アブラナ科に発生しやすい「病害」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】

アブラナ科に発生しやすい「病害」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】

本記事はアブラナ科(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)に発生しやすい「病害」とその対策についてまとめたものです。

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病害の特徴、発生要因、防除方法

アブラナ科に発生しやすい「病害」とその対策(キャベツ、ハクサイ、ダイコン)【後編】|画像1

 

黒斑病

黒斑病は糸状菌(カビ)の一種によって生じる病気で、葉に黒い斑点ができることが特徴です。20〜30℃で発病する黒斑病は、温暖で湿度が高い条件で発生しやすく、初めは水浸状で円形の粟粒大の斑点が生じます。その斑点は、徐々に周辺が不鮮明で中央部分が淡褐色の斑点へと変化。症状が進行すると、黒色円形で同心輪紋状へと拡大します。湿度が高い条件では、中央部に黒色、すす状のかびが生じます。

防除対策としては、病原菌が活動しやすい多湿条件を避けるために、密植を避け、風通しをよくすることが推奨されます。また発病した作物は速やかに取り除き、感染が拡大するのを防ぎます。

多発生してからでは防除が難しいので、発生初期に適用のある薬剤を畑全面に丁寧に散布します。「アミスター20フロアブル」や「ロブラール水和剤」などの薬剤が有効な薬剤として知られています。

菌核病

菌核病は子のう菌類に属する糸状菌(カビ)の一種によって発生する病気で、病気が進むと、特徴的な黒色の塊である菌核を形成します。はじめはやや水浸状の小さな病斑が見られます。この病斑は次第に拡大して灰色の病斑となりますが、湿度が高くなると、葉や茎、果実などが白い綿毛状のカビに覆われます。この病気は茎葉や花梗でも発生し、症状が進むと枯死してしまいます。この枯死した周辺部位や茎の中に、ネズミの糞ほどの大きさの黒色の菌核が形成されます。

この病気は主に20℃前後で降雨が多いときに発生します。露地では4月頃から梅雨の時期に発生します。また、3月下旬から4月上旬ごろの、曇りや雨が続いて梅雨のようなぐずついた天候が続く時期に茎葉が繁茂すると発生しやすいです。低温の時期に収穫する場合には、結球期〜収穫期に発生するため、注意が必要です。

防除対策として、湿度の高い条件が発症リスクを高めることから、葉が茂りすぎないよう、適切な株間を保ったり、茎葉が過繁茂にならないよう適宜葉をつみ取ったりすることで風通しをよくすることが大切です。また感染した株を見つけたら、早期に取り除き、圃場の外で処分することで、病気が拡大するのを防ぎます。

圃場に病原菌が残らないよう、連作を避ける、土壌消毒を行うことも有効です。菌密度を低下させるために、水田との輪作を行うのも有効な手段です。

また予防策や初期発生時に適用のある薬剤を散布するのも有効です。ただし、耐性菌が発生する可能性があるため、同じ薬剤の連用は避けてください。薬剤散布と合わせて、生物的防除や物理的防除を含む総合的害虫管理(IPM)を導入することも、農薬の使用量を減らし、病害の発生を抑制するための重要な手法です。

白さび病

野菜類に発生する「さび病」にはネギ類に発生する「さび病」と「白さび病」があり、アブラナ科の野菜に影響を与えるのが白さび病です。さび病の病斑が「さび」を思わせる橙色を示しているのに対し、白さび病の病斑の色はその名の通り、白色です。

初期は葉に退色した部分が点在し始め、それが次第に不整形で白色の病斑となります。葉柄や茎に発病すると病斑部は肥大して湾曲し、花に発病すると花弁や雌しべが肥大し奇形となります。ダイコンでは収穫時に黒い小さな円状の斑点、いわゆる「ワッカ症」を引き起こします。

この病気は、春から秋にかけての冷涼で多湿な時期に多発します。また窒素肥料の過剰施肥や水はけの悪い圃場も発生要因となります。

そのため、適切な排水管理や密植を避けることが予防策として有効です。

アブラナ科の白さび病は適用のある薬剤を散布することで防除しやすい病気なので、ダコニールなどの薬剤の予防的な散布や、発生初期のランマンフロアブル、アミスター20フロアブルの散布が有効です。白さび病は葉の裏に発生するので、発病時に薬剤散布を行う際は、葉裏まで十分に薬液がかかるように努めます。

べと病

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注:画像はウリ科に生じたべと病の症状。

 

べと病は、糸状菌(かび)の一種によって引き起こされる病気で、まず葉に黄緑色〜黄色の輪郭が不明瞭な病斑が生じます。その後、病気の進行に伴い斑点が広がり、最終的には葉全体を枯らします。

べと病は20℃という比較的冷涼で、多湿な条件、特に春季や晩秋の低温期で発生します。また過湿な圃場で発生が多く見られ、昼夜の温度差が大きい場合にも発生しやすいです。

そのため、耕種的防除策としては雨水がたまらないように圃場の排水性を高め、過湿を防ぐことがあげられます。もちろん罹病した植物残渣は圃場の外で適切に処分します。

また予防には防除薬剤の使用が重要です。発病前に適用のある薬剤(ダコニール1000、ジマンダイセン水和剤、銅水和剤など)を散布します。ただし、連用は耐性菌の発生を招くので、1作につき1回の使用を目安とします。発生が見られた場合には、べと病専用の薬剤を早めに散布します。

苗立枯病

苗立枯病はアブラナ科のほか、ウリ科、ナス科など多くの野菜に影響を及ぼす土壌伝染性の病気です。主に4種類の病原菌(フザリウム属菌、リゾクトニア属菌、ファイトフトーラ属菌、ピシウム属菌)によって発生し、アブラナ科ではリゾクトニア属菌、ピシウム属菌が主な病原菌としてあげられます。

育苗期間中に発生し、種子が発芽してまもなくリゾクトニア属菌に侵されると出芽不良となります。また発芽後の幼苗が侵されると、苗が萎れたり、地際部の胚軸が褐変して細くなったり、根が腐敗したりして、やがて枯れてしまいます。ピシウム属菌による場合には、地際部が水浸状に軟化して倒伏することが多いです。

水分土壌が多いと発生しやすく、重粘土質な土壌や酸性土壌は発病を助長します。また温度条件では、リゾクトニア属菌による発生は9〜11月の高温多湿期に多くなり、ピシウム属菌の場合は発病適温が15〜21℃とやや低く、11月〜3月の低温期で被害が多発します。

耕種的な防除対策としては、まず育苗期の過湿条件が病気の発生を招くので、水を与えすぎず、雨が多い場合には圃場の排水をよくすることなどを心がけます。

ただし、これらの病原菌はどんな畑にも土壌にも発生します。加えて、病原菌が4種類いるうえ、有効な薬剤はそれぞれ異なるので、病気になると防除が難しいといえます。発生する前か発生初期に適用のある薬剤を用いるほか、第一の対策としては以下の方法があげられます。

  • 消毒済みの種子を使う
  • 土壌消毒を行う
  • 新しい土に播種する

 

参考文献

  1. 米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)
  2. 夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

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