塩害で植物が枯れる!台風シーズンに知っておきたい塩害対策とアフターケアとは

塩害で植物が枯れる!台風シーズンに知っておきたい塩害対策とアフターケアとは

 

2018年10月に到来した台風24号。日本列島に大きな被害をもたらした脅威的な台風により、農作物も被害を被りました。台風24号の被害で最も大きかったのが「塩害」です。そこで本記事では、毎年到来する台風から農作物を守るべく、台風シーズンが来る前に知っておきたい塩害対策とアフターケアについて紹介します。

 

 

塩害とは

塩害で植物が枯れる!台風シーズンに知っておきたい塩害対策とアフターケアとは|画像1

 

海水が農地に侵入して冠水したり、強い潮風に当たったりすることで起こる塩分による作物の被害を指します。台風や高潮などによって発生します。

植物の葉に塩がつくと、その場所にあった水分がどんどん蒸発してしまい、最終的に作物は枯れてしまいます。土壌の塩分濃度が上がると、浸透圧の変化により植物が水を吸い上げられなくなったり、土壌の排水性が悪くなり、作物が根腐れを起こすこともあります。

料理中、野菜を塩もみすると水がたくさん出てきますが、塩害が発生すると、あれと同じ現象が農作物にも起こるのです。

 

 

塩害対策

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風雨が当たらないよう覆う

台風が来る前に、作物が風雨に当たらないように工夫を凝らしましょう。塩害に弱い作物はビニールハウス内で栽培したり、あらかじめ覆っておくことが重要です。

 

屋内に入れられるものは屋内へ

屋内に入れられる移動可能な作物があるのであれば、可能な限り屋内へ移動させましょう。

また台風被害を被る前に、もう収穫できそうな作物があるのであれば、早めに収穫してしまうのも1つの手です。もちろん台風による被害を100%予測することは難しいため、判断するのは難しいかもしれませんが、被害を被ったことで収穫物が0になるよりマシだと判断した場合には、「早期収穫」を頭の片隅に入れておいてもいいでしょう。

 

冠水を防ぐ工夫を

農地が冠水したり、海水などが侵入しないよう、冠水を防ぐ工夫も重要です。排水溝など作溝を点検し、迅速に排水できる状態担っているか確認します。台風が来る前に地表面を浅く耕し、通気性や排水性を確保するようにしましょう。

 

台風が多い沖縄では

台風上陸の多い沖縄では、サトウキビを育てる際、スプリンクラーで常時海水を洗い流しています。作物に海水がつくことで塩害が生じるため、風などで吹き付ける海水をスプリンクラーから出る水で洗い流し続けているのです。

 

 

塩害に遭ってしまったときのアフターケア

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真水で塩を洗い流す

葉や土壌についた塩分を迅速に取り除くことが、塩害被害を悪化させないためのポイントです。そのため台風が過ぎ去ったら、できるだけ早く真水で洗い流しましょう。

 

変色した部分を切る

塩がついたことで、水分が蒸発し、枯れてしまった部位は茶色や黒色に変色します。元には戻らないため、切ってしまいましょう。まだダメージが少なく、切ったところから脇芽が出てくれば、生長を期待できますよ。

 

肥料や直射日光を控える

塩害により作物は弱ってしまいます。弱っている状態の作物を観察しつつ、過剰に肥料を与えたり、水を与えたりしないように注意してください。肥料を与えることで余計弱ってしまうことがあります。また塩分によって水分が枯渇しているので、直射日光もNGです。

 

土壌から塩分を取り除こう

先で紹介した「真水で塩を洗い流す」と目的はほぼ一緒です。ですが、広大な圃場に広がってしまった塩分を真水だけで取り除くのは難しいですよね。

土壌中のナトリウムを吸着する作用がある石灰を含んだ土壌改良剤を使い、畑をよく掘り起こして耕しましょう。土壌改良剤の働きによって塩分が吸着され、排水されやすくなることで、徐々に塩分濃度は下がっていきます。

 

 

塩害に強い農作物とは

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耐塩性の植物

まずは塩害に強い植物についてご紹介します。基本的には、海沿いに自生している植物や街路樹、防風林は塩に強い植物です。

 

ハーブの一部

ラベンダーやローズマリーといった「地中海」原産のハーブは、潮風に強く、耐塩性があると言えます。

 

塩害耐性のある農作物は?

先で紹介した「海沿いに自生している植物」などを除いて、基本的には塩に弱いものがほとんどのようですが、塩害耐性をはかる研究が過去に行われています。

イチゴ、キュウリ、アスパラガス、コマツナ、ホウレンソウ、ハクサイやチンゲンサイなどアブラナ科植物の塩害耐性について行われた研究によると、

  • 比較的塩害耐性あり
    →アブラナ科植物、アスパラガス、ネギ
  • 中間的な耐塩性あり
    →ホウレンソウ
  • 石灰などで除塩対策をすればOK
    →イチゴ、キュウリ

とされています。

アスパラガスは水分ストレスに強く、根はナトリウムを吸収してしまうものの、茎葉へは移行しないという報告がありました。一方、イチゴやキュウリは水分ストレスに弱いため、あらかじめ徹底した塩害対策をする必要があります。

 

塩分をうまく利用!?海水を利用した作物

基本的には塩分に弱い農作物ですが、栽培環境を海水によって厳しくすることで、うまみや甘みの凝縮に成功した農作物もあります。

例えば熊本県で生産されている「塩トマト」は、沿岸部の干拓地という塩分濃度の高い土壌で栽培されているトマトです。水分を十分に吸い上げられないため、実が大きくはなりませんが、「うまみが凝縮した美味しいトマト」として売り出されています。

同じく熊本県で栽培されている「塩たまねぎ」や茨城県で栽培されている「汐菜キャベツ」は塩や海水を散布することで甘さを引き出しています。

 

塩に強いアイスプラント

近年、目にする機会も増えた野菜・アイスプラント。葉の表面に塩分が含まれた水滴を蓄えている特徴的な見た目の野菜ですが、耐塩性、更には乾燥にも強いという特徴をもった植物です。海水と同じくらいの塩化ナトリウム水溶液での水耕栽培が可能なほど、塩に強い作物です。

 

参考文献

  1. 農地の塩害と除塩 農村振興局
  2. 塩害とは?塩害にも強い植物があるの?
  3. 農作物の浸水・冠水害等に関する技術対策
  4. 台風による植物の塩害対策とアフターケア
  5. 塩害による農作物の被害にはどんなものがある? 対策方法や予防方法は?
  6. 作物のための暑さ対策
  7. 農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/塩分が及ぼす園芸作物への影響把握(野菜類)

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