【植物の病害あれこれ】立枯病について。立枯病の原因や立枯病になりやすい作物、対処法を紹介

【植物の病害あれこれ】立枯病について。立枯病の原因や立枯病になりやすい作物、対処法を紹介

糸状菌(カビ)による病害「立枯病」についてまとめました。

 

立枯病の症状と原因

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症状

立枯病の症状は、発芽不良と発芽後の「立枯れ」です。立枯れとは、病原菌の影響で植物全体がしおれ、草木が立ったまま枯れてしまう現象を指します。

原因(病原菌)

病原菌は植物によって異なります。立枯病の病原菌として代表的なものにはPythium megalacanthum(ピシウム メガラカンタム)やRhizoctonia solani(リゾクトニア ソラニ)などの糸状菌(カビ)が挙げられます。

小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』の解説では、代表的な立枯病が掲載されており、さまざまな病原菌が紹介されています。

たとえばタバコ立枯病の病原菌は細菌の一種であるRalstonia solanacearum(ラルストニア・ソラナセアルム)です。トマトやナスなどの作物にも発生しますが、タバコ以外のラルストニア・ソラナセアルムによる病害は「青枯病」と呼ばれています。

コムギ、オオムギの立枯病は子嚢菌のGaeumanomyces graminis(ゴイマノミセス・グラミニス)によるもので、先で紹介したリゾクトニア ソラニはゴマやミツバなどの立枯病を引き起こします。リゾクトニア ソラニはトマトやナス、キュウリなどでは、苗のときに病害が発生することから「苗立枯病」といわれています。

ピシウム メガラカンタムは主にレタスやシュンギク、ホウレンソウなどに感染します。ダイズやアスパラガス、エンドウ、ソラマメなどは、萎凋病の原因菌でもあるFusarium(フザリウム)菌により引き起こされます。フザリウム菌による植物病害は症状によって呼び方が異なります。

本菌によって引き起こされる植物病害は症状によって呼び方が異なり、被害の大きい病害の例として、Fusarium oxysporumによるホウレンソウ萎凋病、メロンつる割病、イチゴ萎黄病、レタス根腐病、F. solaniによるカボチャ立枯病、F. fujikuroiGibberella fujikuroi)によるイネばか苗病、F. graminearumなどによるコムギ赤かび病などがある。

引用元:フザリウム菌-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA

原因(環境)

立枯病・苗立枯病は、排水不良な土壌、土壌が過湿のときに発生しやすいです。ピシウム属菌、リゾクトニア属菌によるものは、高温で多湿な環境で発生しやすいです。

立枯病が多湿な環境で発生しやすいのは、多湿な環境がピシウム属菌やリゾクトニア属菌にとって増殖しやすい環境だからです。

ピシウム属菌は卵胞子や菌糸の状態で、リゾクトニア属菌は菌核や菌糸の状態で土壌中に残り、植物への感染、発病を繰り返します。土壌水の多い条件下において、ピシウム属菌は遊走子という水中で遊泳する胞子を形成し、伝染します。リゾクトニア属菌は、多湿で未分解の有機物が多い土壌で増殖しやすい菌です。

 

 

立枯病になりやすい作物

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立枯病はアスパラガスやソラマメなど、さまざまな野菜や草花に感染します。そして先でも紹介したように、病気の原因となる病原菌も異なれば、症状も多種多様です。

レタスやシュンギク、ホウレンソウなどはピシウム属菌の主な感染植物です。ピシウム属菌に感染すると、植物の地際部の茎と根は褐変して軟化、腐敗し、やがて倒伏します。カビの見た目は白色綿毛状です。

キクやコスモスなどはリゾクトニア属菌の主な感染植物です。根や地際部が茶褐色~黒色に変色し、地際部の茎は褐変してくびれ、やがて倒伏します。湿度が高いと、地際部に白色~褐色のクモの巣のようなカビが見られます(キクは、リゾクトニア属菌だけでなく、ピシウム属菌、フザリウム属菌にも感染します)。

アスパラガスやエンドウ、ソラマメなどはフザリウム属菌の主な感染植物です。根や地際部が褐変し、腐敗します。病斑部に白色のカビが見られます。

 

 

立枯病の対処法

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立枯病は土壌伝染性病です。どの病原菌も胞子や菌糸、菌核などの状態で、感染した植物の残渣や土壌中で生き続けます。特にフザリウム属菌は乾燥に強く、10年以上生存することができる厚膜胞子という形で土壌に残ります。そのため一般的には、土壌くん蒸剤などを用いた土壌消毒が対処法として挙げられます。

立枯病が発生してしまった場合、他の農作物への被害や後作への影響を抑えるためには、

  • 立枯病を発症した植物は圃場外に持ち出し、処分する
  • 前作の植物や落ちた葉に原因菌が感染している場合があるので、そのままにせず、圃場外で処分する
  • 立枯病が発生した圃場や発生が懸念される圃場は、農薬や太陽熱を利用した土壌消毒を行うか、新しい土を入れるなどして、土壌の状態を整える

ことが方法として挙げられます。

連作を避けることも立枯病防止に役立ちます。同じ作物を続けて栽培してしまうと、土壌中の菌密度が年々高まってしまい、病気の発生リスクが高まります。立枯病のみならず、農作物が病気にかかったときには、ほかの作物を栽培するようにしましょう。

病原菌が好まない環境に整えることも重要です。土壌中の水分が多いと、病原菌が活発になります。水はけのよい圃場づくりを心がけることも、対策につながります。

 

参考文献

  1. 立枯病・苗立枯病|アスター(キク科)|病害情報|調べる|タキイ種苗株式会社
  2. 苗立枯病
  3. フザリウム菌-ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA
  4. 立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

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