今さら聞けないよく耳にする植物の病徴①立枯れ、萎凋、わい化など

今さら聞けないよく耳にする植物の病徴①立枯れ、萎凋、わい化など

植物が病気にかかると、肉眼で分かる異常が見られるようになります。この状態を病徴といい、植物外部に見られるもの(外部病徴)と組織内部を観察する必要のあるもの(内部病徴)があります。また、外部病徴の場合は、植物全体に見られるものもあれば、植物の一部分や特定の器官にあらわれるものもあります。

本記事では、さまざまな病徴の中でも、外部病徴に着目していきます。

 

 

よく耳にする植物の病徴

今さら聞けないよく耳にする植物の病徴①立枯れ、萎凋、わい化など|画像1

 

立枯れ

立枯れは、病原菌の影響で植物全体がしおれ、草木が立ったまま枯れてしまう現象を指します。立枯れは、植物体の全身に病徴が見られますが、はじめのうちは植物の一部が弱るなど、やや生育が不良になる程度です。しかし、のちに症状が全身に拡大し、萎凋・枯死といった症状があらわれます。

なお、出芽後の若い苗の地際の部分が変色し、柔らかくなって細く首れ、その部分が折れて垂れ下がったり、そのまま枯死したりする症状は「苗立枯れ」と呼ばれます。

一般的には根や地際部、茎、道管などが細菌、菌類、センチュウなどにより侵され、発症することが多いものの、ウイルスやファイトプラズマを原因とする病気、また生理病でも同じような症状が見られることがあります。

また、苗立枯れの発生には、種子や育苗資材などが病原体によって汚染されることや、育苗期の多湿といった生育環境の悪化などが、発症に影響を与える要因とされています。

萎凋

水分が不足するなどして、植物全体または一部がしおれる症状です。悪い状態が続くと、しだいに衰弱し、枯死してしまいます。土壌伝染性の菌類や細菌が原因となり、多くの植物に発生します。

細菌由来か菌類由来かは、内部病徴で分かる

萎凋の症状を引き起こす病気には、菌類が原因で発生するトマト萎凋病、ナス半身萎凋病、細菌が原因で発生するナス科植物の青枯病などがあります。これらの病気に罹った植物の茎断面を観察すると、維管束部分に褐変がみられるという共通点があります。

しかし細菌病である青枯病と、菌類病である萎凋病や半身萎凋病の内部病徴には相違点も見られます。

青枯病(細菌病)の場合、維管束部の柔組織に腐敗がみられます。また、病気に罹った茎を切断し、水中に立てておくと、道管部から白濁液が流れ出るのを確認できます。この白濁したものは「菌泥」と呼ばれる細菌の集団です。菌泥は乾燥すると、白色粉状になります。

萎縮、わい化

わい化(矮化)とは、動植物が固有の大きさに成長せず、小型のまま成熟する状態を指します(引用元:「矮性」小学館 デジタル大辞泉)。萎縮・わい化の症状は、植物の全身または一部が発育不全となって草丈が低下、萎縮したり、わい化したりするものです。

この症状はウイルスやウイロイドを病原とする病気によくみられますが、菌類や細菌が病原の病気の一部でも、みられることがあります。また、イネ萎縮病などでは、分げつが増え、草型が変化するといった症状がみられることもあります。

黄化

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その名称が示す通り、植物全体や葉全体に退色が見られ、緑色ではなく黄色い葉が生じる症状を指します。また、株全体が黄化し萎縮する場合には「黄萎」「萎黄」と表されることがあります。

てんぐ巣

伸長したわき芽が多数発生し、細く小さい茎葉が群がりはえることで生育が阻害される症状です。菌類やファイトプラズマの感染によって引き起こされます。病原菌の産生する植物ホルモンの一種・オーキシンの作用が発症の要因とされており、発症した部位はのちに枯死してしまいます。

腐らん、かいよう

「かいよう(潰瘍)」とは「皮膚・粘膜などの表層がただれて崩れ落ち、欠損を生じた状態」のことを指します(引用元:小学館 デジタル大辞泉)。腐らん、かいようは、病気に罹った組織が壊死したり枯損したりといった症状が見られます。

果樹類の病害でこの症状が発生することが多く、かんきつ類のかいよう病では特徴として、果実、葉、枝に褐色でコルク状の病斑ができます。

そうか

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発病した部位にいぼ状の隆起が生じた後、かさぶた状になる症状です。

その他症状

縮葉、奇形は、葉の縮れやそれにともなって植物全体に奇形がみられる症状です。

徒長は、植物の一部または全身が異常に伸長する症状で、病原体が産生する植物ホルモンの一種・ジベレリンなど、生理活性物質が植物に作用して発症します。徒長した植物はその後、枯死してしまいます。

落葉は、本来の落葉時期より早い時期に、著しい落葉がみられる症状です。病原体の産生する毒素や地上部への水分供給がとどこおることなどが要因です。早い時期に落葉が起こると光合成が阻害されてしまうので、その年の収量の減少につながります。

 

参考文献:夏秋啓子『植物病理学の基礎』p.19〜23(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年7月19日閲覧)

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