似たような病害の違い②キュウリの病気の違いや病原菌の種類と症状の違いなど

似たような病害の違い②キュウリの病気の違いや病原菌の種類と症状の違いなど

本記事では、似たような症状の病害の見分け方についてご紹介していきます。

 

 

キュウリの病気の見分け方

似たような病害の違い②キュウリの病気の違いや病原菌の種類と症状の違いなど|画像1

 

キュウリの病気には、葉に病斑が見られるものが多々あります。それぞれの違いについてご紹介していきます。

べと病と斑点細菌病

まず、よく似た病斑が生じる病気にべと病と斑点細菌病があげられます。

べと病では、葉の表側に葉脈で区切られたやや角形の黄色い病斑が生じます。一方、斑点細菌病でも葉の表側にやや角形の病斑が生じます。

これらを見分ける場合には、葉の表側ではなく裏側の状態を確認します。べと病の病原菌は糸状菌(かび)で、この病気の場合、葉の裏側に灰白色のつゆ状またはやや褐色の(暗紫色と表されることもある)かびが生じるのが特徴です。

斑点細菌病の場合、裏面にカビは生えず、陽に透かすと病斑と健全な部分の境目に黄色のカサが見られます。なお、この病気の病原菌はその名の通り、細菌です。

実は、葉の表側に生じる病斑にも違いがあり、斑点細菌病の病斑は水や油が滲みたような状態となります。

斑点細菌病と炭疽病

斑点細菌病は子葉では水浸状・円形・淡褐色のくぼんだ斑点、本葉では水浸状の小斑点を生じ、本葉での小斑点は次第に大きくなって、葉脈で区切られた黄褐色の角形の病斑になります。

一方、炭疽病でも葉に、周囲がやや黄色の病斑が生じます。この斑点状の病徴はそれぞれ非常によく似ています。症状が進んだ後期に、中央部に裂け目を生じることがあるのが炭疽病の特徴です。

また、炭疽病は葉、茎、果実に発生しますが、斑点細菌病は葉のみに発生するといった違いもあります。加えて、炭疽病は露地栽培で発生しやすく、斑点細菌病は多湿条件の施設栽培で発生しやすいという点にも違いがあります。

炭疽病と黒星病

葉に生じる炭疽病と黒星病の症状は、円形で褐色の病斑という点が似ていますが、炭疽病の場合は、低温期以降から夏季、降雨期に発生します。一方、黒星病は比較的低温時期に発生します。

なお、株式会社エス・ディー・エス バイオテックが事務局を務めるダコニール普及会が運営するサイト「ダコニール倶楽部」のホームページでは、キュウリの病害の画像が掲載されており、あらゆる病害の比較がしやすいので、それぞれの病斑や病徴の違いが気になる方はぜひご覧ください。

きゅうりの病害図鑑|ダコニール1000

 

ホウレンソウの立枯れ性病害の違い

似たような病害の違い②キュウリの病気の違いや病原菌の種類と症状の違いなど|画像2

(※ホウレンソウの立枯れ症状はタキイ種苗株式会社のウェブサイトなどで確認することができます。ご参照ください)

 

ホウレンソウが病気に罹った際に生じる立枯症状の特徴は、病原菌によって細かな違いがあります。

病気の名称 病原菌 特徴

立枯病

苗立枯病ピシウム菌

主根、側根、地際部の茎が淡褐色、水浸状に腐敗し、倒れる。

立枯病

苗立枯病リゾクトニア菌

主根、地際部の茎が褐変し、くびれたり、腐って形が崩れたり、褐色病斑を生じたりして倒れる。

萎凋病

フザリウム菌

主根、側根が腐敗、褐変して、萎れてから枯れる。根を輪切りにした際、維管束部の褐変が見られる。

根腐病

アファノマイセス菌

主根が黒変して細くなり、根腐れ状に腐敗する。子葉の付け根は軟化し、株全体は萎れてから枯れる。

参照:米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)

ピシウム菌、リゾクトニア菌、フザリウム菌に植物が侵された場合、茎、葉が萎れるといった症状は共通しています。いずれもはじめに葉が萎れ、症状が悪化すると倒伏し、枯死します。これらの菌に侵されると、根が褐変し、腐敗するのも共通しています。

ただ、上記表にもあるように、ピシウム菌では「暗褐色」「水浸状」に腐敗し、リゾクトニア菌の場合は地際部の茎に「褐色の病斑」をつくって「くびれたり、腐って形が崩れたり」して倒れます。フザリウム菌では「維管束部の褐変」が見られます。

病原菌によって有効な薬剤が異なることもあり、これらの病気になると防除が難しいとされています。病気が発生する前や発生初期に適用のある薬剤を用いることや、消毒済みの種子の利用、土壌消毒や新しい土への播種が推奨されます。

 

 

そのほか、似たような病害の違い

似たような病害の違い②キュウリの病気の違いや病原菌の種類と症状の違いなど|画像3

 

軟腐病と腐敗病

軟腐病と腐敗病の区別は悪臭を放つか否かで見分けられます。

症状

臭い

軟腐病

葉脈が青みを帯びる。

患部は淡緑色水浸状に軟化し、腐敗する。

腐敗して悪臭を放つ

腐敗病

被害を受けた野菜の種類によって病徴は異なるが、葉の表面の縁から暗緑色ないし緑褐色水浸状になる。

腐敗が進む速さは軟腐病に比べると遅い。

悪臭はしない

症状自体はよく似ていますが、悪臭を放つか否かが決定的な違いとなっています。

ハクサイのえそモザイク病とゴマ症

ハクサイにゴマ状の斑点が生じることがありますが、植物全体の様子や、ゴマ状の斑点がどこにできるか、どのくらいの大きさかなどによって、ウイルス病のえそモザイク病なのか生理障害であるゴマ症なのかを見分けることができます。

ハクサイがやや生育不良となり、葉脈の白い太い部分に1〜3mmほどの黒褐色の水浸状の斑点、葉身部にゴマ状の黒く小さな斑点を多数生じた場合にはえそモザイク病であると考えられます。

一方、白い部分にのみ、1mmくらいのゴマ状の斑点を生じる場合は、生理障害のゴマ症と判断されます。主な原因ははっきりとは解明されていませんが、チッソの過剰や高温、低温といった栽培環境によるストレスが原因とされています。

 

参考文献:米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)

参照サイト

(2024年7月5日閲覧)

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