【植物の病害あれこれ】そうか病について

【植物の病害あれこれ】そうか病について

「そうか病」とは、ジャガイモのイモやかんきつ類の実などにあばた状の病斑が出来るのが特徴の病気です。「そうか」とはあばた(痘痕)のことを指し、「痘痕」は皮膚の水疱を意味する言葉で、1980年に地球上から消滅した天然痘が治ったあとの皮膚に残る小さなくぼみを表します。

 

 

そうか病の特徴

【植物の病害あれこれ】そうか病について|画像1

 

そうか病と呼ばれる病気はさまざまな植物で発生しますが、植物によって原因となる菌は異なります。ジャガイモやニンジン、ダイコンなどの可食部位に発生するそうか病は放線菌が原因となり、高温・乾燥条件で多発し、土壌感染します。一方、かんきつ類の実に発生するそうか病は糸状菌が原因となり、梅雨の時期などの雨水などで感染が広がります。

ジャガイモの場合、特徴的な病徴(病気に罹った植物において、肉眼で確認できる異常)に塊茎表面に直径5〜10mm程度の褐色で、コルク化したあばた状の病斑が生じることがあげられます。発病した芋は皮を剥けば食べることができ、味も健全なものとほとんど変わりませんが、発病した芋の見た目が悪くなることから品質に悪影響を及ぼします。またジャガイモの場合、収穫まで被害が見えにくいため、そうか病を発生させないために予防することが重要です。

かんきつ類に発生するカンキツそうか病の場合、被害は葉、果実、枝に発生します。病徴にはいぼ型病斑とそうか型病斑があります。いぼ型病斑は、いぼのように飛び出した病斑が生じます。そうか型病斑は表面はそれほど飛び出しませんが、かさぶた状になります。原因となる菌の菌密度が低い時期に感染すると、葉や果実にいぼ型病斑が生じやすく、菌密度が高まるとそうか型病斑となります。なお、枝の病徴はすべてそうか型となります。

発生しやすい条件

先述した通り、ジャガイモやニンジンなどに生じるそうか病は放線菌、かんきつ類や落花生などに生じるそうか病は糸状菌が原因で起こります。

放線菌の場合、塊茎が形成される時期に、地温が20℃以上と高く、乾燥すると多発します。またアルカリ土壌で発生が助長されます。放線菌の菌種を問わず、pH5.2以上で発生、6.5以上で多発します。石灰資材を多様すると多発するので注意が必要です。ジャガイモの植え付けの際には土壌酸度を確認し、その結果から予防策をたてます。

糸状菌の場合、梅雨時や雨の多い初夏に発生しやすいです。病原菌である糸状菌は、葉や枝の病斑で冬を越し、温度条件と降雨等によって病徴が濡れている状態が3時間くらい継続すると胞子を作り、雨によって運ばれ、葉や果実に付着していきます。なお、胞子を作る際の適温は20〜24℃ですが、実際には10〜28℃の温度帯で降雨等の条件が整えば胞子を作ります。

風速6〜8m以上の強風を伴う風雨、夏季の台風なども発病を促進する要因です。

なお、“梅雨時や雨の多い初夏に発生しやすい”と記しましたが、発芽の時期から4月中旬ごろまで雨が多く、日照不足で低温が続くと、弱った葉に感染しやすくなり、初発病の時期が早まります。また果実への感染は、落花直後から9月下旬まで、葉からの2次伝染によって感染します。

 

 

そうか病の主な対策

【植物の病害あれこれ】そうか病について|画像2

 

ジャガイモなど、放線菌が原因のそうか病の対策には以下のものがあげられます。

  • 連作をしない
  • 土壌pHを調整する
  • 健全な種芋を使用する
  • 土壌殺菌剤を使用する

ジャガイモそうか病は連作障害の一種です。連作を行うと土壌中の病原菌密度が高くなってしてしまうため、前年に発病が見られた畑は翌年も発病しやすいです。そのため、連作をしないことが重要です。

次に土壌pHの調整です。ジャガイモそうか病はpH5.2以上で発生、6.5以上で多発します。多発を防ぐためにも土壌酸度調整資材を用いて土壌pHを5.3〜5.5以下に調整し、石灰の施用には注意が必要です。

健全な種芋を選ぶことも大切です。病気に罹っていないものはもちろん、そうか病になりにくい品種を選ぶこともそうか病対策になります。

そうか病が発生する恐れのある土壌では、土壌殺菌剤の使用も効果的です。種芋を植え付ける前に使用します。使用する薬剤の例にはダゾメット粉粒剤フルアジナム粉剤などがあげられます。農薬の使用にあたっては必ずラベルを確認し、安全使用基準を厳守して、正しく散布を行ってください。

また、伝統的な対策に米ぬか施用があります。米ぬかにより根圏土壌に棲息する微生物相が変化し、そうか病の原因菌である放線菌群に拮抗する異なる放線菌群を増加させるとされています。

農研機構北海道農業研究センターの2017年の成果情報によると、そうか病に汚染された圃場に種芋を作付する前、米ぬかを土壌に全面施用したところ、そうか病の発病が軽減されました。米ぬかの施用によって、根圏土壌中ではBacillus属やStreptomyces属などの存在比が増加し、中でもStreptomyces属放線菌類の割合は、収穫時の発病度と逆の相関関係にあり、そうか病の原因菌である放線菌群に対して拮抗性を示す、と報告されました。

ただし、上記成果情報には、以下の留意点が記されています。

今回の試験は一つの品種を用いた鹿児島県の黒ボク土圃場での結果であり、今後、他の品種や、土壌および気象条件等が異なる条件において、効果の検証作業が必要である。

引用元:米ぬか施用によるジャガイモそうか病の抑制機構の微生物学的解明

放線菌が病原菌のそうか病予防には、先述した4つの対策「連作をしない」「土壌pHを調整する」「健全な種芋を使用する」「土壌殺菌剤を使用する」をご活用ください。

かんきつ類の場合、先述したように病原菌である糸状菌は、葉や枝の病斑で冬を越します。そのため、前年に発病した株が翌年の発生源になるため、発病が見られたらなるべく剪定を行います。

ジャガイモで紹介した「健全な種芋を使用する」と同様、苗木を新しく植える場合には、発病のないものを選びます。感染条件である降雨から守るために、苗をハウスで育てるという方法もあります。

窒素肥料が過多になると発病しやすくなるため、やりすぎには注意が必要です。降雨後、速やかに湿度が低くなるよう圃場内の風通しをよくする、病原菌は傷口から侵入しやすいので防風対策を行い風傷を減らすなど、とにかく原因菌である糸状菌が好む条件が整わないよう努めます。

苗木から10年くらいの間は発病しやすいとされています。防除を徹底し、病気を発生させない心がけが重要です。

 

参照サイト

(2024年8月22日閲覧)

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