【植物の病害あれこれ】軟腐病について。軟腐病の原因や防除法を紹介

【植物の病害あれこれ】軟腐病について。軟腐病の原因や防除法を紹介

「軟腐病」とは、細胞壁分解酵素を分泌する特定の細菌によって引き起こされ、その名の通り、植物の組織が軟化・腐敗する病気です。

 

 

軟腐病の特徴

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※画像のダイコンは軟腐病に罹患しやすい野菜の一つ。軟腐病に罹った野菜は愛知県のウェブサイト「病害虫図鑑」などで確認することができます。

 

軟腐病は、主にPectobacterium属やDickeya属といった細菌が原因で生じます。これらの細菌が分泌する細胞壁分解酵素によって、細胞同士の接着や細胞壁が軟弱になります。これら酵素の分泌が早いため、軟腐病をもたらす病原菌が感染して1〜2日で発病し、迅速に拡大していきます。

軟腐病にかかった部位(病原体は果実や花、葉、茎や根など、地上部・地下問わず新鮮な柔組織に侵入する)ははじめ水浸状になり、次第に拡大していくと腐敗し、特有の悪臭を放ちます。特有の悪臭が生じるために、他の病害と区別するのは比較的容易とされています。

そんな軟腐病は、特定の野菜にのみ発生する病気と違い、さまざまな種類の野菜に発生します。たとえばトマトやピーマンでは、茎は髄部(植物の茎の中心部にある組織)が腐敗し、倒伏・枯死します。果実の場合は果実内部が腐敗し、外皮だけが残ります。タマネギやネギでは中・下位葉の葉鞘から葉身基部が侵され、軟化腐敗して倒伏します。放置すると腐敗は鱗形部にも広がり、球全体も腐敗します。

また、収穫後の野菜が流通過程や保存中に発症することもあるため、出荷後に消費者に届く段階で症状が急速に悪化することも少なくありません。加えて、発病後の防除は極めて困難とされています。

 

 

軟腐病が発生しやすい条件

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軟腐病は非常に進行が早いため、早期発見と対策が重要です。

軟腐病が発生しやすい条件は、高温多湿の環境です。特に、夏の間に降雨が続く年や、晩秋から冬にかけて温暖で湿度の高い年には、顕著に発生します。

また台風や豪雨などの影響も大きく、雨により土壌中の細菌が植物に跳ね上がり作物上部に付着すると、植物の傷口や気孔から侵入・感染しやすくなります。

そのほか、水はけが悪いために土壌水分が過剰となったり、窒素肥料を与えすぎたりすると植物が軟弱に育ち、感染しやすくなることもあります。

 

 

軟腐病の予防・対策

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軟腐病は一度発病すると防除は難しいため、予防が非常に重要です。そのため、軟腐病が発生しやすい条件を避けることが大切といえます。

排水性・通気性を確保する

軟腐病の病原菌は湿度の高い環境を好むため、ほ場の排水対策は最も基本的な予防手段となります。畝を高くする、排水路を確保するなどの工夫を行い、降雨後に水が溜まらないよう努めます。

通気性の確保も同様で、植物の株間を広くとり、風通しを良くすることも有効です。特に密植は湿度を高め、病原菌を増殖させることにつながるため、空気の循環を確保することを意識し、適度な間隔で植えていきます。

作業時の注意

先述したように、雨によって土壌中の細菌が跳ね上がり、作物上部に付着すると、感染しやすくなります。また台風や豪雨などの気象条件や作業中に作物体に生じる傷も病原体の侵入・感染の要因となります。

そのため、栽培中の管理作業にも注意が必要です。作物に傷をつけないよう、丁寧に作業を行うことを前提に、雨の日は収穫等の作業を避けます。結球野菜等では中耕などで根に傷がつくと発病を高めることにつながるので、根を傷つけないように努め、降雨前の中耕は避けます。

また、発病した株を発見した際は、早い段階で圃場外に持ち出し、焼却処分することが推奨されています。

輪作を行う

軟腐病はさまざまな種類の作物に感染します。そのため、同じ作物の連作は避けます。たとえば、ダイコンやハクサイ、キャベツなど、アブラナ科の作物を連続して栽培すると、病原菌が土壌に残留し、土壌中の病原体の密度が高まります。すると、次の作物に影響を与えることになります。イネ科やマメ科など異なる作物との輪作を行い、病原菌の増殖を抑制します。

害虫防除

軟腐病の病原体は、食害昆虫がつける食害痕から侵入・感染するため、害虫の防除も軟腐病予防策の一つといえます。適切に農薬を使用し、害虫防除も行います。

薬剤防除

軟腐病に対して登録のある農薬を用いて、予防的な薬剤散布を行います。軟腐病の発生リスクが高い時期や天候条件に応じて、予防散布を行ってください。

また、先で述べたように、窒素肥料の過剰施肥は植物を軟弱にし、病気にかかりやすくするので、窒素肥料を控えめに施し、植物を強健に育てることも病気の予防に役立ちます。

 

参考文献:夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年9月19日閲覧)

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