどんこ病には多くの薬剤が登録されています。病気の初期段階であれば、専用の農薬を施用することで感染拡大を防ぐことができます。感染が広がっている場合には、被害の大きい部分を取り除くことで、病原菌の拡散を防ぎます。罹病部位や罹病株は圃場外に持ち出し、土中に埋めるなど適切に処分してください。

なお、薬剤防除を行う際は、耐性菌を発生させないため、異なる系統の殺菌剤を用いたローテーション散布を行います。

モザイク病

モザイク病は、ウイルスによる病害で、特にトマトやナスなどの作物に影響を与える主要な病気です。病徴としては、葉に黄色や濃緑のまだら模様が現れ、成長が抑制されることがあります。植物全体の生育が悪くなり、果実も変形することが多く、収穫量が大幅に減少します。

モザイク病の原因は、モザイクウイルスと呼ばれるウイルスによるもので、このウイルスはアブラムシやツマグロヨコバイなどの昆虫によって媒介されることが多いです。これらの昆虫が感染した植物の汁を吸うことで、ウイルスが他の植物に拡散します。

モザイク病の予防策としては、病原体を媒介するアブラムシなどの昆虫を駆除することが重要です。定期的に殺虫剤等の使用、防虫ネットの設置などを行い、害虫を防除することでウイルスの拡散を防ぐことができます。

感染は昆虫のみならず、感染植物との接触や農作業、農作業に用いる農機具を介しても広がることがあります。そのため、感染拡大の防止には、作業者の手や手袋、農機具を適切に消毒すること、感染した農作物は速やかに取り除くことがあげられます。

また、耐病性品種を選ぶことも有効な対策です。

青枯病

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青枯病は土壌伝染病の一つで、主にRalstonia solanacearum(ラルストニア・ソラナセアラム)という細菌が原因で起こります。

この病原菌は植物の維管束形に侵入し、水や養分の輸送を阻害します。そのため、植物が急速に枯れる症状が見られます。発病初期は葉がしおれるように垂れ下がります。また、日中に葉がしおれ、夜になると回復するという特徴があります。しかし病気が進行すれば、夜になっても回復せず、最終的には植物全体が枯れてしまいます。

また感染部位の茎を切断すると、切り口から白い粘液が溢れ出すことが多く、これもまた青枯病の特徴です。この白い粘液は「菌泥」と呼ばれる細菌細胞が集合したもので、病原菌が大量に繁殖している証拠です。

青枯病を引き起こす原因菌は、土壌虫で長期間生存し、感染した植物の根や傷口を通じて侵入します。また、水や土壌を介して広がりやすく、降雨後や灌漑設備が感染源となることもあります。高温多湿な環境が発病を促進するため、気温25〜35℃になる時期に病気の発生が増加します。

青枯病の防除の基本は土壌消毒です。化学合成農薬を用いたくん蒸処理や太陽熱消毒、土壌還元消毒などが有効です。また土壌伝染性ですから、被害残渣の除去を徹底することも効果を発揮します。

そのほか、発生を助長する過剰な水やりや水はけの悪い環境を避け、適切な水管理に努めること、病害のリスクを減らすために輪作や休耕を行い、土壌虫の病原菌の減少を図ること、青枯病に耐性を持つ品種を選定することも効果的です。

灰色かび病

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灰色かび病は、その名の通り、灰色のカビが植物の葉や茎、果実に発生する病害です。灰色かび病を引き起こす病原菌は湿度の高く、風通しが悪い環境で繁殖しやすいため、温室や雨が多い時期に発生しやすいです。

病原菌は植物の弱った部分や傷ついた箇所に侵入します。この病気の顕著な特徴は、先述した通り葉や茎、果実に灰色のカビが発生することですが、病気が進行すると果実の腐敗、葉や茎の腐食につながります。植物全体に広がると当然枯死のリスクが高まります。

対策には、 病原菌が好む環境を避けるため、風通しをよくして湿度を下げることが重要です。施設栽培の場合には換気を徹底し、施設内の湿度を下げます。窒素過多により過繁茂になるのを防ぐため、適切な肥培管理を行うことも大切です。それから病気の広がりを防ぐために、被害を受けた葉や茎、果実は早めに除去してください。

予防的な薬剤散布も有効です。ただし、同一系統薬剤を連用することで耐性菌が発生しやすいため、複数の系統の薬剤でローテーション散布することを徹底してください。

抵抗性品種の選定ももちろん効果的です。

菌核病

菌核病は糸状菌(カビ)によって引き起こされる病害です。症状としては、まず茎や葉、果実に水浸状の病斑が生じます。時間が経つにつれて、これらの部分が腐敗し、白色または淡褐色のカビが発生します。さらに腐敗が進むと、特徴的な黒色の塊(菌核)が形成されます。菌核は病原菌の越冬体として機能します。感染した植物から落ちた菌核は土壌虫で越冬し、次の年に感染源となることが多いです。

菌核病は低温・多湿条件下で発生します。病原菌そのものは土壌虫や枯れた植物の組織内に潜んでおり、生育に適した環境が整うと、植物植物の傷や腐敗部から侵入していきます。

対策としては、通気性の確保があげられます。密植や過剰な水やりを避け、湿度を下げるよう努めます。また菌核が土壌に残ることから、連作を避けること、土壌の消毒を行うことも重要です。

そのほか感染源を取り除くため、発病した茎葉や果実は菌核を形成する前に除去し、適切に処分すること、適用薬剤の予防散布を行うこと、また伝染源となる子のう胞子の抑制に効果的な対策として紫外線除去フィルムの被覆もあげられます。

白絹病

白絹病(しらぎぬびょう)は、糸状菌(カビ)によって引き起こされる病害です。主に地際部から発病し、暗褐色のややくぼんだ病斑が拡大して根や茎に広がっていきます。感染部位は水浸状に軟化腐敗していき、植物はしおれ、最終的には枯死していきます。

その名の通り、はじめ被害を受けた部位や株の周辺の地表面に絹糸状の白色の菌糸が密生します。その後、銀白色〜黄褐色、茶褐色の粟やけし粒状の菌核を多数形成します。この菌核は土壌に残り、次の年に再び病害を引き起こす原因となります。

この病原菌は湿度や温度が高い条件下で活発に活動します。梅雨や夏場に発病しやすく、通気性の悪い土壌や密植は病害のリスクを高めます。

対策には排水性の確保、輪作、土壌消毒を行うなどの土壌管理があげられます。病原菌が活発に活動するのを防ぐため、高畝栽培を行ったり、土壌改良を行うなどして排水性を向上させます。菌核は土壌中で長期間生存するため、土壌中の菌密度を減少させるために、連作を避けたり、抵抗性の強い作物を交互に栽培したりするのが効果的です。

病気を初期段階で発見した場合には、適切な防除薬剤を使用して菌の拡散を抑えます。特に茎や根周りに薬剤を散布することが推奨されています。

苗立枯病・立枯病

苗立枯病および立枯病は、ピシウム、リゾクトニア、フザリウム属菌の感染によって発症する病害です。苗立枯病は発芽から育苗時に発生しやすく、立枯病は少し成長した苗に起こります。

病原菌は植物の種類によって異なり、その症状も微妙に異なります。病原菌の詳細については以下の記事も参照してください。

関連記事:【植物の病害あれこれ】立枯病について。立枯病の原因や立枯病になりやすい作物、対処法を紹介

いずれの病原菌も湿度が高く、土壌の排水が悪い場合に発生しやすいです(ピシウム属菌、リゾクトニア属菌によるものは、高温で多湿な環境で発生しやすい)。そのため、過度な灌水や過密な植え付けが行われた場合に繁殖しやすいです。

これらの病原菌は胞子や菌糸、菌核などの状態で感染した植物残渣や土壌中で生き続けるため、一般的な対策には以下のことがあげられます。

  • 発症した植物や、病原菌が感染している可能性のある前作の植物、落ちている葉は圃場外で処分する
  • 土壌消毒を行う

またこれらの病原菌が好む環境を避けるため、過度な灌水を避けること、排水の良い土壌にするための適切な土壌管理が重要になってきます。連作を避けることも、土壌中の菌密度が高くなるのを抑えるのに有効です。

疫病

疫病は糸状菌(カビ)によって引き起こされる病害です。植物全体に発生し、葉でははじめ不整形の水浸状の病斑が生じます。この斑点がしだいに拡大して大型の病斑になります。湿度が高い環境下では病斑上に白いカビが生え、湿度が低い場合には病斑部分が乾燥して枯れたようになります。

果実ではまだ未熟な若い果実で病気が発生しやすく、まわりがぼやけた不整形の大型の病斑が生じ、腐敗します。これも降雨が続くといった湿度の高い条件下では表面に白色のカビを生じます。

病原菌は湿潤な環境を好みます。雨季や梅雨の時期、過度な灌水や排水不良は病気の発生を促進します。そのため、対策としては適切な水管理が重要になってきます。過度な灌水を避け、高畝栽培を行うなどして排水を良くします。

また地表面に生息する遊走子(胞子の一種で、鞭毛をもち、水中を泳ぐもの)が雨水の泥はねによって葉裏に付着することなどによっても発病します。よって、マルチングを行い、土のはね上げを防ぐことも疫病対策には有効です。

もちろん、発病した植物は早期に除去して畑に残さないようにすることも大切です。

疫病のまん延は早いため、早めの対応が重要です。予防的に疫病に効果的な農薬を使用することも効果的です 。

 

参考文献

  1. 米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)
  2. 夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年9月14日閲覧)

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